ゲルカヤノ 28 (出典: シリアスランナー)
今回のテーマは、マーケティングコミュニケーションです。
アシックスのランニングシューズの事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。
✓ この記事でわかること
- 30年のロングセラー 「ゲルカヤノ」
- 発売当初の課題と解決策
- マーケティングコミュニケーションに学べること
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
アシックスのシューズ 「ゲルカヤノ」
今回見ていきたいのは、アシックスのランニングシューズ 「ゲルカヤノ」 です。
ゲルカヤノ 28 (出典: シリアスランナー)
1993年に登場して以来、30年近く続いているロングセラーです。
発売当初の課題感
日経新聞に、ゲルカヤノについて書かれた記事がありました。
1993年の発売した当初には、高い機能性をどう伝えるかという課題がありました。消費者にゲルカヤノの機能が十分に伝わっていないというのが、解決すべき問題でした。
アシックスのランニング用シューズ 「ゲルカヤノ」 は初心者ランナー向けに 「完走の喜びを身近に」 という考えで作られたシューズだ。1993年に発売して以降、毎年進化を続けてきたゲルカヤノは2021年発売のモデルで28代目になった。
(中略)
ゲルカヤノが生まれたのは1993年。米国向けランニングシューズのフラグシップモデルとして、当時の最新技術が詰め込まれた。アシックスはそれ以前にも高機能シューズを販売していたが、なかなか伸び悩んでいた。
初代の開発責任者である榧野 (かやの) 俊一さんは 「デザインなどがシンプルで、目立たなかった」 と振り返る。機能性では評価される一方、米国の客からは 「アシックスの良さは履かないと分からない」 という声も上がっていた。
デザインからの訴求
ゲルカヤノはデザインで差異化を図りました。
そこで、売り場で目立つ、当時としては珍しいデザインにしようと、固くて動きも軽やかなクワガタをモチーフに製作。
当時の高機能シューズはデザインまで注力したものが少なかった中、街で履くスニーカーのようなデザインのシューズが誕生した。ゲルという名前と、榧野さんの名前を取って 「ゲルカヤノ」 と命名された。
機能性を数値で可視化
ゲルカヤノのターニングポイントになったのは、機能性を8つの項目で整理し、数字で高い機能性を示したことです。
それでも発売直後からヒットしたわけではなかった。転機となったのは6代目のシューズ。アシックススポーツ工学研究所 (ISS) が製作に関わった時だ。ISS はクッション性、安定性など靴の8つの特徴を 「八大機能」 と定義し、それぞれの機能について数値化を目指していた。
ISS が製造に関わることで 「クッション性が 3% 向上」 といったように、前のモデルと比較できるようになり、このことがプロモーションに役立った。顧客にとって前年のモデルとの違いが分かりやすくなり、5代目から7代目にかけて生産数が増加していった。
その後は 「アシックスの顔」 として米国だけでなく、欧州や日本でも人気のモデルとなってきた。10代目では ISS の研究成果がシューズの底の部分だけでなく上部にも取り入れられ、フィット性が向上した。
「伝えた」 と 「伝わった」 の違い
ゲルカヤノの事例から学べるのは、お客さんに伝えることの重要性です。
アシックスはシューズの見た目のデザインを斬新なものに変更したり、研究所と協力して機能性を数値化するなど、あの手この手で伝えようとしました。
一般的な話として、どんなに良い商品でも、その良さをお客さんに知ってもらわなければ手にとってもらえず、買ってもらえません。そこで、自社商品・サービスの特徴やお客さんへのベネフィットを伝えようとするわけですが、自分たちは伝えたと思っても、相手には伝わっているとは限りません。
コミュニケーションにおいては、言う側の 「伝えた」 と言われた側の 「伝わった」 は同じではないのです。
自社商品は良いのに、商品が売れない原因を 「お客さんがわかっていないからだ」 と相手のせいにし、伝わっていないことを他責にしていないでしょうか。
アシックスのゲルカヤノのように、数字で見せて客観性を示したり、時には目立つパッケージデザインや売り場にして人を惹き付けるなど、「お客さんに伝えることに貪欲になっているか」 は、あらためて自分に問いかけたいことです。
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