出典: ITmedia
今回のテーマは顧客理解です。顧客理解を 「環境」 「行動」 「心理」 から深めようという話です。
おもしろいと思った食洗機の事例から、商品開発やマーケティングに学べることを見ていきましょう。
✓ わかること
- 食洗機が欲しいのに、買わない理由とは
- フィールド調査でわかった解決策
- 買わない理由の解消
- 学べること (3つをセットにする顧客理解)
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
食洗機を買わない理由
普及しない要因は?
こちらの記事を読みました。
食洗機を阻む30センチの壁 「一家に一台」 になれるのか、メーカーの苦悩|ITmedia
新築や持ち家などビルトイン型が大多数を占め、賃貸住宅では普及しているとは言い難い。食洗機を賃貸住宅にも普及させようと、家電メーカー各社が知恵を絞っている。
60年前から日本の食洗機市場をけん引してきたパナソニックが着目したのは、食洗機を 「買わない」 理由だ。欲しいし使ってみたいのに、置く場所がない、置ける食洗機がないと、サイズを理由に諦めている人が多かったのだ。
「では、その根本を解決する製品、賃貸住宅でも置ける食洗機を作ろうと開発を始めました」 (同社キッチン空間事業部国内マーケティング部食洗機担当の宮本侑弥さんと山本秀子さん)
フィールド調査からわかったこと
パナソニックは実際の消費者のキッチン環境を見に行きました。
開発に当たっては、定量調査に加え、フィールド調査を何度も行ったという。調理スペースやカウンターの上、シンク横など、想定される設置位置に、さまざまなサイズや形のサンプルを置いて検証を重ねた。
検証から、食洗機の最適な設置場所は、これまで多くの人が置いていた調理スペースではなく、シンク横であることが判明した。さまざまな賃貸住宅のシンク横の形状や広さなどを数値化すると、一般的な賃貸住宅でのシンク横の平均は、30 ~ 40センチ未満 (49.2%) であることが分かった。
小型化と使いやすさの両立
食洗機が普及しない要因の1つが食洗機のサイズでした。
賃貸住宅で食洗機を置きやすい場所はシンクの横で、幅が 30 ~ 40cm くらいです。シンク横に食洗機を置くためには奥行きのサイズを 30cm ほどにすることが必要になります。
ただし、食洗機を単に小型化すればいいわけではありませんでした。
「奥行29センチの食洗機を作れば、今まで置きたくても置けなかった人たちが使えることが分かりましたが、では単に小型化すれば良いというわけではありませんでした」 (宮本さん) 。新しい食洗機の購買層の大多数を占めるであろう賃貸住宅の住民向けに、容量は確保しつつ、現行モデル同様の高い洗浄力や除菌機能も維持した。
このスリム設計を実現した立役者の1つが、新機構 「リフトアップオープンドア」 だ。フィールド調査で分かった、食洗機の扉を開くときにシンクの蛇口に当たるという問題を、ドアをガルウィングのように上に開くことで解決した。
リフトアップオープンドアを実装したパナソニックの食洗機 (出典: ITmedia)
学べること
買いたくても 「買わない理由」 の解消
ここまで見てきた食洗機の話は 「食洗機を買わない理由」 に対応したということです。
ポイントは、実は食洗機を欲しいと思っているのに、決定的な買いにくい理由が別にあることで結局は買ってもらえないという消費者心理です。
パナソニックはフィールド調査を重ねキッチンまわりの環境、普段どのように皿洗いをしているかなど消費者の日常の行動だけではなく、その時の気持ちも理解したはずです。
検証を繰り返しつぶさに現場を見たからこそ生まれた解決策が、シンク横におけるリフトアップオープン型の食洗機でした。消費者の 「 (食洗機を欲しいけど) 買えない理由」 を解消したわけです。
「環境」 「行動」 「心理」 を理解しよう
では今回の事例から学べることを整理してみましょう。
お客さんが買わないという 「 (やらないという) 行為」 の奥にはその行動に影響している何かしらの気持ちがあります。お客さんの心理にはお客の置かれた状況や環境が影響を与えます。
ビジネスの起点になるのは環境、行動、心理の3つをセットにしてお客さんの理解です。顧客理解にもとづいて商品開発やマーケティングにつなげるといいです。
まとめ
今回は食洗機の 「買われない理由」 と解決方法の事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 欲しくても 「買わない理由」 の解消
- お客さんが欲しいのに結局は買わないという 「 (やらない) 行為」 の奥には、何かしらの気持ちがある。お客の心理には置かれた状況や環境が影響を与える
- 環境、行動、心理の3つをセットにしてお客さんを理解し、顧客理解にもとづいて商品開発やマーケティングをしよう
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