投稿日 2023/01/19

数ヶ月全く売れなかったカラムーチョ。ファーストカスタマーを見つける重要性

出典: 湖池屋

今回のテーマは、顧客獲得です。

おもしろいと思ったカラムーチョの戦略とマーケティングを取り上げ、学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 「全部カルビーの逆をいく」 。カラムーチョの逆張り戦略
  • 救世主になったコンビニ
  • ドラッカーの慧眼
  • ファーストカスタマーの獲得 (学べること) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

カラムーチョの逆張り戦略


こちらの記事を読みました。

 「カルビーに勝つにはこれしかない」 - 湖池屋がカラムーチョという禁断の味に手を出したワケ|SankeiBiz

左は現在のカラムーチョ, 右は1984年の新発売時のパッケージ (出典: PRESIDENT Online

圧倒的シェアのカルビーへの対抗


カラムーチョを取り上げた記事で、1980年代前半の頃のスナック菓子市場での、圧倒的に高いシェアだったカルビーに対抗するための当時の湖池屋の戦略がおもしろかったです。

一言で言えば徹底した 「逆張り戦略」 で、強者がやらない弱者の戦略でした。

以下は記事のリード文です。

湖池屋のスナック菓子 「カラムーチョ」 は1984年発売のロングセラーだ。その誕生の背景には、最後発にもかかわらず破竹の勢いだったカルビーへの対抗意識があった。

異色のスナック菓子は、なぜ大定番になれたのか。湖池屋創業者の息子で現会長、小池孝氏の証言を交えて明らかにする

1984年のスナック菓子市場は、カルビーが圧倒的なシェアを占めていました。

カルビー参入年に集計された1975年の国内ポテトチップス市場シェアは、湖池屋が 27.6% で1位。しかし1984年にはカルビーが 79.9% と圧倒的なシェアトップとなり、湖池屋は 9.0% と激減。

このまま同じ戦い方をしていては、いずれ淘汰されてしまう。そこで出た結論が 「全部、カルビーの逆を行こう」 だった。

全部、カルビーの逆をやる


では、「カルビーの逆を行こう」 とは、湖池屋は具体的にどのようなことをやったのでしょうか?

記事から続けて引用します。

 「当時ポテトチップスのメインターゲットは女性と子供でしたから、逆に大人の男性に食べてもらうべく、辛い味付けで行こうと決めました。

売り場もお菓子売り場でなくておつまみ売り場。原料がジャガイモなのは同じだけど、カットは薄切りスライスではなく、おつまみ感のあるスティックタイプ。値段も、150円でさえ高いと言われていた中で200円。さきいかなんかは大抵300円くらいしていましたから、それと比べれば別に高くない」 

 「要するに、あらゆる面でポテトチップスっぽく見せたくなかったんですよ。『ポテトチップスだけど、ポテトチップじゃないもの』を作ろうと思ったんです。『カルビーのポテトチップス』と比較されないように」 

商品名は、辛い + ムーチョ (Mucho / スペイン語で 「たくさん」 の意) で 「カラムーチョ」 だ。

 「メキシコ風の商品名にしようという話は早い段階から決まっていました。その後デザイナーがいろいろと候補を考えてくれた中で、一番飛び抜けたものを選んだんです。

『チリ ◯◯』みたいなもっと無難な候補もあったけど、どうせなら突き抜けようと。パッケージに書かれている『こんなに辛くてインカ帝国』というダジャレも、会議で盛り上がった勢いで決まりました。今の湖池屋がやっていることと一緒ですが、とにかく特徴を出さないと埋もれてしまいますからね」 

スーパーが扱ってくれない


当時としては他にはないお菓子になったカラムーチョでしたが、突き抜けていたがゆえにスーパーマーケットでは売ってもらえないという問題が発生しました。

ところが、一番の取引先だったスーパーマーケットが取り扱ってくれない。理由は 「お客さんからクレームが来るから」 。辛いものはタブーの時代だった。

 「当時は『辛いものを食べると頭が悪くなる』なんて平気で言われていたんです。子供が食べたらどうするんだって。そもそも子供は狙ってません、おつまみ売り場で売りましょうって提案したんですけど、それでも駄目でした」 

