投稿日 2023/01/21

D2C スニーカー GOWW が実店舗でサブスク会員を獲得。顧客関係を丁寧に高めよう

出典: encore

今回のテーマは 「お客さんとの関係の高め方」 です。

おもしろいと思った D2C スニーカーブランドの取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • D2C スニーカーのポップアップストア
  • 実店舗で想定以上の成果
  • サブスク登録へのつなげ方
  • ゴールから逆算する顧客体験のつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

D2C スニーカー 「GO WITH WHITE」 


取り上げたいのは、D2C で白色のスニーカーを展開する 「GO WITH WHITE」 です。

ポップアップストアを展開


出典: encore

GO WITH WHITE が2022年4月29日から5月7日の期間で、ブランド初となるポップアップストアを渋谷でオープンしました。

9日間で約2000人が来店し、目標販売数の2倍以上を売り上げたとのことです。

GO WITH WHITE の話は日経クロストレンドの記事で紹介されていました。以下はリード文です。

白スニーカーの D2C ブランド 「GO WITH WHITE」 。2021年5月の立ち上げ以来、EC をメインに展開してきたが、初のポップアップショップを期間限定で出店した。

 「当初はリアルで販売する必要はない」 と考えていた同ブランドが、リアル店舗設置を選んだ狙いとその成果を聞いた。

ポップアップストアを出した背景


EC ではなく実店舗を出した背景には、EC というネットのみでスニーカーを販売する難しさがありました。

GOWW (GO WITH WHITE) がポップアップショップを展開したのには理由がある。林氏 (引用者注: D2C 支援事業の SUPER STUDIO の林紘祐 CEO) は次のように説明する。

 「EC (電子商取引) で買い物をする顧客と、店頭などリアルで買い物をする顧客とでは層が異なるのではないか。リアルで買い物をする顧客にも、GOWW のプロダクトやサービスの良さを知ってもらって、そこから EC でのつながりが持てるような動線をつくりたかった」 

D2C を標榜するように、GOWW は EC での直販を主軸としてきた。「当初はリアルで販売する必要はないと考えていた」 と林氏。だが、ベータ版からブランドを展開し検証を重ねていく中で、スニーカーを EC で販売することの難しさに気付き始めた。「一度履いてもらえれば見た目以上に軽くて履き心地がいいことを分かってもらえると思っていたが、やはり EC のみだとユーザーにそれが伝わりづらかった」 (林氏) 

試着も受け付けているが、EC サイトを通じて試着会に申し込む必要があり、商品を手に取って即試着ができる店頭販売と比べるとハードルが高い。一度ユーザーに商品を送って試着してもらうにしても、「一度履いてみてから再び送り直すのは、自身の経験から考えてみても煩わしい」 (林氏) 。

しかも、扱っている商品は白スニーカー。ファッションへのこだわりが強い20代後半 ~ 40代をターゲットとしており、白くきれいな状態で履き続けられることがユーザーへのアピールポイントだ。それを実現するため、スニーカーの傷や汚れをメンテナンスするリペアや、靴ひもを自身の好みのものにカスタマイズするカスタムなどを含めたサブスクリプション (定額課金) プランも展開している。

こうしたブランドの特徴をユーザーに体感してもらうため、ポップアップショップへの挑戦を決めた。

GO WITH WHITE の課題感は、スニーカーを EC で販売することの難しさでした。一度履けば軽さや履き心地はわかってもらえるものの、EC のみだと消費者には伝わりづらかったと。

そこで実店舗を期間限定ポップアップストアとして展開し、実際のスニーカーを見たり履いてもらう機会をつくりました。商品の良さや価値をダイレクトに伝える場です。

購入者の 9 割がサブスクに加入


EC のみの展開だったところをポップアップストアを出し、その成果で興味深かったのはサブスク加入状況でした。

ストアで商品を買った人の9割がサブスクに加入したとのことです。他にも想定以上の結果を出しました。

ポップアップショップには約2000人が来店し、目標購入数の2倍以上を売り上げた。

来店客からは 「気になっていた商品を試着して、気持ちが高まったところで決済することができ、購入体験として良かった」 という声も寄せられたという。LINE の友だちも、イベント開始前と比較して約4倍に増えた。

さらに、期待を上回る成果も見えてきた。購入者の9割以上がサブスクリプションプランにも加入したという。

 「ウェブで見て興味を持ちつつもサービス内容を理解するには至らなかった顧客が、ポップアップショップに来店し、スタッフから直接説明を受け、試着する中で購入につなげることができた。サービスへの納得感もあり、加入につながったのではないか」 と、林氏は分析する。

学べること


では GO WITH WHITE の事例から、 学べることを掘り下げていきましょう。

サブスクへのつなげ方


マーケティングへの学びとしたいのは、お客さんとの関係の高め方です。

GO WITH WHITE は白スニーカーを EC で扱っていて、期間限定でリアル店舗に出店しました。

ポップアップストアでまずは実物を見てもらったり、スニーカーを試し履きをしてもらいました。店内ではステッカーなどの無料でのノベルティグッズを配ったり、LINE の友達登録も勧めました。

来店者の中には実際にスニーカーを買ってくれ、さらに購入者の9割がサブスク会員になったのです。

このように、

  1. 試着やグッズの提供 (無料での体験) 
  2. お店で商品を購入
  3. サブスク会員登録

と少しづつ着実にお客さんとの関係を高めていきました。

こうした顧客体験は EC でのネット上だけでは再現がしにくいです。リアルでの店舗体験があったからこそです。

ゴールから逆算する顧客体験の設定


学びを一般化して表現をすると、「お客さんとの関係を最終ゴールから逆算し、一段ずつ高めよう」 です。

例えば最終的なゴールをサブスク会員登録 (もしくはサブスクを退会せずに末永い顧客関係) に設定しても、とはいえ初めてのお客さんにいきなりサブスク登録を促しても簡単にはいかないでしょう。

GO WITH WHITE がやったように、まずはグッズ配布や試着などの無料での体験や価値提供からです。

その後に1つ商品を買ってもらい、次にサブスクという階段を1つずつ上がるように丁寧に進めていくのです。そのためには、お客さんとの接点の1つ1つにおいて、

  • その接点は階段のどこにある状態なのか
  • 上がった先の次は何か
  • 最終的なゴールにつながっているか

以上を意識しながら顧客体験と目指す関係性を設計し、打ち手につなげていくといいです。


まとめ


今回は D2C スニーカーブランド 「GO WITH WHITE」 の取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 顧客体験の設計
  • 売り手にとっての最終的なゴールを、初めてのお客さんにいきなり示したり促しても簡単にはいかない
  • そこで、例えば 「無料での体験 → 商品の購入 → サブスク会員」 と階段を1つずつ上がるように丁寧に進めていくといい
  • お客さんとの関係を最終ゴールから逆算し、打ち手から一段ずつ高めよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。