投稿日 2024/10/12

アース製薬のダニ対策商品。Place に合わせたパッケージデザイン、自然と使用頻度を高めるデザイン

#マーケティング #パッケージ #利用シーン

あなたは普段、日用品を買う際にパッケージのデザインを意識することはあるでしょうか?

陳列棚で目を引くものを選ぶとき、商品を手に取るとき、そして家で使用するときーー。実は、パッケージデザインはそのすべての場面で私たちの行動に影響を与えているのです。

販売チャネルが多様化した今、すべてのチャネルで同じデザインが最適とは限りません。EC サイトで商品を購入するとき、お客さんが求めるのは店頭とは違うデザインかもしれませんし、商品の使用場面を考慮したデザインでなければ、購入後の満足度も上がらないでしょう。

そこで今回は、アース製薬がロハコ向けに行ったパッケージデザインの変更事例を取り上げ、チャネルと利用シーンに適したデザインの重要性について解説します。

アース製薬の LOHACO 向け製品のデザイン



アスクルが運営する EC サイト 「LOHACO (ロハコ) 」 で、アース製薬のダニ対策用スプレーやダニ捕獲シートが売上を伸ばしています (参考記事) 。

これらの商品は、既存の店頭販売用の商品と同じ中身でありながら、ロハコ向けにパッケージデザインを変更したことで人気を集めました。

ロハコ向けのデザインでは、「暮らしになじむ」 というコンセプトに合わせ、部屋に置いても違和感のない洗練されたデザインを採用。具体的には、虫の絵を避け、植物のイラストを使用することで、商品の植物由来の成分を訴求しつつ、高級感のある雰囲気をパッケージデザインで演出しました。

商品の機能や特徴はロハコの販売ページ上で説明することで、パッケージのデザインはシンプルに保っています。

販売チャネルに合わせたパッケージデザイン


マーケティングの 4P でとらえると、注目したいのは、アース製薬はマーケティング 4P のうち 「Place (販売チャネル) 」 に応じて 「Product (製品) 」 の要素であるパッケージデザインを変更したということです。

この意味合いを掘り下げるために、まずは小売店向けのパッケージについて整理してみましょう。

小売店の店頭向けデザイン

小売店では、商品が目立つことが重要です。

そのため、たとえば 「増量!」 「高機能!」 といった派手な文字や色彩を用いて、消費者の注意を引くデザインが採用されます。店頭での競争が激しいため、他の商品よりも目立つことが販売に直結するからです。

LOHACO 向けデザイン

それに対して、アース製薬がロハコで販売するダニ対策商品のパッケージを 「暮らしになじむデザイン」 に変更したことは注目に値します。

自然や植物を入れたボタニカルなデザインを採用し、化学薬品ではなく植物由来の成分を訴求しました。これにより、商品の下地はグリーン系にし、落ち着いた雰囲気が強調されるデザインになりました。

商品の機能説明はパッケージではなくロハコの販売ページに表示し、利用シーンの写真も添えることで、消費者が具体的な使用方法をイメージしやすくしています。

利用シーンをとらえたパッケージデザイン


アース製薬の事例で注目したいもうひとつの点は、パッケージデザインが 「商品の使用頻度」 を高めるために考慮されていることです。

消費者にとって商品のパッケージは、店頭や EC サイトでの購入時だけでなく、購入後の利用や保管の際にも重要な役割を果たします。日用品や消耗品といった繰り返し使われる商品では、パッケージデザインが使用頻度に影響を与えます。

隠したくなるデザインから、使いたくなるデザインへ

従来のダニ対策商品は、ダニの絵が大きく描かれていることが多く、これが消費者に不快感を与え、商品を目に見えるところに置くことを避ける要因となっていました。

ダニの絵が目立つパッケージデザインでは、商品を使うときに毎回ダニのリアルなイラストが否が応でも目に入り、手にとって使うこと自体がストレスになってしまう可能性もあります。

それに対し、ロハコで販売されているアース製薬商品の新しいデザインでは、植物や自然をテーマにしたボタニカルなデザインとなっていて、視覚的に心地よいものです。ダニの絵を排除し、代わりに植物由来の成分を訴求することで、商品に対する好感度を高めることを狙っています。

これにより、部屋の中で目に見える場所に商品が置かれていても違和感がなくなります。

リビングやベッドルームといった生活空間に自然に溶け込むデザインであれば、商品を手の届く場所に置いておくことができ、気軽に手にとって使え、利用頻度が自然と増えます。また、部屋に置いてあっても違和感がないデザインは、来客時などにも商品を隠す必要がなく、ストレスなく使えるでしょう。

実際にロハコのレビューでは、「ダニがいないデザインがいい」 「ダニのイラストは見たくないからいい」 といった好意的な投稿が寄せられており (参考記事) 、消費者の生活シーンに溶け込むデザインが評価されていることがうかがえます。パッケージデザインが使用頻度に直結することを示す好例です。

購入後の使用シーンにも配慮された体験設計を

このように、アース製薬は販売チャネルに応じたパッケージデザインの変更と、消費者の利用シーンを考慮したデザインの工夫により、商品の販売促進と利用頻度の向上を実現しています。

パッケージデザインは、商品を買う時だけでなく、購入後の使用や保管の際にも消費者の心理や行動に影響を与える要素です。商品の魅力を伝え、消費者が商品を使うユーザー体験を向上させるものなのです。

この事例から私たちが学べることとして、自社商品のパッケージデザインについて、お客さんの利用シーンに合ったデザインを追求することで、商品の価値を高められるということです。

まとめ


今回はアース製薬の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 販売チャネルに合わせたデザイン: ターゲットや販売チャネルに合わせたパッケージデザインが重要

  • 利用シーンを想定したデザイン: 商品の利用シーンをとらえて配慮したデザインにすることで、消費者の心理や行動に訴求できる

  • パッケージデザインは商品価値の一部: 魅力的なパッケージデザインは、商品の利用体験を良くし商品の価値を高め、販売促進や利用増につながる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。