投稿日 2024/10/06

Sales Marker のインテントセールス。 「〇〇 といえばこれ」 の 〇〇 を、自らつくりにいくカテゴリー戦略

#マーケティング #カテゴリー戦略 #言語化

競争が繰り広げられるビジネスの世界で、市場で独自の存在感を発揮するためにはどうすればいいのでしょうか?

今回は、Sales Marker 社が BtoB の営業手法において 「インテントセールス」 という新たなカテゴリーをつくり出し、わずか2年で驚異的な成長を遂げた事例を紐解きます。

カテゴリー戦略の重要性と、マーケティングに学べることを解説していきます。

Sales Marker のカテゴリー戦略


Sales Marker 社は 「インテントセールス」 を提唱し、企業の営業・マーケティングを支援するサービスを提供しています。

サービスリリースから2年で400社以上の企業に導入され、ARR (Annual Recurring Revenue (毎年くり返し得られる売上 (年間経常収益) ) ) は17.5億円を超えています (参考記事) 。この急成長の背景には、戦略グロースファーム suswork 社とともに描いたカテゴリー戦略がありました。

カテゴリー戦略とは、自社の事業を 「誰に何を売るか」 を明確にし、市場の中で独自の立ち位置を確立するための戦略です。

Sales Marker は戦略を立てるにあたって、自社の顧客・カテゴリー・独自性を言語化し、社内で認識をそろえることの重要性を再確認したとのことです。

具体的には、Who (顧客) と What (提供価値) を定義し、コアターゲットを設定しました。イノベーター理論を意識しながら顧客属性を整理した結果、上場を目指しているシリーズ C 以降のスタートアップをコアターゲット顧客とし、新たなカテゴリーとして 「インテントセールス」 を定義しました。

インテントセールスとは、企業の検索行動からわかるシグナルを 「インテント (意図) 」 ととらえ、顧客起点の行動ベースで行う営業手法です。潜在顧客のインテントからシステムが営業活動をマネジメントする仕組みです。

学べること



Sales Markerの事例には、カテゴリー戦略への学びが得られます。

カテゴリー自体を新しくつくり出す

通常、企業は製品戦略を展開しますが、カテゴリー戦略は製品レイヤー (階層) よりも1つ上のレベルにある戦略です。

Sales Marker は、 「インテントセールス」 というセールス内のカテゴリーを新しく打ち出すことで、新たな市場をつくり出しました。これは、言葉にしてラベル付けをすることで、人々からの認識を生んでいくアプローチです。

自社商品や自社サービスがお客さんから選ばれるためには、「○○ と言えばこれ」 と ○○ カテゴリーの中で一番に思い出してもらえたり、指名される、購入検討時に候補に入るような存在感を示せることが大事です。

Who と What の定義

多くの場合、○○というカテゴリーはすでに名前も商品も複数存在しています。

しかし、Sales Marker の場合は、○○ に入るセールスの手法を 「インテントセールス」 という新しい概念自体を自らつくりました。そのために、Sales Marker は Who (コアターゲット顧客の設定) と What (カテゴリー定義, 顧客価値定義, 顧客体験定義, プライシング (価格設定) ) を詰めていきました。これがカテゴリー戦略となっていったのです。

学びの汎用化


Sales Marker の事例から学べることは大きく2つあります。

カテゴリーでの自社の存在感は?

1つ目は、自社が参入しているカテゴリーにおいて、自社商品や自社サービスがお客さんから思い出されたり、選ばれたりする存在感を発揮できているかを把握し、改善していくことの重要性です。

自社の商品やサービスが、お客さんの購入検討時に候補に入るためには、そのカテゴリーにおいて確固たる地位を築き、お客さんの記憶に残る存在であることが不可欠です。そのためには、自社の強みや独自性を明確に打ち出し、お客さんにとっての価値を最大化することが求められます。

新しいカテゴリーを生み出す気概

2つ目は、時には自ら新しいカテゴリーを生み出す気概を持つことが大事だということです。

Sales Marker は 「インテントセールス」 という新たなカテゴリーを自ら創造することで、市場に新しい切り口を打ち出しました。

それまでなかったカテゴリーを確立するためには新しい言葉をつくるだけでなく、そのカテゴリーが解決するお客さんの問題や提供する価値を明確に定義し、市場に浸透させていく努力が必要です。

新カテゴリーを確立できれば、そのカテゴリーにおけるトップランナーとなれ、競合他社に先んじて市場を獲得し、場合によっては唯一の走者となることもできるでしょう。

その他の学び

Sales Marker の事例は、カテゴリー戦略の重要性を示すだけでなく、以下の点でも示唆に富みます。

  • 言葉の力: Sales Marker は 「インテントセールス」 という新しい言葉をつくりだすことで、自社のサービスを定義し、市場に浸透させようとしている。言葉は人々の認識を形成し、行動を促す力を持つ
  • 顧客起点の思考: Sales Marker は、顧客ニーズや顧客課題を理解し、理解にもとづいたサービスを開発・提供した
  • 実行力: 戦略を策定するだけでなく、Sales Marker は戦略を実行に移す力を持っている。実行力は、戦略を成功に導くためのカギになる

学びを活かす

Sales Marker はスタートアップ企業ですが、Sales Marker のカテゴリー戦略から得られる教訓は、どの企業にも当てはまるものです。

自社が属するカテゴリーにおいて存在感を発揮し、時には新たなカテゴリーを生み出していくことは、企業の持続的な成長と発展に貢献する要素です。Sales Marker の話は、こうした取り組みの重要性を示す成功事例です。

まとめ


今回は Sales Marker のカテゴリー戦略を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • Sales Marker は 「インテントセールス」 という BtoB の営業において新しいカテゴリーを打ち出し急成長を遂げた。自社の顧客・カテゴリーの独自性を言語化し、社内で認識をそろえるカテゴリー戦略を進めた

  • 自社が参入しているカテゴリーにおいて、自社商品・サービスがお客さんに選ばれる存在になっているか把握し、改善していくことが重要。時には自ら新しいカテゴリーを生み出す気概を持つことも必要

  • 言葉は人々の認識を形成する。新しい言葉をつくり出すことで、自社の商品・サービスを明確に定義し市場に浸透させる力を持つ


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。