投稿日 2023/01/11

逆説の日本史に学ぶ、マーケティングで大切なこと


今回は、歴史に学ぶマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 「逆説の日本史」 とは
  • 邪馬台国と卑弥呼の正体
  • 井沢史観とマーケティングとの共通点
  • 歴史に学ぶマーケティングで大切なこと

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

逆説の日本史


最近読んでおもしろかった本がこちらです。


本書の概要


本の内容を簡単にご紹介すると、5つのキーワードで日本の古代から平安時代直前までがマンガでわかりやすく書かれています。

5つのキーワードとは、

  • 天皇
  • 穢 (けが) れ
  • 怨霊 (おんりょう) 
  • 言霊 (ことだま) 

井沢さんが考える 「歴史の転換点」 に現代からタイムスリップをして見に行くというマンガの設定です。そのシーンから日本史にどんな影響を与えたのかを解説しています。

権威主義にとらわれず、史実絶対主義にならず、中国や朝鮮の当時の時代背景、日本人の宗教観や価値観、心理、当時の風習・風俗から総合的にとらえる歴史です。ストーリーにつながりと奥行きがある歴史解釈です。

邪馬台国と卑弥呼の正体


逆説の日本史で印象的だったことを少し紹介すると、邪馬台国と卑弥呼についての話でした。

邪馬台国は、当時の中国の人たちが日本人が説明した言葉を聞き取る 「ヤマト国」 を 「邪馬台国」 という当て字にしたのではという歴史解釈です。

同様に卑弥呼も、太陽神のお告げを伝えるシャーマンである 「日の御子」 を 「卑弥呼」 と表記したのではという説です。

中国には中華思想という周辺国を下に見る特徴がありますが、邪馬台国には邪悪などに使われる 「邪」 、卑弥呼には 「卑しい」 という字が当てられているのは、中華思想からきているのではという歴史解釈です。

邪馬台国よりも 「ヤマト国」 、卑弥呼ではなく 「日の御子」 のほうが、すんなりと腹落ちします。

もう1つおもしろいと思ったのは、「日の御子」 は人物名ではなく役職だったのではという見立てです。江戸幕府の将軍のようなもので、代々で徳川家が将軍を受け継いだように、日の御子も複数の女性が一代目の日の御子、二代目の日の御子が続いたのではと。この歴史解釈はおもしろいです。


マーケティングに学べること


逆説の日本史で書かれていたことは、マーケティングの視点でも興味深かったです。

著者の井沢さんの歴史の解釈や見立ては、マーケティングのお客さんを理解する方法に通じるからです。

史実絶対主義とお客さんの言葉


井沢さんの言う史実絶対主義とは、史実に書かれていることのみを材料に歴史を読み解き、書かれていない当時の風習や宗教的側面は無視することです。

これをマーケティングに当てはめると、お客さんへのアンケート調査回答、インタビュー調査で言ったことの表面的な言動のみから顧客理解を済ませることです。お客さんが口で明言したことのみを顧客ニーズと捉え、奥にある気持ち、言葉にならない・できない心理面を無視したり軽視することと同じです。

奥にある顧客インサイト


マーケティングの顧客理解で大事なのは、お客さん本人以上に、マーケターがお客さんのことを深く理解することです。

本人以上の理解とは、お客さんが気づいていないこと、わかっていても的確に言葉にできないこと、あるいは言葉にして他人に言うのが恥ずかしい本音までです。

直接的にお客さんの口から聞けなくても、マーケターはお客さんの言動や観察から解釈も入れて奥にある心理を見出すことが求められます。

そうした心理をズバリ言い当てられたり、潜在的な望みを叶え不満を解消する商品を提示すれば、お客さんは 「そうそう、これが欲しかった」 となるのです。

このような心のツボや心のホットボタンをマーケティングでは 「顧客インサイト」 と言います。

顧客インサイトとは、 「お客さんを動かす隠れた気持ち」 です。

歴史のおもしろさ


逆説の日本史に話をつなげると、顧客インサイトを理解するのと同じことをやっているのが井沢さんの歴史解釈のアプローチです。

もちろん井沢さんの見立てが 100% 正解とは限らないでしょう。しかし、史実に書いていないこと、史実の書き手の思惑や書物にした動機、海外の情勢、当時の人々の心理、日本人に今なお残る価値観など、多角的な視点や情報を入れての歴史解釈は読み手をわくわくさせてくれます。

学びの一般化


今回の話からマーケティングに学べることを一般化すれば、「お客さんの理解は、見る領域を広げ、多角的に掘り下げよう」 です。

領域を広げるとは、お客さん本人だけではなく生活環境や人間関係までです。多角的に掘り下げるとは、最低限のアンケートやインタビューなどでお客さんの語った内容だけにとどまらず、建前と本音など時には矛盾することも一旦は受け入れて、その上で解釈を膨らませることです。

以上のような試行錯誤を続けて、ようやくお客さんの真実が見えてくるのです。

日本史を、その当時の史実だけを見ていては歴史解釈が局所的になるように、マーケティングでの顧客理解もお客さんの言動だけではなく、顧客インサイトまでを掘り下げることが大事です。


まとめ


今回は井沢さんの 「逆説の日本史」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ マーケティングでの顧客理解
  • マーケティングの顧客理解で大事なのは、お客さん本人以上にお客さんのことを深く理解すること
  • お客さんが気づいていないこと、わかっていても的確に言葉にできない、あるいは言葉にして他人に言うのが恥ずかしい本音まで
  • お客さんの理解は見る領域を生活環境や人間関係まで広げ、多角的に掘り下げよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。