投稿日 2024/10/21

スターバックス ティー & カフェ。スタバが 「ティー特化店」 で狙う相乗効果とは?

#マーケティング #ブランド拡張 #相乗効果

コーヒーチェーンを展開するスターバックスが、ここ最近で力を入れているのが、お茶の専門店 「ティー & カフェ」 です。

今回は、スターバックスのこの事例から、新規事業で成功するための秘訣を紐解いていきます。

新しい商品やサービスを立ち上げるだけでなく、既存ビジネスとの相乗効果を生み出せることが重要です。その結果としてお客さんとの接点が増え、売上アップにもつながるのです。

 「うちには真似できない」 と思っていませんか?

いいえ、そんなことはありません。他の会社や業界でもヒントになるポイントをスターバックスの事例から解説していきます。

スターバックスのティー特化店


 「スターバックス ティー & カフェ」 の京都 Porta イースト店 (出典: 日経クロストレンド

展開状況

スターバックス コーヒー ジャパンは2020年から、 「スターバックス ティー&カフェ」 を展開してきました (参考記事) 。

出店条件は、スターバックスの通常店の近隣で広い店舗面積が確保できる商業施設など、最初の5店舗は2年をかけて慎重に場所を選んだとのことです。六本木に1号店を開店後、2024年4月までに14店舗に拡大しました。

スターバックス ティー & カフェでは、オリジナルのブレンドティーや抹茶、ほうじ茶などをベースにした約20種類の限定ドリンクを提供しています。

背景

スターバックスがコーヒーに加えて本格的にティー特化の店舗 「スターバックス ティー & カフェ」 を展開する背景には、大きく2つの理由があります。

1つ目は、スターバックスがティー商品で長年の実績と自信を持っていたことです。創業時からお茶を扱ってきたスターバックスは、2000年代に入りオリジナルのブレンドティーや抹茶、ほうじ茶などのユニークなティービバレッジを次々と商品化してきました。こうした経緯から、お茶を軸とした新たなブランド体験を提供できると考えたわけです。

2つ目は、多様化する顧客ニーズへの対応です。コーヒーとは異なり、お茶には朝とは違う午後のリラックスタイムなど、飲用シーンや飲む気分が異なります。コーヒーのみではカバーし切れない、お茶ならではの新しい体験価値を提供できると考えたのです。

* * *

では、スターバックスのティー特化店の事例から学べる、ブランド拡張と新規顧客獲得の戦略について後半のパートで解説していきます。

既存ビジネスを活用するブランド拡張


企業が新たな市場やカテゴリーに参入する際、既存ビジネスの強みを活かせる近接したドメインでの新規事業展開は、ブランド拡張の一環として効果的な戦略となります。

スターバックスの 「スターバックス ティー & カフェ」 の事例は、まさにこの戦略の成功例として見ることができます。

ブランド拡張とは

ブランド拡張とは、既存のブランドイメージやお客さんからの信頼を活用して、新たな商品やサービスを提供する戦略です。

スターバックスは元々コーヒーで知られるブランドでしたが、そのブランド力を最大限に活かし、お茶という近接したドメインでの新規参入を果たしました。

ティー特化店への横展開

これにより、スターバックスはいくつかの重要なメリットを享受できます。

第一に、長年にわたり培ってきた品質と体験を重視したカフェブランドとしての高い信頼性を、ティー特化店の展開においても活用できました。既存顧客からの信頼があるため、新たな価値提案であるティー商品が受け入れられやすくなっています。

第二に、コーヒーとティーは飲料というカテゴリーで共通しているため、スターバックスは補完的な商品を提供できるようになりました。お客さんはその時の嗜好や気分に合わせて、コーヒーかティーかを選択できるようになり、ブランドへの親和性が高まります。

スターバックスはお客さんのライフスタイルに合わせた多様な価値を提供することができるわけです。

ドメインの選択が肝

このように、既存ビジネスの強みを活かしつつ、新規参入によってブランドの幅を広げることは強力な戦略となり得ます。

ただし、そのためには既存ビジネスとの親和性が高く、自社の強みを活かせる近接したドメインを選ぶことが肝心です。スターバックスはその点を見事に実現し、ブランド拡張に成功しました。

新規顧客獲得と既存ビジネスへの波及効果


新規事業の展開は、単に新しいお客さんを獲得するだけでなく、既存ビジネスに対する様々な波及効果も生み出すと恩恵が得られます。

スターバックス ティー & カフェの事例は、新規顧客の獲得とともに、既存のコーヒー店舗への来店頻度向上にも貢献しており、相乗効果を生み出しています (参考記事) 。

新しいお客さんの獲得

まず新規顧客獲得の重要性について見ていきましょう。

ティー特化店の展開により、スターバックスはコーヒーが苦手な人々やお茶を好む新たな顧客層を引き付けることができました。これにより、従来のコーヒー中心のブランドイメージにとどまらず、より幅広い顧客層にリーチできるようになったのです。

さらに、ティー特化店を通じて新たなお客さんがスターバックスブランドに初めて触れ、その後通常のコーヒー店舗も利用するようになるケースも多く見られているようです。ブランド全体でスターバックスへの "入口" が増えたことは大きな成果と言えるでしょう。

既存ビジネスへの波及効果

加えて、ティー特化店の出店は既存ビジネスへの波及効果をもたらしました。

特に注目したいのは、ティー特化店と通常のコーヒー店舗の両方を利用するお客さんが、どちらか一方のみの利用者よりも来店頻度が高くなったという点です。つまり、スターバックスの店舗網がお客さんのライフスタイルにそれだけ深く浸透し、全体の売上増加にもつながったということです。

さらに、朝にコーヒー、午後にお茶といった具合に、スターバックスの様々な商品がお客さんの日常生活に組み込まれるようになりました。スターバックスのブランドの存在感が一層高まり、お客さんとのつながりを強固なものとすることができました。

スターバックス ティー & カフェの成功事例が示すのは、新規事業の展開が新規顧客の獲得のみならず、既存ビジネスへの様々な好影響をもたらす可能性があるということです。

新旧の事業を上手く組み合わせ、相乗効果を生み出すことが重要です。このようなアプローチは、他の企業にとっても参考になります。

まとめ


今回はスターバックスのお茶専門店である 「スターバックス ティー & カフェ」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 新規事業の展開は、新しいお客さんを獲得するだけでなく、既存ビジネスに対する波及効果も生み出すことを狙うといい

  • スターバックスのティー特化店の事例では、スターバックスはコーヒーが苦手な人々やお茶を好む新たな顧客層を引き付ける。スターバックスのブランド全体への "入口" を増やす

  • ティー特化店と通常のスタバのコーヒー店舗の両方を利用するお客さんが、どちらか一方のみの利用者よりも来店頻度が高い。新旧の事業を上手く組み合わせた相乗効果により、スターバックスのコーヒーとお茶の店舗網がお客さんのライフスタイルにより深く浸透し、全体の売上増加につながっている


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。