投稿日 2023/01/05

アース製薬の感覚に訴えるアプローチ。突き詰めるとマーケティングとは?


今回のキーワードは 「感性」 です。ブランディングについて見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 五感ブランディングとは?
  • アース製薬の感性に訴えかけるマーケティング
  • 人は何で選ぶのか
  • マーケティングは突き詰めると 「行動と心理」 の人間理解

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

五感ブランディング


最初にご紹介したい本があります。

本のタイトルは ブランドらしさのつくり方 (博報堂ブランドデザイン) です。


本書の概要


内容を一言で表現すれば、「人の五感に訴えかけるブランディング」 をどうやってつくるかが事例とともに解説されている本です。もっとシンプルに言えば 「五感ブランディング」 です。

五感とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5つで、五感ブランディングとは五感を効果的に商品やサービスの中に入れ、「らしさ」 をつくることで商品・サービスをブランドにするという考え方です。

五感というとフワッとした話になってしまいそうなところを、具体的に五感を使ってどうやってブランドをつくっていくかがわかりやすく書かれていておもしろかったです。

本の後半では、「新宿ブランディング」 に当てはめていて、興味深く読めました。新宿を新たにブランド化するという架空の事例 (ケーススタディ) です。

架空とはいえ、実際の調査データや博報堂でのワークショップの中身も公開されています。データや分析から新宿と渋谷が比較されていておもしろいです。ページ数も使っていて、五感に訴えかけるブランディングの具体的なイメージを持つことができます。

五感ブランディングの方法


この本が提示する、五感ブランディングのアプローチの全体像は、

  • [現状把握] 五感の要素に分けて現状を整理し理解する
  • [理想描写] 商品・サービスの五感の要素を統合し、理想とする姿を描く
  • [実行] 活動計画に落とし込み、五感での商品体験からブランディングを展開する

全体像は、問題設定から解決をしていくプロセスそのものです。逆に言えば、問題解決の流れをブランディングに適用しているとも言えます。

* * *

では、五感ブランディングのように人の感性に訴えかける事例をご紹介します。


アース製薬の事例


殺虫剤や入浴剤を扱うメーカーのアース製薬の取り組みが興味深かったです。

以下は、アース製薬の川端克宜社長へのインタビュー記事からの引用です。

―― 商品開発にあたって重視していることは何でしょうか。

 「人の感覚に伝わるような商品を作ることを意識しています。何を良いと感じるかなど人間の感覚はあいまいなものです。お客様が使ったときに、見た目や音で伝わるかどうかが大事なのです。例えば、静かなスプレーと勢いよく噴射するスプレーとで、データ上の効果は一緒だとしても、使う人の感覚では『ブシューッ』と音がして広がったほうが、より効いている感じがするものです」 

 「効果についてエビデンスがあっても、使用感に違いを感じてもらえなければお客様への訴求が難しいと思います。消費者向けの製品を手掛けるうえでは、あいまいな人間の感覚を相手にしているという意識を強くもつようにしています」 

 「バブルーンのシリーズは、そうした点に、大いにこだわっています。勢いよく泡がもこもこと出る見た目など、情緒に訴える面であえて味付けをした商品です。いまは情報化社会で定量的な説明が重視されますが、こういう時代だからこそ感覚に訴えるものが求められるのでしょう。当社の商品が SNS で話題になったことで、やはり人々の感覚に響いたと『答え合わせ』ができたように思いました」 

殺虫剤や入浴剤なので味覚は入っていなく五感の全てではないですが、消費財において生活者の感覚に訴えかけているアプローチはおもしろいです。

先ほどの引用内から整理をすると、

✓ 殺虫剤
  • お客さんが使ったときに、見た目や音で伝わるかどうかが大事
  • 例えば、静かなスプレーと勢いよく噴射するスプレーとでは、たとえ両者の効果はデータ上は同じでも、使う人の感覚では 「ブシューッ」 と音がして広がったほうが、より効いている感じがする

✓ 入浴剤
  • バブルーンのシリーズは大いに感性にこだわっている
  • 勢いよく泡がもこもこと出る見た目など、情緒に訴える面であえて味付けをした商品


学べること


では、アース製薬の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

人は何で選ぶのか


売り手の立場になると、消費者は合理的に自社商品や競合商品を選んでいるように思えます。

しかし実際はそうではありません。曖昧な感情や直感的に好きなもの・良いと思うものを選び取っています。

感情につながる要素に人の五感があります。五感での体験が豊かなものほど、生まれる感情も良いものになります。これらの感情から商品はお客さんの頭の中でブランドになり、選ぶ理由になったりします。

こうした人の本能的な選び方は、マーケターとして理解しておきたい側面です。

お客さん (人間) の行動と心理


学びを一般化して表現をすると、お客さんの行動、行動につながっている心理、行動によって生まれる心理までを理解する重要性です。

心理面はロジカルな思考だけではなく、感情的で曖昧なもの、本人もうまく説明できない直感的なものまでです。

マーケティングを成功させるためには、お客さんのことをどれだけ深く理解するかが問われます。突き詰めると、結局のところは人間理解に行き着くのです。


まとめ


今回は感性に訴えるアプローチから、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 人間理解からのマーケティング
  • 消費者は合理的に商品を選んでいるように見えるが、実際は曖昧な感情や直感的に選び取っている
  • お客さんの行動、行動につながっている心理、行動によって生まれる心理までを理解することが大事
  • マーケティングを成功させるには、お客さんのことをどれだけ深く理解するか


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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最も力を入れているのはニュースレターです。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。