投稿日 2023/01/07

R-1 が鉄分とカルシウムに絞り新規顧客を獲得。「誰向けの何のためか」 を明確にする重要性

出典: FYTTE

今回のテーマは、ターゲット設定です。

おもしろいと思った乳酸菌飲料を取り上げ、マーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 明治 R-1 の売上が好調
  • 市場で埋もれてしまう危機感、不文律の転換
  • マーケティングでは 「誰向けか」 「何のためか」 を明確にしよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

R-1 ドリンクタイプ 満たすカラダ


今回ご紹介したいのは、明治の乳酸菌飲料の 「R-1 ドリンクタイプ 満たすカラダ」 です。

出典: FYTTE

好調な売上


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

明治の乳酸菌飲料 「R-1 ドリンクタイプ 満たすカラダ」 シリーズが好調だ。低糖・低カロリータイプの R-1 に、「1日分の鉄分」 「1食分のカルシウム」 をそれぞれ加えた。

はやりの機能性表示ではないものの、4月の発売以降4 ~ 6月のシリーズ販売実績が計画比約 8% 超で推移している。

市場で埋もれてしまう危機感


以前には課題があったとのことで、同じ記事から続けて見てみると、

 「直近の成長度合いでいうと、R-1 は転換点に来ている。飲んでもらえる可能性があるのに飲んでいないターゲット層を明確にした」 。開発に携わった乳酸菌マーケティング部プロバイオ G の寺尾佑介氏はこう語る。

2009年に発売した R-1 。小型の乳酸菌ドリンクを市場に浸透させた先駆けで、ターゲットは強気の 「全世代」 。年代問わず受け入れられている点に強みがあった。ただ近年はライバル商品が急激に増えた。

寺尾氏は 「大事なのは差別性。似た商品が出てくると独自性 = 差別性ではなくなる。どう違うのかがふわっとしてきたら一気に崩れる」 と危機感を持つ。

ターゲットの明確化


そこで R-1 はマーケティング戦略の方針を変えました。

どんな層を伸ばせるのか。

これまでターゲットを絞ってこなかった R-1 の不文律を破り、見えてきたのがプラスアルファの栄養を補うニーズだった。30代女性向けに鉄分、60代男女向けにカルシウムを訴求することで拡大の余地があると考えた。

ターゲットを明確にしたことによって、狙い通りの結果になりました。

蓋を開けると、鉄分を加えた商品は狙い通りに30 ~ 40代女性、カルシウムは50 ~ 60代男女のユーザーを獲得した。さらに、購入者の4割以上がこれまで R-1 シリーズを飲んでいなかった新規の顧客だった。

半期に4割程度の顧客が入れ替わるとされる激しいブランド競争のなかで、貴重な顧客基盤になっているという。

R-1 事例のまとめ


ここまでの話をいったん整理してみます。

R-1 はもともとは全世代の人たちに向けた乳酸菌飲料でした。不文律として持っていたものです。

先がけとして登場した2009年頃は良かったものの、競合商品が後から出てきたために他社商品との違いがわかりにくくなり、市場での存在感が薄れてしまいました。

そこでターゲット顧客を明確にし、鉄分入りを 30 ~ 40 代の女性向けに、カルシウムを強化したものを 50 ~ 60 代のシニア男女向けに設定しました。

結果はターゲットで定めた人たちが実際に買ってくれ、しかも R-1 をこれまで飲んでいなかった新規顧客を獲得できたのです。


学べること


今回の R-1 の事例から学べるのは、商品の顧客設定の重要性です。

誰向けの商品か


R-1 は以前は全世代を想定しての商品でした。

これは一見するとお客さんが定まっているように思いますが、全ての人がお客さんだということはお客さんははっきりしないとも言えます。具体的に 「こういう人」 とお客さんが明確でないと、お客さんからのニーズが正確に汲み取れず、訴求ポイントの解像度が粗くなってしまいます。

そこでターゲットを絞り、「誰向けの商品なのか」 をはっきりさせるわけです。

何のための商品か


さらにもう一歩踏み込みたいのは、商品はお客さんにとって 「何のためのものか」 です。

R-1 の例では 30 ~ 40 代女性にとって鉄分をおいしく気軽に摂れるため、50 ~ 60 代の男女にはカルシウムが摂取できるためです。

このように 「誰向けの商品か」 でターゲット顧客を決め、「何のためか」 で提供価値をわかりやすくすることで、お客さんから求められるニーズにフィットさせていく。ここにマーケティングの役割があります。


まとめ


今回は乳酸菌飲料の R-1 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ ターゲット設定の方法
  • 具体的に 「こういう人」 とお客さんが明確でないと、お客さんからのニーズを正確に汲み取れず、訴求ポイントの解像度が粗くなってしまう
  • 「誰向けの商品なのか」 と 「お客さんの何のためのものか」 を定める
  • ターゲット顧客と提供価値を明確にし、求められるニーズにフィットさせよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。