#マーケティング #メディアプラン #PESO
SNS で見かけた口コミが気になり、その商品を買ってみたという経験はないでしょうか?あるいは、テレビ CM を見た後にスマートフォンで検索し調べてみたことは?
私たちの情報収集や消費行動は、気づかぬうちに変わっていますが、その変化に企業のマーケティングは追いついているでしょうか?
令和時代に入り、特にコロナ禍を経て、消費者のメディア接触行動は変わりました。従来の広告中心のアプローチでは、効果的なコミュニケーションは難しくなっています。
では、これからのメディアプランニングはどうあるべきなのか。今回は、PESO モデルを使って、これからのマーケティングコミュニケーションのポイントを解説します。
令和時代のメディア接触行動の変化
令和の幕開けとともに、特にコロナ禍を経験したことで、人々のメディア接触行動は変化を遂げました。
在宅時間の増加に伴い、インターネット、特にモバイルでの接触時間が伸びる一方で、かつてのメディアの王者であったテレビの視聴時間は減少傾向にあります。
こうした状況では、企業のマーケティングコミュニケーションにおいて、変化に適応するメディアプランニングの重要性はますます高まっていると言えるでしょう。
PESO からのメディアプランニング
メディアを分けるフレームに 「PESO」 という4区分があります。
PESO はそれぞれ4つの英語の頭文字からできています。
- Paid media: 広告
- Earned media: PR 等
- Shared media: ソーシャルメディアや口コミサイト
- Owned media: 自社サイト
従来のメディアプランニングと変化
従来のメディアプランニングでは、Paid media (広告) と Owned media (自社サイト) が中心的な役割を担ってきました。企業は多大な広告費を投じてテレビ CM やネット広告を流し、自社サイトを通じて商品やサービスの情報を発信してきたのです。
しかし、今のメディアプランニングでは、Earned media (PR 等) と Shared media (ソーシャルメディア等) の重要性が相対的に高まっています。その背景には、生活者の情報接触の行動や意識の変化があります。
かつては、企業からの一方的な情報発信を受け取るだの生活者が多数派でした。しかし、インターネットの普及とソーシャルメディアの台頭により、生活者自身が情報の発信者となる時代が到来しました。今や、商品やサービスを実際に利用している 「ユーザーの声」 に耳を傾ける生活者が増えているのです。
口コミサイトや SNS などの Shared media では、ユーザー自身が情報の発信者となり、それが他のユーザーの意思決定に大きな影響を与えています。また、テレビ番組や雑誌記事などの Earned media は、第三者による客観的な評価として信頼性を持っています。
令和時代のメディアプランニング
このような状況を踏まえると、令和時代のメディアプランニングでは、Earned media と Shared media を起点とした全体設計ブランが求められます。具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。
- Earned media と Shared media での自社ブランドの評判や話題性を詳細に把握する
- ポジティブな評判を引き出すような Paid media と Owned media の設計を行う
- Earned media とShared media での反応を継続的にモニタリングし、Paid media とOwned media にタイムリーにフィードバックする
- 必要に応じて、Paid media と Owned media の調整や修正を柔軟に行う
生活者の感覚を読み取る力
このアプローチを実現するためには、従来の数値的な分析だけでは十分ではありません。生活者の感覚や反応を読み取る力が大事になります。これは文系的な読解力です。
SNS での投稿や反応、口コミの内容を質的に分析し、そこから得られた洞察を Paid media と Owned media の設計に活かしていくことが大事になります。数字だけに頼らない言葉の意味や文脈を読み解く力が、これからのメディアプランナーには求められているのです。
さらに、若年層を中心に新たな SNS が次々と登場している状況を考えると、メディアプランナーには高い柔軟性と適応力も求められます。
たとえば、高校生から大学生の間で人気を集めている BeReal (日本では "ビーリアル" と呼ばれるが正式には "ビリール" ) は、「映え」 や 「盛り」 とは一線を画すリアルな日常の共有を特徴とする SNS です。既存の SNS とは異なる価値観や行動様式が見られるこのような SNS が支持される理由を理解し、自社ブランドのコミュニケーション戦略に活かしていくことが重要です。
クロスメディアの重要性
加えて、メディアプランニングにおいては、各メディア間の相乗効果を最大限に引き出すことも大切な視点です。
具体的にはたとえば、テレビ CM で獲得した認知を、SNS でのキャンペーンにつなげていくというアプローチです。あるいは、SNS で話題になった商品を、テレビ番組や雑誌で取り上げてもらうことで、さらなる拡散効果を狙います。
Earned media と Shared media を起点としつつ、Paid media と Owned media を有機的に連携させていく総合的なクロスメディア設計が、今の時代のメディアプランニングに必要になります。
令和のメディアプランナーの役割
こうした多様化するメディア環境の中で、生活者の感覚や反応を的確に読み取り、戦略に反映させていく力がこれからのメディアプランナーには必要不可欠です。
数字だけに頼らない柔軟な発想力と、メディア間の相乗効果を最大限に引き出す統合力を兼ね備えたメディアプランナーこそが、マーケティングコミュニケーションを牽引していくのです。
企業には、このような新しい時代のメディアプランニングを理解し、実践していくことが求められます。Earned media と Shared media を起点とし、Paid media と Owned media を柔軟に組み合わせていく。そうした総合的な視点に立ったメディアプランニング。これこそが、マーケティングコミュニケーションでの成功のカギを握っているのです。
まとめ
今回はメディアプランについて考察をしました。
最後にポイントをまとめておきます。
- PESO フレームでメディアプランニングをとらえると、従来のメディアプランニングでは Paid media (広告) や Owned media (自社サイト) が中心だった
- 現在では Earned media (PR 等) と Shared media (ソーシャルメディアや口コミサイト) の重要性が相対的に高まっている
- 総合的な視点に立ったメディアプランとは、Earned Media と Shared Media を起点とし、Paid Media と Owned Media を柔軟に組み合わせていく。こうした統合的な視点を持つメディアプランが、マーケティングコミュニケーションを成功につながる
- メディアプランをつくるためには、生活者の感覚や反応を読み取る力が求められている (数値分析だけでなく 「文系的な読解力」 ) 。たとえば SNS での会話や口コミを分析し洞察を得て、メディアプランに活かすことが重要
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