投稿日 2023/01/06

ウッドワンが床材の触り心地をグラフで可視化。「選ばれる理由」 を積極的に伝えよう


今回のテーマは、お客さんへの価値の見せ方です。

おもしろいと思った住宅建材メーカーの取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • ウッドワンが床材の違いをレーダーチャート可
  • チャートでの可視化の効果
  • マーケティング視点での意味合い
  • 本質は 「選ばれる理由」 をつくり出すこと

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ウッドワンの取り組み


住宅建材のウッドワンが興味深い取り組みをしています。

床材をチャート化


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

住宅建材大手のウッドワンは、床材の感覚的な使い心地を 「見える化」 した。実験結果をもとに 「ぴたっと」 や 「くっきり」 など使い心地を5つの視点でグラフにした。

同社は様々な触れ心地の床材を新たに展開しており、データに基づいて顧客に商品を紹介する。感性評価を生かして販売を促進し、購入後の顧客の満足度を高める。

使い勝手がひと目でわかる


五角形のレーダーチャートにすることで、お客さんは床材ごとの違いや使い勝手、触り心地のイメージがわかりやすくなります。

表面の加工によりデザインの異なる商品を用意。(1) 足裏にフィットする 「ぴたっと」 (2) 凹凸を感じる 「くっきり」 (3) すっきりとした 「シャキッと」 (4) ゆったりと感じる 「ほっこり」 (5) きめ細かい肌触りの 「まろやか」 ―― という5つの肌触りによって顧客に商品を説明している。

同社は広島大学客員教授の農沢隆秀氏とマテリアルデザイン研究協会 (大阪市) の栗田雄一理事 (広島大教授) 、一般社団法人感性実装センター (広島市) の小沢真紀子上席研究員らとの共同研究を通じ、使い心地や肌触りを実験。21人のモニターから表面の加工形状が異なる床材について、歩いたときや座ったときにどのくらい落ち着きを感じるかなど約30項目のアンケートを取り、数値化した。

顧客に示すグラフには数値は示していないが、五角形のレーダーチャートによって使い勝手が一目で分かるようにした。

可視化による説得力


売り手であるウッドワンにも、床材の可視化からの恩恵があります。

チャートで示していることで、お客さんへの説明がしやすくなります。

7月に発売したのは、木のあたたかさを生かした 「うづくり」 と、縦に整然と切り込みを入れた 「タテスジ」 、ざらつきのある自然な感触に仕上げた 「オビノコ」 の3種類。例えばタテスジは、 「ぴたっと」 と 「くっきり」 の数値が高かった。家の中では書斎や廊下の床材として顧客に薦めているという。

10月末にはなめらかな曲線の 「ウェーブ」 、不規則な曲線が特徴の 「ハンドスクレイプ」 、スプーンですくったような形状の 「スプーン」 の3種類を出荷開始する。グラフによって6種類の商品の違いが説明しやすくなっている。

学べること


ではウッドワンの床材のレーダーチャート化から、学べることを掘り下げていきましょう。

感覚の定量化


触り心地、使い勝手は人それぞれが直感的に感じ取るものです。人によって基準があります。

自分が良いと思うその感覚を、人に伝えたり説明することは難しいです。触覚以外にも味覚や嗅覚などの五感に共通して当てはまることです。

こうした人それぞれの感覚を定量的に評価し分かりやすく可視化したのが、ウッドワンの床材のレーダーチャートなのです。

選ぶ理由の提示


マーケティングの観点で捉えるとレーダーチャートの意味合いは、お客さんへの選択基準の提示です。

お客さんにとっては、これまでは床材の触り心地はなんとなくの肌感覚でしか、自分に合ったものかどうかはわかりませんでした。しかし、5つの項目で五角形にしてレーダーチャート化されていることで、異なる床材が比較しやすくなります。

また、5つの中にお客さんの視点にはなかった使い心地の項目があれば、自分に本当に合ったものを選べる手助けになります。

マーケティング視点でのレーダーチャート化の本質は、お客さんへの 「選ぶ理由の提示」 にあるのです。

マーケティングの役割


お客さんにとっての 「良い床材の条件」 、例えばきめ細かくて肌触りがよく、ほっこりした気分になれる床材という自分が欲しい床材のイメージが明確になれば、その切り口において複数の床材から最もよいものを選ぶことができます。

選択基準をお客さんから言われてから提示するのではなく、レーダーチャート化という仕組みをあらかじめ用意し、率先してお客さんに見せているわけです。

マーケティングは、お客さんから選ばれる理由をつくることに本質があります。ウッドワンの床材レーダーチャートには、マーケティングへの学びがあります。


まとめ


今回は住宅建材のウッドワンの取り組みをご紹介し、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 選ばれる理由の提示
  • マーケティングとは、お客さんから選ばれる理由をつくること
  • お客さんにはなかった視点 (価値の基準) を示せれば、お客さんが自分に本当に合ったものを選べる手助けになる
  • お客さんにとっての 「良い商品の条件」 を選択基準としてわかりやすく示し、お客さんから選ばれる理由をつくろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。