投稿日 2023/01/03

エバラの 「フライパンで焼肉鍋」 。2つのいいとこ取りに学ぶマーケティングの役割

出典: エバラ

今回のテーマは、マーケティングの役割についてです。

おもしろいと思った食品を取り上げ、マーケティングの本質を掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • エバラの 「フライパンで焼肉鍋」 の売上が好調
  • 消費者への不満に新しい価値提案
  • マーケティングの役割

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

フライパンで焼肉鍋


ご紹介したいのは、鍋のもとの 「フライパンで焼肉鍋」 です。

出典: エバラ

好調な売上


売上は計画を超えるとのことです。

焼き肉なのか鍋なのか。エバラ食品工業が8月に発売した鍋のもと 「フライパンで焼肉鍋」 が好調だ。

4年ぶりの新ジャンルの商品で、フライパンで肉を焼いてから野菜を加え煮込んで鍋にするという新しい食べ方を提案する。準備や片付けの手間を減らしたことで子育て世帯の支持を集め、発売2カ月の売り上げは当初の計画比で2.5倍と、じわりと売り上げを伸ばしている。

これまでの鍋のもととは違い、土鍋を使わず、カセットコンロも使わないですむようにした。調理に使うのはフライパン。肉を焼く工程を経て野菜とともに煮込んだ後、そのまま食卓に出すという方法を提案する。

開発の課題


ユニークな商品の開発背景にはどんな課題があったのかを、続けて記事から見てみましょう。

比較的調理が楽な鍋料理では特にマンネリ化しやすい。エバラ食品工業が30 ~ 60代の主婦に実施したアンケート調査では鍋料理の不満点として 「具材の組み合わせが同じになる」 「家族の好みでいつも同じような味」 「土鍋などの準備片付け」 などが挙げられた。

 「鍋のもとは味の違いは多いが、作り方や食べ方の提案は少なかった」 (渡辺さん (引用者注: 開発に携わった商品開発部の渡辺哲也さん) ) 。

新しい提案


エバラの 「フライパンで焼肉鍋」 は名前の通り、焼肉と鍋料理の 「いいとこ取りな商品」 です。

普段の料理から使用頻度の高いフライパンを使うという焼肉の要素と、鍋料理のように野菜を多く取れます。

消費者には、自宅での鍋料理に面倒さや不満があり、具体的には 「具材の組み合わせが同じになる」 「家族の好みでいつも同じような味」 「土鍋などの準備や片付けが大変」 などです。ここにエバラは 「焼肉 + 鍋」 という新しい提案をすることで、消費者ニーズに応えようとしているわけです。

先ほど引用した記事は消費者からの 「フライパンで焼肉鍋」 への反応として、「調理も後片付けも楽」 や 「焼き肉ではあまり食べない野菜をたくさん食べられる」 といった声が書かれていました。


学べること


では、今回の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

結論から言うと、強みをどこに見出すかに学びがあります。

 「フライパンで焼肉鍋」 の強み


フライパンで焼肉鍋は、焼肉と鍋料理のいいとこ取りな商品という表現をしました。

マーケティング視点で言い換えれば、焼肉と鍋料理のそれぞれに対して 「異なった強み」 を持っているということです。

一般的な焼肉に比べての 「フライパンで焼肉鍋」 の良さ (比較優位) は、「焼肉ではあまり食べない野菜を多く食べられること」 です。そして、鍋料理に対する優位性は 「調理も片付けも楽なこと」 です。

このように、フライパンで焼肉鍋は焼肉と鍋料理に対してそれぞれの強みがあるので、

  •  (普通の) 焼肉を食べようと思う人には、野菜もたくさん取れるので 「フライパンで焼肉鍋」 を食べてみよう
  • 鍋料理にしようと思う人からも、準備や後片付けが楽なので 「フライパンで焼肉鍋」 を選ぼう

と思ってもらえるわけです。

フライパンで焼肉鍋は、焼肉からも鍋からも両方からお客さんを獲得できます。

マーケティングの役割


ここまでの学びを一般化すると、「自社の商品やサービスが、競合商品ではなく自分たちが選ばれる理由をつくろう」 です。

自社商品が偶然にお客さんから選ばれるのをただ待っているのではなく、意図的に選ばれる確率を高めるのがマーケティングです。

フライパンで焼肉鍋の事例は商品開発からでしたが、商品の中身は変えられなくても価値の見せ方などのコミュニケーションからでも選ばれる理由はつくれます。

自分たちは 「お客さんからなぜ選ばれるか」 を理解し明確にし、お客さんから選ばれ続ける理由をつくっていく。ここにマーケティングの役割があります。


まとめ


今回はエバラの 「フライパンで焼肉鍋」 を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ マーケティングの役割
  • 自社商品が偶然にお客さんから選ばれるのをただ待つのではなく、意図的に選ばれる確率を高めることが大事
  • 自社の商品やサービスが、競合商品ではなくお客さんから選ばれ続ける理由をつくっていこう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。