投稿日 2022/09/11

目をつぶっても当てられる 「利きシューズ」 ができるアシックスの店員さん。顧客視点での商品知識獲得と活用方法

#マーケティング #顧客理解 #ブランド知識


今回のテーマは顧客視点での商品知識獲得と活用方法です。

おもしろいと思った販売員の方を取り上げ、営業やマーケティングに学べることを見ていきます。

✓ わかること
  • アシックス店の店員さんの接客術
  • 目をつぶってもシューズを当てられる 「利きシューズ」 ができるプロ
  • お客さん視点を忘れない知識獲得の方法
  • 知識を活用し、暗黙知から形式知にしよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

アシックス店の店員


以下は日経新聞の記事からの引用です。

新型コロナウイルス下で健康需要が高まり、走る人が増えている。ランニング商品が一式そろう 「アシックス原宿フラッグシップ」 (東京・渋谷) には、初心者から上級者まで幅広いランナーが来店する。

副店長の久米みのりさん (26) は豊富な商品知識を基に、目を閉じた状態で触ってシューズを見分ける 「利きシューズ」 ができるという。「来店目的や悩みを引き出し、最適な商品を提案する」 (久米さん) 。

まずは聞き役に徹する


どのように接客をしているかを続けて見てみましょう。

まず顧客の来店目的を聞き出すことを久米さんは心がける。どんな商品が欲しいのか、普段から走るのか、走りや足の悩みはあるか。聞き役に回り、自然な会話から需要を探る。

 「目を見ながらしっかりと相づちを打ち、話してもらえる雰囲気を作る」 (久米さん) ことがコツだ。頻繁に走らない人には普段履きでも使える 「ゲルカヤノ」 シリーズを薦めるなど、顧客ごとに最適な1足を提案する。

接客ではいきなりシューズなどの売りたい商品をすすめていません。まずは来店動機を知るなど聞くことに徹しています。

豊富な商品知識の獲得


以前は商品知識が十分にはなかったそうです。

久米さんは入社5年目で、21年11月に旗艦店へ配属された。それまではタイムの短縮を目指すシリアスランナーが多く来店するアシックス東京銀座 (東京・中央) に所属していた。

シューズは商品ごとにソール (靴底) の厚さや形状が異なり、ランナーの走力や好みによって薦めるべきものは違う。久米さんは本格的なマラソンの経験はなく、シューズの知識もなかった。

そこで徹底的に商品知識を身につけ、フルマラソンにも挑戦したとのことです。

売り場に立つようになり、猛勉強の日々が始まった。各商品の重さやソールの厚み、形状を 「必死でたたき込んだ」 (久米さん) 。

同僚と目をつぶってどの商品かを当てる 「利きシューズ」 の練習をし、2か月間で習得した。米ナイキやミズノなどの売り場にも足を運んで試着を繰り返し、競合製品の特徴を学んだ。「知識を身につけ、自信を持って接客できるようになった」 と久米さんは話す。

入社してからランニングを始め、42.195キロのフルマラソンも走った。シューズの販売員なのに走っていないことが分かると、顧客からけげんな反応をされることがあったという。「ランナーの気持ちが分かるようになり、会話が弾みやすくなった」 と久米さんは話す。

学べること


ではアシックスの店員の方から学べることを掘り下げていきましょう。

知識獲得と顧客視点


ご紹介したアシックスの店員の方は目をつぶってもシューズを当てられる利き酒ならぬ 「利きシューズ」 ができるほどのレベルです。自社商品だけではなく競合メーカーのお店に行ったり、マラソンの経験からもランナーの視点を持てるようになりました。

自社で扱っている商品のことに詳しくなることは重要ですが、自社商品ばかりでは視野が狭くなりお客さんの視点とはかけ離れてしまいます。というのは、お客さんはシューズを選ぶ時には必ずしもアシックスの中からだけ買うわけではなく、ナイキなどの他のメーカーも比較検討するからです。

フルマラソンを走ったり普段からランニングをすることでランナーの置かれた環境、心理や行動を肌感覚でつかめるようになります。こうしたお客さんの文脈や背景を知ることが来店したお客との距離を縮めるのです。

暗黙知から形式知へ


自社商品や競合情報、ランニングに精通することで高まるのはまずは 「暗黙知」 です。

暗黙知とは明確に言語化されていない、他人には伝えられる状態にはなっていない頭の中にある知識のことです。わかりやすいイメージは自転車の乗り方です。できるようになれば自然に乗れますが、乗れない人に自転車の乗り方を説明するのは簡単ではないですよね。

暗黙知の対義語が 「形式知」 です。形式知は言語化や図・数式で表せる人に教えられる知識です。

アシックスの店員の方が深い商品知識を接客に活かしているとは、獲得した暗黙知をお客さんとのやり取りを通して形式知に変えていると見ることができます。

持っている知識は活用してこそ価値を生みます。インプットした情報や知識、ノウハウは積極的に自分で使ってみて形式知に変えることを意識してみると良いです。


まとめ


今回はアシックスの店員の方の接客術を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 顧客視点の文脈理解と形式知化
  • 自社商品に詳しくなることは重要だが、自社商品ばかりではお客さんの視点とは乖離してしまう。お客さんは競合商品も比較検討する
  • お客さんの置かれた環境、心理や行動などの文脈を知ることでお客との距離を縮められる
  • 獲得した知識は最初は暗黙知。活用することで形式知に高めよう


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。