救世主はコンビニ


救いの手を差し伸べてくれたのは、コンビニでした。

 「数カ月は全然売れませんでした。仕方がないから、当時店舗数を増やし始めていたコンビニエンスストアに商談に行ったら、取り扱ってくれたんです。コンビニは酒屋さんから転向する人が多かったので、『うちの店のお客さんだったら、こういうのが売れるかも』と。おつまみとして見てくれたわけです」 

これが見事にはまる。コンビニチェーンでの取り扱い1カ月目からお菓子ジャンルでトップの売り上げ。しかもその数カ月後には加工食品の中でもトップ。つまり、冷凍食品やレトルト食品やインスタントラーメンや缶詰などもあわせたカテゴリで 「カラムーチョ」 が最も売れた商品となったのだ。

 「もう、無茶苦茶な売れ方でした。一番コアのお客さんは大学生。コンビニを頻繁に利用する層ですね。結局、子供にも人気になっちゃったんですけど。おかげで年商が3年で倍になりました」 

カラムーチョを扱ってくれたのは、主要取引先のスーパーではなく、1980年代前半ではまだめずらしかったコンビニでした。コンビニの店主は酒屋さんだった人が多く、おつまみとしてのカルビーの価値をわかってくれたのです。


学べること


では今回のカラムーチョの事例から学べることを見ていきましょう。

キーワードを 「ファーストカスタマー」 として掘り下げていきます。

ファーストカスタマーとは


ファーストカスタマーを日本語に訳すと 「一番目のお客さん」 です。

文字通りの意味で、新商品やサービスで最初にお客さんになってくれる人 (または法人) がファーストカスタマーです。

カラムーチョの例では、カラムーチョを仕入れてくれたファーストカスタマーはコンビニでした (従来の湖池屋の主要な取引先だったスーパーではなく) 。

ファーストカスタマーの特徴は、新製品という前例がないものでも特徴や価値をしっかりと理解してくれるところです。本当に良いものなのか、自分たちにメリットがあるかを自分自身の目で判断します。

期待できる価値に対して、お金も払ってでも欲しいと思ってくれるお客さんがファーストカスタマーなのです。

1人のお客さんから


どんなビジネスでも、始めは1人のお客さんを獲得するところからです。1人ひとりのお客さんを積み上げていき、1人が10人に、10人が100人とお客さんが増えていきます。

ところでドラッカーは、企業の目的を 「顧客の創造」 と言いました。

もともとの英語では 「the purpose of business is to create a customer」 です。顧客のことを 「a customer」 と単数形であえて表現しているように、1人のお客さんをつくることを目指すわけです。

ファーストカスタマーは誰か


新商品を出す、新規事業を立ち上げるときに最初にやるべきは、ファーストカスタマーを見つけることです。

A custoemr という、自分たちの商品やビジネスの価値をわかってくれるお客さんに出会えるかです。まわりが導入しているから、他に成功事例があるという理由からではなく、まだ何ものかもわからない段階で価値を認め、価値に対して正当な支払いをしてくれる貴重なお客さんです。

今回の学びをより一般化して表現をするなら、「お客さんを束として扱わず、1人ひとりのお客さんを解像度高く見るようにしよう」 です。


まとめ


今回はカラムーチョの話を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ ファーストカスタマーの獲得
  • ファーストカスタマーとは、前例がない新商品の特徴・価値を理解し、期待する価値に対して正当な支払いをしてくれる貴重なお客さん
  • どんなビジネスでも、始めは1人のお客さんを獲得するところから
  • 新商品や新規事業では、ファーストカスタマーを見つけることが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。