投稿日 2022/09/16

小売のメディア化の事例2つ。マーケティング視点からのメディア化の本質とは?


今回のテーマは、「小売のメディア化」 です。

おもしろいと思った小売の事例をご紹介し、マーケティングの観点から本質は何かを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 「小売のメディア化」 の事例2つ
  • マーケティングの観点での意味合い
  • 小売のメディア化の本質

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

アプリのチラシメニュー内の広告枠


1つ目の事例でご紹介したいのは、スーパーマーケットのアプリにあるチラシ画面内にメーカーが広告を出せるという話です。

スーパー向けにデジタルチラシの作製サービス 「チラシ NEXT (ネクスト) 」 の提供を始めた。スーパー側の使用料は無料。従来、スーパーのホームページやアプリ上では各店舗の紙のチラシ画像のみがそのまま掲載されている場合が多い。

チラシネクストでは紙のチラシ画像の下に 「メーカーからのおすすめ」 のコーナーを設け、商品の特徴やオススメの調理法を紹介する。阪急オアシスですでに使われているほか、ダイエーやマックスバリュ関東、ベイシアなどで導入予定だ。

小売店は既存のウェブサイトやアプリ上のチラシのページのみ単体でチラシネクストに切り替えることもできる。
出典: PR TIMES

アプリ内に広告枠をつくることによって、メーカーから広告費をもらえるようになります。

小売にとってメーカーとは、商品を仕入れてお金を支払う相手です (厳密には小売とメーカーの間には卸がいますが) 。しかし、自社アプリ内に広告欄を用意したことで、メーカーは広告出稿費というお金を得る相手にもなるわけです。

これができるのは、小売がアプリを消費者に提供し、アプリ内にチラシ情報という 「アプリユーザーが毎日見たくなるキラーコンテンツ」 を持っているからです。アプリを広告メディアとして再定義しました。


スーパー店内のメディア化


2つ目の事例は、スーパーのトライアルです。

ショッピングカートにおすすめ商品を表示


トライアルのお店では、お客さんが使うショッピングカートにタブレットのようなディスプレイを設置し、お客さんごとにおすすめ商品を提示しています。

出典: 日経

以下は、日経新聞の記事からの引用です。

トライアルホールディングス (福岡市) 傘下企業が運営するディスカウント店 「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」 (同市) では、決済機能付きの買い物用カート 「スマートショッピングカート」 を利用した実験が進む。

消費者はカートで特定商品をスキャンすると、それと同様の特徴を持った商品が売り場の場所や価格と一緒に表示される。特徴は個々に登録されている数万の商品の説明文を AI の自然言語処理の技術を使い 「素材重視」 や 「健康・栄養」 「濃厚」 など17に分類した。

 (中略) 

例えば 「スパイシー」 や 「濃厚」 といった特徴を持つ、辛口で味が濃いスナック菓子をスキャンすると、日清食品の袋麺 「爆裂辛麺 韓国風 極太大盛激辛焼そば」 がレコメンドされる。

実験では特徴が共通する商品の組み合わせとそうでないものを表示した。すると共通の組み合わせの方がそうでないものに比べ、購買が2倍になった事例もあるという。

デジタルサイネージでの情報の出し分け


もう1つ、トライアルがやっているのは、店内のデジタルサイネージでの情報提供です。

商品棚の前にいるお客さんの行動によって、サイネージに表示する中身を切り替えています。

来店者の行動によってデジタルサイネージの内容を変える実証実験も進めている。

カルビーや大手コンビニなど約10社は2019年度と21年度の2回にわたって効果的な店舗での販促を検証した。店舗の90センチメートル幅の商品棚の最上段にサイネージの画面を設置し、客が 「棚の前を通過」 「立ち止まる」 「商品を手に取る」 の3段階で流す動画を変えた。

例えばポテトチップスの棚前を通過時には 「暑くなってきたのでさっぱり」 と季節感などを感じさせる動画で目を引かせ、立ち止まったところで実際の商品を紹介し背景の画面を時間帯に合わせて切り替えた。

第1弾ではテレビ CM のような動画や画像で商品を紹介しており、商品の接触は増えたが購買が伸びなかった。そのため、第2弾では商品に接触した時点でクーポンを表示するなど購買を後押しするような施策を強化。サイネージがない店舗より購買も増えた。

カルビーの担当者は店舗のサイネージについて 「実際に消費者が買う瞬間にアプローチできるメディアとして魅力がある」 と語る。

トライアルの取り組みの意味


ご紹介したトライアルの事例を図でまとめると、次のようになります。

出典: 日経

トライアルは、スーパーマーケットという人が集まる場所を持っていて、かつその人たちは商品を買いに来ています。小売店舗のメディア化には、購入意向の高い人に情報を届けられるところに価値があります。


小売のメディア化の本質


店舗のメディア化とは、マーケティングの観点で言えば 「Place の価値化」 です。

Place の価値化


Place とあえて英語で表現したのは、マーケティング 4P を意識してのことです。

✓ マーケティング 4P
  • Product 商品やサービス
  • Place 販売チャネル
  • Price 価格
  • Promotion 広告や販促

4P の Place は販売チャネルです。Place という顧客接点において情報提供を強化し、Place が 4P の Promotion (広告や販促などのコミュニケーション) の機能を併せ持ち Place の価値を高めました。

三者の Win


価値の要素を細かく見ていくと、3つあります。

メーカーにとっては、自社商品や商品ジャンルを狙った相手に訴求する機会が得られます。消費者には、販促情報や広告だとしても、それが役に立つ情報であれば価値になります。

小売にとっては、従来の商品を売って利益を得るという収益化方法だけではなく、販促費や広告費として稼ぐマネタイズの手段が多様化するメリットがあります。

以上の三者の Win を期待できるのが、小売のメディア化の意味合いです。


まとめ


今回は、店舗やアプリでの情報提供を強化する 「小売のメディア化」 の事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 小売のメディア化
  • マーケティングの観点で言えば 「Place の価値化」 。Place での情報提供を強化し 4P の Promotion (広告や販促などのコミュニケーション) の機能を併せ持つことで Place の価値を高めた
  • メーカーは自社商品を狙った相手に訴求でき、消費者には、販促情報や広告でも役に立つ情報なら価値
  • 小売には販促費や広告費を稼ぐマネタイズの手段が多様化するメリットがある


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。