投稿日 2023/01/26

キッコーマン大豆麺。バリュープロポジションと価値のつくり方

出典: Pouch

今回のテーマは 「価値のつくり方」 です。

おもしろいと思ったキッコーマンの大豆麺を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • キッコーマン 「大豆麺」 の強み
  • バリュープロポジションで分析
  • 価値のつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

キッコーマンの大豆麺



ご紹介したいのはキッコーマン食品が2022年8月に発売した 「大豆麺」 シリーズです。

麺の原料の約 50% が大豆でできていて、高タンパク・低糖質の麺商品です。

大豆麺は一人前の乾麺とソースやスープをセットにした商品だ。「濃厚ボロネーゼ」 「汁なし担々麺風」 など4種類の味わいを用意した。簡便さも意識。例えば 「香る生姜かきたま」 と 「かきたまチゲ風」 では卵1つを加えるだけで料理を完成させることができる。

小麦に大豆を 50% 配合した麺商品で、高タンパク質で低糖質な点が特徴だ。タンパク質は1食あたり 19.3 グラムと鶏むね肉 100 グラムと同水準の一方で糖質は乾燥うどんよりも4割減らした。希望小売価格は1袋税別310円。

大豆を使った麺はめずらしいとのことです。

キッコーマンによると、大手食品メーカーによる大豆を原料に使った麺商品は、ハウス食品の半生タイプのパスタ 「大豆がパスタになりました」 などの一部に限られるという。

福田さん (引用者注: 新規事業グループ担当マネージャー) は 「市場希少性がある」 と新商品に期待を込める。

学べること


今回の話から学べるのは 「自分たちの強みをどうつくるか、どこに強みを見出すのか」 です。

補助線に使いたいのは 「バリュープロポジション」 です。

バリュープロポジション


バリュープロポジションとは、以下の3つが当てはまる自分たちにしかできない価値提案です。

出典: lifehacker

  • お客さんが望んでいること
  • 自社ができること
  • 競合にはできないこと

これら3つが成立すれば強みになり、お客さんにとって他にはない価値となります。

大豆麺への当てはめ


バリュープロポジションをキッコーマンの大豆麺に当てはめると次のようになります。

✓ 大豆麺のバリュープロポジション
  • お客さんが求めている → タンパク質をおいしく取りたい
  • 自分たちができること → 大豆を使ったおいしい麺の製造
  • 競合にはできないこと → 大豆麺は市場で希少性がある

1つ目の 「お客さんが求めていること」 、つまり市場からのニーズを生む要因として、先ほどの記事には次のように書かれていました。

名古屋大学発のスタートアップ、ヘルスケアシステムズ (名古屋市) の調査では、タンパク質の摂取量が目標値に届かなかった人が7割にのぼった。厚生労働省も20年に摂取の目標値などを引き上げた。

自社ができ、競合にはできないこと


バリュープロポジションの2つ目と3つ目である 「自分たちにはできて、かつ競合にはできないこと」 とは、大豆を原料にして麺としてのおいしさを出している点です。

大豆麺の開発は簡単にはいかなったとのことです。

キッコーマンは調味料商品が中心で麺商品の開発は初となるため難航した。

大豆の麺を製造できる協力工場を探し、数十の大豆から麺に合う品種を選定していった。「大豆は独特のにおいがあり、小麦で作った麺に比べて食感がざらつく」 (福田マネージャー) 。においと食感を改善しつつ、少しでも一般的な麺商品に近づけるように試行錯誤を繰り返した。

開発期間は約3年と、キッコーマンの一般的な新商品開発期間である半年 ~ 1年を大きく上回った。

調理方法にも工夫を凝らした。小さい鍋でも調理できるように麺の長さを17センチと短めに設定。また時短を求める消費者の嗜好に対応して鍋に加えてレンジでも調理ができるようにした。

難しかったということは、そう簡単には他社が実現できないということです。

以上のようにキッコーマンの大豆麺はバリュープロポジションがよく当てはまっています。

価値のつくり方


そろそろ今回のまとめにも入っていきます。

バリュープロポジションから強みとは何か、お客さんへの価値をどうつくるかが見えてきます。

価値は相対的であり、ビジネスでは価値があるかどうかはお客さんが決めます。この認識が大事です。

バリュープロポジションの3つの要素で見ると、お客さんが求めていることに応えるだけでは価値として十分ではありません。競合他社などの他のプレイヤーが提供できない価値かどうかがポイントです。

同じ特徴であっても、誰が、どういう状況において、他の何と比べるかによって価値かどうかが変わります。

価値とは相対的であるがゆえに、いかに価値をつくるか、価値かどうかの判断にはバリュープロポジションは役に立つフレームです。


まとめ


今回はキッコーマンの大豆麺を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 価値のつくり方
  • 価値は相対的。誰が、どういう状況で、他の何と比べるかによって価値かどうかが変わる
  • バリュープロポジションの3つを満たして価値を生み出そう
  • ① お客さんが望んでいること、② 自社ができること、③ 競合にはできないこと


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。