投稿日 2022/09/01

子どもの足の成長をサポートする Asics STEPNOTE 。早期の顧客化からの LTV 向上施策

出典: Fasu

今回のテーマは、顧客接点の増やし方です。LTV の観点で掘り下げます。

おもしろいと思ったアシックスのサービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 子どもの 「足の成長」 と 「靴の買い替えタイミング」 を教えてくれる Asics STEPNOTE
  • STEPNOTE が解決する根深い問題とは?
  • 狙いは LTV 向上
  • 「損して得とれ」 な早期での顧客化 (学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

Asics STEPNOTE


ご紹介したいのは、アシックスの子ども向けサービスです。サービス名は 「Asics STEPNOTE (ステップノート) 」 です (公式サイトはこちら) 。

出典: MilK JAPON

以下は、日経新聞の記事からの引用です。

アシックスが提供する、子どもの足のサイズの成長を予測する無料のサービスが好調だ。

オンライン上で年齢や現在の足のサイズなどを登録すると、独自のアルゴリズムに基づき成長を予測。最適なシューズが提案され、購入ができる仕組みだ。オンラインでの子供用シューズの販売増につなげる狙いで、2021年12月の開始以降、5月下旬までに想定を4割上回る1万3000人が登録する。

サービスの名称は 「ASICS STEPNOTE (アシックス ステップノート) 」 。同社の会員サイトのアカウントを作ると利用できる。

もう少し STEPNOTE の中身を詳しく見ると、

子どもの年齢、足のサイズ、好きな色などのデータを登録すると、成長に伴うサイズの変化を予測。グラフなどで確認ができる。子どもの好みを踏まえた適切なサイズのシューズが提案され、そのままオンラインストアに移動して購入できる仕組みだ。

成長予測は同社が集めた足のデータに基づいた独自のアルゴリズムで算出。学生の部活の大会などで 「足形計測会」 を開いており、約9万人のデータをもつ。同サービスでは利用者がスマートフォンなどで入力するため、計測会より効率よくデータが収集できる。予測精度も向上する。機能拡張を進め、22年中に最大2万人の利用者を目指す。
出典: HugKum


問題設定と解決策


STEPNOTE を提供する狙いは、子どもの足についての問題解決です。

問題


日経の記事でアシックスの担当者が指摘していたのは、「親は子どもの靴の親指の部分が破れたりすることで、初めて足の成長に気付くケースもある」 でした。子どもが自分の足に合わない靴を履き続けている状態への問題意識です。

アシックスは、この問題を動画でも伝えています。


靴のサイズが合わないと、子どもの発育に良い影響は与えないですよね。

子どもが気づけばいいですが、これは難しいです。というのも、子どもの足は大人と比べてやわらかいそうで、自覚しにくいからです。かといって、親も普段から意識して見ていない限りは気づくことはないでしょう。

なかなかに根深い問題です。

解決方法


そこでアシックスは、登録すると子どもの足の成長をデータとアルゴリズムで予測し、的確なタイミングで提案する STEPNOTE を開発しました。毎月、サイズ計測のタイミングを通知する機能もあり、継続的に使い続けられます。

いつの間にか靴のサイズが足に合わなくなり、子どもの足の成長に影響する問題を解決しているのです。


学べること


LTV 向上施策


アシックスの STEPNOTE は、LTV (Life time value: 顧客生涯価値) を高める施策です。

早いタイミング (子どもの幼少期) でお客さんになってもらうことを狙っています。

先ほどの記事では、「生まれて初めて買う靴から学生時代に履く靴まで、大人になる前の各ライフステージで靴を3足持っていれば、その中に必ずアシックスの靴がある状況を目指したい」 というサービスの担当者の意気込みが書かれていました。

STEPNOTE の位置づけは、生まれて初めて買う靴に自分たちが選ばれるためです。サービスは無料で提供していますが、時間軸を長く取っての先行投資です。長期視点に立っての LTV を向上させるためで、いわば 「損して得とれ」 をやっているのです。

早期の顧客化


では最後に STEPNOTE から学べることを整理してみましょう。

問いかけとして、「お客さんになってもらうタイミングを今よりも早められないか」 を考えてみるといいです。早期での顧客化の可能性は常に意識するといいでしょう。

早いタイミングでお客さんになってもらえるなら、商品やサービスをあえて無料で提供することも手です。ただし、なんでもかんでもタダで良いというわけではありません。あくまで布石としてです。

後で何を狙うから無料なのかを明確にして、長い時間軸で戦略と打ち手をつくるといいです。


まとめ


今回はアシックスの子ども向けサービス 「STEPNOTE」 をご紹介し、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 顧客獲得の早期化
  • 今より早いタイミングでお客さんになってもらうことを狙ってみると良い
  • 早期にお客さんになってもらえるなら、あえて商品・サービスを無料で提供することも有効
  • ただし安易に無料とせず、あくまで布石とする。「損して得とれ」 になるように、長い時間軸で戦略と打ち手をつくろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。