出典: やのまん
今回のテーマは、差別化です。
おもしろいと思ったジグソーパズルを取り上げ、戦略やマーケティングに学べることを見ていきます。
✓ この記事でわかること
- 22万個も売れた真っ白なジグソーパズル
- 企画から販売までの経緯
- 引き算の差別化
- アイデアの賞味期限 (差別化の模倣可能性)
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
真っ白なジグソーパズル
ご紹介したいのは、絵柄が何もない真っ白なジグソーパズル 「宇宙パズル」 です。
出典: やのまん
10年で22万個が売れたパズル
以下は、ITmedia の記事からの引用です。
メーカーの 「やのまん」 (東京都台東区) が2012年に発売したところ、累計22万個も売れているのだ。「10年間で22万個売れた」 と言われてもピンとこないかもしれないが、ジグソーパズル界の常識でいえば "規格外" である。
売れているモノで2万 ~ 3万個、売れていないモノで500個ほど。商品の寿命は短く、ほとんどの商品が2 ~ 3年もすれば、店頭から姿を消す。生き残ることが難しい世界の中で、なにも描かれていない宇宙パズルはなぜ支持されているのだろうか。
宇宙パズルは300ピースです。真っ白でパズルピースの形しか手がかりがないので、相当に難易度が高そうですよね。
出典: ジグソークラブ
企画から発売までの経緯
宇宙パズルが生まれた経緯を、先ほどの記事から見てみましょう。
この商品は、実際に宇宙飛行士試験で使われた "ホワイトパズル (白無地) " をモチーフにしている。
宇宙飛行士に必要な精神力を鍛えるために使われていて、漫画『宇宙兄弟』でも真っ白なパズルに挑戦するシーンが描かれている。ディスカバリー (2010年) に搭乗した宇宙飛行士の山崎直子さんも、30ピースのホワイトパズルに取り組んでいたとのこと。
そのことを知った 「やのまん」 は、「他社から同じような商品はまだ出ていない。であれば、当社が販売すべきでないか」 ということで商品開発に至ったのである。
とはいえ、すんなりとは商品化はされませんでした。
発売したのは12年だが、最初の企画があがったのは08年ごろである。
「2009年が『世界天文年』に定められたこともあって、社内から『宇宙にちなんだ商品を開発することはできないか』といった話がでてきました。地球儀のような形をした『3D 球体パズル』を扱っていたので (いまも販売している) 、その商品の販促物として、何も描かれていない『宇宙パズル』を用意してもいいのではないかという案がでてきました」 (ホビー事業部の大山毅さん)
しかし、その企画は却下されることに。
(中略)
門前払いとなったので、真っ白なパズルは "白紙" の状態に。それでも、一部の社員はあきらめることができなかった。実はこのころ、他社が真っ白なパズルを販売していた。しかし、それは子ども向けのモノで、完成された真っ白のパズルに絵を描いて、それをバラしてつくるといったコンセプトである。というわけで、「宇宙飛行士試験の過去問題」 とは違っていた。
開発担当者の口から、たびたびこのような言葉がでていた。「つくらせてください」 ――。この情熱が会社を動かすことに。取り扱うのは1店舗のみ。
それだと認知が広がらないので、なかなか売れないだろうと思っていたところ、1週間で100個ほど売れた。この数字は、ジグソーパズルの世界では異例である。
学べること
引き算の差別化
真っ白なジグソーパズルの宇宙パズルは、「引き算の差別化」 と見ました。
通常はパズルには必ずある絵や写真をなくしたのが宇宙パズルです。
引き算によって、既存のパズルにはない 「完成させることの格段の難しさ」 が生まれました。難易度が上がり挑戦しがいがあります。宇宙飛行士のテストに自分も挑戦してみたいと思え、できあがった時の達成感は、他のジグソーパズルにはない価値です。
差別化に持続可能性はあるか
もう一歩掘り下げたいのは、差別化の持続可能性です。
やのまんが真っ白なジグゾーパズルを出すまでは、類似商品はありませんでした。日本のパズル業界では初の商品だったわけです。
しかし現在は、無地の白色のパズルは、他の会社も扱っています。パズルを無地白にするというアイデアは斬新で、宇宙とつなげる発想もユニークでした。しかし、アイデアさえ手に入れられれば、絵柄がなく無色なパズルを製造するのは、一般的なパズルよりもむしろ簡単です。つまり模倣可能性の高い商品アイデアなのです。
アマゾンで無地白のパズルを検索してみると、複数の類似商品が出てきます。白以外にも青や黒もありました。
検索結果をパッと見ただけでは、やのまんの宇宙パズルが他の無自白パズルと差別化されているようには見えなかったです。
差別化の着眼点
学びとして最後に残しておきたいのは、差別化を図るときの着眼点です。
次のような問いかけを自分 (たち) にしてみるといいです。
✓ 差別化の着眼点
- 今までにあった 「当たり前の要素」 をなくすことで、差別化ができないか (引き算の差別化)
- その差別化アイデアは独自性があり、メリットがあるか (例: お客さんの価値につながる)
- アイデアの実現は自分たちにしかできないことか (差別化の模倣可能性)
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