出典: ニチレイフーズ
今回は、ヒット商品に学ぶ顧客メリットのつくり方です。
おもしろいと思った冷凍食品を取り上げ、学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- ニチレイフーズの 「冷やし中華」 のヒット理由
- 開発の狙い
- 独自技術からのメリット創出 (学べること)
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ニチレイフーズの 「冷やし中華」
ご紹介したいのはニチレイフーズの 「冷やし中華」 です。
出典: ニチレイフーズ
売上が好調
日経新聞の記事によれば、売上が好調とのことです。
ニチレイフーズの冷凍食品 「冷やし中華」 が好調だ。
1食分の麺と具が入り、電子レンジで温めるにもかかわらず、冷たい麺に仕上がる。レンジのマイクロ波にあたっても溶けにくい氷の性質を生かした意外性が話題を呼び、まだ寒い3月の全国発売から4月までで想定を2割上回る売れ行きとなった。
出典: ニチレイフーズ
冷凍された 「冷やし中華」 を電子レンジで温めると麺と具材は解凍されますが、麺の上にある氷は残ったままです。冷たいままの状態で、タレをかけて麺に具材を盛り付けるだけで簡単に食べることができます。
出典: ニチレイフーズ
長年の課題を逆手に
開発の背景を見てみましょう。
おもしろいのは、ニチレイフーズが長年にわたって取り組んでいた課題を、むしろ逆手にとってアイデアのヒントにしたことです。
「長年のアイデアをようやく形にすることができた」 。開発を担当したニチレイフーズ家庭用商品グループの蟹沢壮平さんは達成感を見せる。
同社は長年、電子レンジによる加熱ムラをなくすための工夫を重ねてきた。その一方で、加熱ムラを逆手にとって生かす商品ができないか、との視点も育っていた。電子レンジでつくる冷たい食品の構想は2000年代前半にはあったものの、商品化に至らず頓挫していた。
改めて構想が動き出したのは17年ごろのことだ。10年代には1人分の食事になる冷凍食品のニーズが増し、冷凍パスタなどが急速に広がった。冷やし中華はこのような 「個食」 市場をとらえる候補の一つとなる。試作品のレベルが上がるに従い社内から 「これまでになくて面白い」 「冷凍食品の会社らしい発想」 と評価が高まり、ゴーサインが出た。
容器の構造や具材・タレの設計に一から取り組んだ。同社の既存工場のラインでは作れなかったため、設備投資も決めた。
ニチレイフーズは長年、レンジでの温めムラをなくす課題に取り組んでいました。
この課題から冷やし中華に応用し、凍った麺や具材は温まり解凍される一方、麺の上にある氷は溶けないようにするという 「均等に温まらないムラ」 を利点にしたわけです。ニチレイフーズはレンジ調理だけで冷たいままで仕上がる独自技術を開発し、特許も出願済です。
「作るのが面倒」 を解決
もう少し開発の背景を続けると、一般的な冷やし中華には作るのが面倒だというイメージを消費者が持ってきました。ニチレイフーズの 「冷やし中華」 は、このイメージを変えるという狙いがありました。
冷たい麺類のなかで 「作るのが面倒だ」 と思われているのが冷やし中華だ。
ニチレイフーズの調査では8割以上が 「手間のかかる冷たい麺類」 として冷やし中華を挙げたとのこと。冷やし中華は麺をゆでてから冷水で締めるという工程に加え、うどんやそば、そうめんなどより多くの具材を用意しなければならないのがその理由だ。
簡単さの追求
ニチレイフーズの 「冷やし中華」 は、レンジで温めるだけにして、作る手間をなるべく減らすことにこだわりました。
商品は麺と氷が入った深皿のトレーに具材のトレーが重なり、両方同時に温める設計だ。最初から具材を麺にのせておくこともできるが、それでは麺を混ぜるときに具材も混ぜ込んでしまう。具材と麺を別に温める方法もあったが 「手間がかかると冷凍食品を選ぶ意味がなくなる」 と却下した。
温めてすぐに食事ができあがる便利さを必然と考えて、麺と具材を同時に温め、最後にトッピングするバランスを探った。蟹沢さんは 「やるからにはレンジでチンするだけで完成する商品を目指した」 と話す。
商品がどういう構造になっているかと言うと、2つのトレーが重なって配置されています。麺と氷が入った深い大きなトレーと、具材が載ったトレーです。
出典: 日経クロストレンド
冷凍庫から取り出し、袋から開けてレンジに入れるだけで済みます。麺と具材を別にして2回温めるなどの手間はありません。
先ほどの記事の引用内にあったように、「やるからにはレンジでチンするだけで完成する商品を目指した」 というのが実現しています。
学べること
今回の事例から学べるのは、独自技術とメリットについてです。
どんなに高い技術で他社にはないものでも、お客さんの価値につながらなければビジネスでは意味がありません。これでは宝の持ち腐れです。
ニチレイフーズの 「冷やし中華」 に当てはめれば、レンジで温めても氷が溶けず冷たい状態に保てる仕組みは特許として出願できるほどの技術です。しかし、たとえこの技術を入れたとしても、もし冷やし中華を作る手間が残ったままで消費者の冷やし中華のイメージ (作るのが面倒) が変わらなければ、ヒット商品にはならなかったでしょう。
技術や商品アイデアがあり、レンジで温めるだけで、それもなるべく手間がいらずに食べられるという顧客体験 (メリット) を生み出せたからこそです。レンジでチンしても氷が残ったままで、自宅で簡単においしい冷やし中華が食べられるというメリットを提供していることが好調な売上になっているのです。
独自技術がメリットを支えているかは、商品開発やマーケティングで意識しておきたいことです。
まとめ
今回はニチレイフーズの 「冷やし中華」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にまとめです。
✓ 独自技術からのメリット創出
- どんなに高い技術でも、お客さんの価値につながらなければビジネスでは意味がない
- 技術や商品アイデアから最終的に顧客体験でメリットを生み出せていることが大事
- 独自技術がメリットを支えているかは、商品開発やマーケティングで意識しておこう
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