投稿日 2023/01/20

赤いきつねの CM が 「顧客インサイト」 を見事に表現。インサイトを狙おう


今回のキーワードは、顧客インサイトです。

おもしろいと思った CM を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 赤いきつね 緑のたぬきの CM
  • 背徳感を描くストーリー
  • マーケティングに学べること
  • 顧客インサイトを狙おう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

赤いきつね 緑のたぬきの CM


ご紹介したいのは、「赤いきつね 緑のたぬき」 の CM です。

マルちゃんの 「赤いきつね 緑のたぬき」 は、赤いきつねが発売された1978年から現在に至るまで、45年間にわたってテレビ CM を放映し続けています (緑のたぬきは1980年に発売) 。

ロングセラーの CM シリーズで変わらずメインキャラクターを務めるのが武田鉄矢さんです。1978年の1作目から CM に出演し続け、これまで登場した作品数は累計200本以上とのことです。

CM の内容



この CM では武田鉄矢さんが父親役 (妻の父) として、女優の麻生久美子さんが武田さんの娘役、お笑いタレントのシソンヌじろうさんが旦那役として出演しています。

夫婦とその父親という、3人の日常を描いた CM 設定です。

CM 前半の内容は、深夜に武田鉄矢とシソンヌじろうの2人が、麻生にばれないよう赤いきつねを食べるというものだ。

2人がささっと廊下を移動したり、寝室で寝ている麻生久美子の様子をのぞいたり、キッチンで音が聞こえないようこそこそとカップ麺を作ったりと、冒頭からシーンが矢継ぎ早に移り変わる。

スパイ映画のような臨場感も相まって、退屈せずに映像が流れていく。ここまでの前半で視聴者をくぎ付けにした。

そして CM は後半へ。

後半部分ではまず、赤いきつねの完成品のカットが流れ、それから2人が赤いきつねを食べるシーンに。「ジュワッと染みた甘~いお揚げ」 「おつゆがしっかり絡んだ麺」 と、商品特徴を伝えるナレーションが入り、赤いきつねをおいしそうに堪能する描写がじっくりと挿入される。

2人はおいしさからか気が緩み、最終的に麻生に夜食がばれるオチとなっている。

 「食べたくなったら、止まらない」 という背徳感


CM に出てくる言葉で印象的なのは、「食べたくなったら、止まらない」 です。訴求したいメッセージが、一言でうまく表現されています。

人の心理として誰しもが持っている 「背徳感」 を突いています。

ここで言う背徳感とは、人には言いたくないがついやってしまう、どうしてもやりたい奥にある衝動です。裏切りというと大げさですが、自分の中で何かに背くような気持ちです。

CM では、娘でもあり妻でもある家族にバレないように 「赤いきつねのカップ麺を夜食にする」 というストーリー設定でした。食べたいという欲求の奥には、「夜食に別腹で食べたい」 「家族にバレたら何か言われる。でも食べたい」 という本音があり、うまく描写しています。


学べること


では、「赤いきつね 緑のたぬき」 の CM から、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。

人を動かす隠れた気持ち


ご紹介した CM は、「顧客インサイト」 に響くストーリーになっています。

顧客インサイトとは、人を動かす隠れた気持ちです。

普段はお客さんは意識していないものの、そうだと気づかされれば行動につながる奥にある心理です。行動とは、商品やサービスを買う、使う (例: 食べる) 、来店する・訪問することです。

日常の中では無意識の中にありますが、これらの行動につながるのが顧客インサイトです。顧客インサイトのことを、「心のツボ」 や 「心のホットボタン」 と表現したりもします。

顧客インサイトを狙おう


CM で描かれた心理は、「ここで食べるのは良くないと思っても、どうしても今食べたい」 という衝動でした。

奥にある顧客インサイトを言語化すると、

  • 誰かにバレるかもしれないというドキドキ感
  • 理性を忘れて衝動的な欲求に身を任せた快感
  • 誰にもバレずに自分だけがやっていることへの達成感や満足感

こうした人の本音や本性は誰もが少なからず持っていますが、他人に言うのははばかられるものです。

だからこそ CM などのマーケティングコミュニケーションで見せられると、奥にある気持ちが呼び起こされ共感を生み、自分も同じことをやってみたいと思うわけです。

学びを一般化して表現をすると、

  • お客さんの顧客インサイトは何か
  • そのマーケティングは顧客インサイトを満たしているか

マーケティングや商品開発では、この2つの問いは常に持っておきたいです。


まとめ


今回は 「赤いきつね 緑のたぬき」 の CM を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 顧客インサイト
  • 人を動かす隠れた気持ち。「心のツボ」 や 「心のホットボタン」 と表現する
  • 普段はお客さんは意識していないものの、そうだと気づかされれば行動につながる奥にある心理
  • お客さんの顧客インサイトは何か、そのマーケティングは顧客インサイトを満たしているか


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。