投稿日 2023/01/10

クラファンで濃厚な石鹸の泡が出るシャワーをヒット商品に。マーケティング視点でのテスト販売の有効活用法

出典: MONOist

今回のテーマは、テスト販売です。

おもしろいと思ったクラウドファンディングの活用事例を取り上げ、学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • LIXIL がクラファンを使いヒット商品にした事例
  • クラファンとは小さな PDCA
  • マーケティング視点での有効なテスト販売の方法とは?

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

クラファンを有効活用する LIXIL


LIXIL がクラウドファンディングを活用し、ユニークな商品を相次ぎ開発しているとのことです。

この話は日経新聞の記事で紹介されていて、クラウドファンディングを成功させた例としてシャワーが取り上げられていました (クラファンのマクアケのサイトはこちら) 。

このシャワーの特徴は、ヘッドから出るお湯を泡せっけんに切り替えられるところにあります。

出典: PR TIMES

濃厚な石鹸の泡が出るシャワー


以下は記事からの引用です。

5月に本格販売を始めたシャワーは 「KINUAMI U (絹浴み 結) 」 (7万6780円) 。

シャワーヘッドやホースのほか、専用の泡せっけんを収納する本体などが一体になっている。本体のバーハンドルで、シャワーヘッドから出るお湯を泡せっけんに切り替えられる。「入浴に新たな価値を提供したい」 と LIXIL 子会社で住宅設備機器販売を手掛けるニットーセラ (愛知県常滑市) が中心となり開発した。

消防車や消火器に使われている泡生成技術を応用し、人の手では難しい濃密な泡を作り出す。多量の空気を含んでいるため泡が肌に密着し、体から熱が逃げるのを抑えるという。工事は不要で、本体は浴室の壁に磁石で取り付けられる。

専用サイトで販売しており、想定を超える売れ行きという。機能性や使い勝手のよさが支持され、家族層を中心に購入されているほか、介護施設でも導入が進んでいるという。

シャワーから泡になる様子は、こちらをご覧ください。


クラファンからの商品開発


興味深いのは、クラファンの購入者の声を聞いて商品をさらに改良し、本格販売につなげたことです。

同商品の好評の背景にあるのはクラウドファンディング (CF) を通じたテスト販売だ。2019年に前身モデルにあたる商品を100台限定で CF サイトの 「マクアケ」 で販売したところ、完売。本格販売に向け、購入者への聞き取り調査などで得た消費者の声を商品の改良に生かした。

例えば、前身モデルでは本体のつまみをひねることでお湯と泡せっけんを切り替えていたが、「操作しにくい」 との声を受け、「子どもや高齢者も操作しやすいように」 (同社) バーハンドルに変更。泡を作るためのコンプレッサーは浴室の外に置き、浴室内の本体とコードでつなぐ必要があったが、「作業が大変」 との意見が寄せられ、小型化して本体に内蔵した。

こうした改良を加えて21年3月にマクアケで 「KINUAMI U」 として5万 ~ 6万円前後でさらにテスト販売したところ、約3カ月で目標の100万円を大幅に上回る5800万円超の売り上げを記録。本格販売を決めた。

マーケティング視点での整理


ここまでの話をいったん整理しておきましょう。

LIXIL はテスト販売でマクアケでのクラファンを有効に使いました。

ここで言う 「有効な活用」 の意味は、マーケティングの観点では次の2つがあります。

  • 誰がお金を払って買ったかがわかる [顧客は誰か]
  • 使っての感想、使いにくいところなどのフィードバック [使われ方]

一般的な販売に比べて、売り手と買い手の心理的な距離感が近いクラファンだからこそわかることです。


学べること


では、LIXIL の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

示唆があるのは、テスト販売の目的や位置づけ、有効に活用する方法についてです。

小さな PDCA


本格的な販売の前にテスト販売をすることで、「売り方」 と 「売り物」 の両方で改善の余地があるのかがわかります。

商品やサービスをつくる、マーケティングをする、販売するという全体のプロセスをテスト販売によって小さく早くまわせます。小さな PDCA を1回やっているというわけです。

テスト販売の有効活用


PDCA のやり方は色々あり、例えば無料でサンプル品 (試供品) を渡して商品の感想を集める方法もあります。それに対してクラファンでのテスト販売は、実際にお金を払ってくれた人は誰か、購入者からの生の声がわかります。

無料ならということで使った人と、身銭を切って使ってくれた人では、得られるフィードバックの質的な意味は異なります。お金を払ってくれた人は誰なのか、どのように使い、使ってどう思ったのかという顧客理解をより深くできます。

本格販売前の早い段階でお客さんの行動と心理を理解し、商品そのものの改善、マーケティングや販売プランの反映に活かすことが、テスト販売を有効に使う方法です。


まとめ


今回は LIXIL のクラファンでの事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 有効なテスト販売の方法
  • テスト販売から、お金を払ってくれた人は誰か、どのように使い、使ってどう思ったのかという顧客理解ができる
  • 商品やサービスをつくる、マーケティングをする、販売するという全体のプロセスの PDCA を小さく早くまわせる
  • 本格販売前の早い段階でお客さんの行動と心理を理解し、商品そのものの改善、マーケティングや販売プランの反映に活かそう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。