投稿日 2022/09/02

ヒット商品 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 に学ぶ、良いアイデアの条件3つ

出典: ハルメク

今回のテーマは、アイデアのつくり方です。

おもしろいと思った 「耳せん」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • ヒット商品 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 
  • 開発の背景は、多くの人が寝付きが悪いことを放置しあきらめていること
  • 良いアイデアの条件

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ナイトミン 耳ほぐタイム


ご紹介したいのは、小林製薬の耳せん 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 です。

出典: 小林製薬

今までにない耳せん


以下は日経新聞からの引用です。

快適な眠りへ導く温まる耳栓――。今までになかった斬新なアイデアで爆発的なヒットとなった小林製薬の 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 だ。2022年上期の日経 MJ 「ヒット商品番付」 東の前頭11枚目に入ったこのアイテムは、昨年10月の発売から約7カ月で、出荷個数110万個を超えた。

 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 は耳栓本体に発熱体を取り付ける構造になっている。発熱体は20分ほど、体温より少し高い40度まで温まり、耳から体全体へじんわりぬくもりを伝えていく。

開発の背景 (問題設定) 


ナイトミン 耳ほぐタイムの開発背景を見てみましょう。

小林製薬のニュースリリースには、次のように書かれていました。

弊社調査によると、20 ~ 60代男女のうち、約半数の方が 「寝付きが悪い」 と感じており、その原因のひとつは、「ストレス」 と思われていることがわかりました。

一方で、対策として 「就寝前や就寝中に目が覚めた際にお茶を飲む」 や、「市販の医薬品を服用する」 方が少数いるものの、特に対処をしていない方が 72% と、最も多いことがわかりました。

普段から寝つきが悪いと感じている人は半数いて、そのうちの7割以上の人は何も対策をしていないようです。寝付きが悪い状態が解決されず、残ったままです。

小林製薬はここを問題と捉え、解決するためのアイデアが 「耳を温めて入眠を促す耳せん」 でした。


良いアイデアの条件


ナイトミン 耳ほぐタイムから掘り下げたいのは、良いアイデアとは何かです。

整理すると3つです。

✓ 良いアイデアの条件
  • 独自性がある
  • メリットがある
  • 実現できる

ナイトミン 耳ほぐタイムに当てはめて見ていきましょう。

独自性がある


小林製薬は、寝つきが悪く放置されたままという問題を解決するために、耳に着目しました。他にはない発想です。

開発は18年に始まった。前年に発売した 「ナイトミン 鼻呼吸テープ」 のヒットを受け、睡眠に特化した商品のプロジェクトを立ち上げたのが始めだという。

睡眠の質を高める上で、注目したのは 「耳」 。医者や有識者からのヒアリングを元に、心身のリラックスに欠かせない副交感神経が、睡眠に深く関わっているということと、耳に副交感神経が多く集まっているということに着目した。

その耳を 「温める」 という発想に至ったのは、プロジェクトメンバーの 「眠っている赤ちゃんの耳は、赤くなるほど温かい」 という気づきだった。耳を温めればリラックス効果でよく眠れるようになるのではないか――。それが商品開発の原点となった。

耳せんは色々な種類がありますが、耳を温める耳せんは斬新で今までにはない独自性があります。

メリットがある


ナイトミン 耳ほぐタイムには、次の2つの特徴から寝付きを良くする効果が期待できます。

✓ 「ナイトミン 耳ほぐタイム」 の特徴
  • 温め効果: 発熱体が耳を温める (温め効果は約20分持続) 。耳からリラックスでき、寝る前にやすらぎを与えてくれる
  • 防音効果: 周囲の雑音が入眠を妨げるのを防ぐ

実現できる


ナイトミン 耳ほぐタイムの開発には、苦労とこだわりがありました。

ニュースリリースから引用すると、

製品のこだわりポイントは、「耳せんの形状」 と 「発熱体の温度」 です。

耳の形は個人差が大きく、耳せんの最適な形状を見つけるのに大変苦労をしました。担当者自らが社内100人以上の耳を計測して回り、より多くの人の耳にお使いいただけるように、細かな角度までこだわり設計をしました。

また、本製品のような小型発熱体は安定した温度で長時間発熱をさせることが難しいため、成分の配合量を少しずつ調整しながら、完成までに約1年、50回ほどの試作を繰り返し、ようやく、気持ちよさのカギとなる発熱体の完成に至りました。

アイデアを実現できたポイントは他には、2017年に発売した 「ナイトミン 鼻呼吸テープ」 が睡眠時に鼻呼吸を促す商品であり、睡眠トラブルを解決した過去の成功体験があったこともあります。また、医師や有識者へのヒアリングから生まれた高い問題意識、知見を持っていたことも挙げられます。

以上のように、小林製薬には 「耳を温めて寝付きを良くする耳せん」 を開発できるケイパビリティ (能力) があったからこそ実現できたわけです。


学べること (まとめ) 


では今回のまとめに入っていきましょう。

ナイトミン 耳ほぐタイムから学べるのは、アイデアを考えたり、複数の候補の中から良いアイデアを選ぶ方法です。

良いアイデアの3つの条件は、チェックポイントとして活用できます。

✓ 良いアイデアの条件
  • 独自性がある
  • メリットがある
  • 実現できる

アイデアを出し磨いていくプロセスには 「発散」 と 「収束」 があります。

まずは多くのアイデアをブラスト等で出していき (発散) 、玉石混交のアイデアの中から筋の良さそうなものに絞っていきます (収束) 。この時に良いアイデアの3つの条件が使えるので、3つは覚えておいて損はないです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。