#マーケティング #バリュープロポジション #本
多くの企業が直面する課題、それが 「せっかく作った商品やサービスなのに、思うように売れない」 というものです。
時間とコストをかけて開発したにもかかわらず、お客さんに響かず、売上不振に陥ってしまう…。その原因は 「お客さんの状況」 を捉えきれておらず、自社商品がお客さんへの価値につながっていないことに潜んでいます。
そこで今回は、バリュー・プロポジションのつくり方 - 顧客の価値を 「状況」 で考えればプロダクト・サービス開発はうまくいく (前田俊幸, 安達淳) という本を取り上げます。
こちらの本は、お客さんの 「状況」 を深く理解することで、心に刺さる商品・サービスを生み出すための具体的な手法を解説しています。
お客さんに本当の価値を感じてもらえるプロダクトやサービスを生み出すためのヒントが得られるはずです。
本書の概要
新規事業開発によって新しい事業、製品やサービスを企画しますが、少なくないケースでお客さんに買ってもらえず、やがては頓挫してしまいます。
その理由は、お客さんが価値を感じられる体験コンセプト、すなわち 「バリュー・プロポジション」 が生み出されていないからです。
この本が提示するのは、お客さんに価値を感じてもらうために 「今お客さんはどのような "状況" にいるのか?」 を正しくつかむ重要性と、その具体的な方法です。
本書は次のような方に有益な一冊です。
- 新規事業のリーダーや担当者
- 社内で DX を推進する担当者
- 新しい製品やサービスをつくるチームメンバー
- 自社プロダクトが伸び悩んでいる起業家やプロダクトマネージャー
状況
この本のタイトルには 「バリュープロポジション」 という言葉が入っていますが、一番のキーワードは 「状況」 だと理解しました。
「状況」 をとらえる
お客さんの状況を知ることによって、バリュー・プロポジションにつながる突破口が見えてきます。お客さんが置かれた状況をとらえることで顧客体験についての言語化も進み、一歩踏み込んでお客さんの気持ちを予測できるようにもなるからです。
お客さんが何を感じているか、何を欲しているのかを言い当てることは、そもそもお客さん本人でさえも言語化していなく、他人がそれを読み取ることは簡単ではありません。また、プロダクトやサービスを使用する際の体感的な価値は、実際に使った人でないと生じえない情動であるため、事前に検討することの原理的な難しさがあります。
ですが、 使うシーンやその背景となる文脈 (コンテクスト) 、状況を事前に理解することで、体験価値についても仮説を立てられるようになります。
お客さんの状況をアップデートしていく
自社商品をお客さんに提供することで目指すのは、「お客さんの "状況をより良くする" こと」 です。
本書では "Upgrade your user, not your product. Don't build better cameras ── build better photographers. (自社製品ではなくユーザーをアップグレードする。より良いカメラをつくるのではなく、より良い写真家を生みだす) " という言葉が紹介されます。本書のスタンスでこれを捉え直せば、ユーザーをアップデートするというよりも、「ユーザーの状況」 をアップデートし続けるとなります。
お客さんにプロダクトを買って使ってもらえれば顧客ニーズが満たされますが、それでおしまいではありません。ともに 「ありたい姿 (理想の状態) 」 に向かって模索しながら、その進歩を共創し続けることを目指すという考え方が本書のアプローチです。
バリュー・プロポジション
では、バリュー・プロポジションについて見ていきましょう。本書でのバリュー・プロポジションの定義は、「顧客に価値を感じてもらうべくどのような状況でどのような体験を提供したいかの方向性を示すこと」 です。一言で言えばバリュー・プロポジションは 「体験のコンセプト」 となります。
バリュー・プロポジションにおける価値とは、プロダクトやサービスがもつ固有の特徴ではなく、使用したり検討したりする主体である 「お客さんの脳内の反応」 のことです。
価値があるのはプロダクトそのものではありません。プロダクト自体が価値を持っているのではなく、お客さんがプロダクトを使ったりすることではじめて価値が生み出され、価値を感じるものなのです。
バリュープロポジションは、お客さんの状況をより良くする商品を価値として提案し、お客さんが知り受け入れ、実際に買って使ってもらい、価値を実感するところまでを指します。
バリュー・プロポジションの実践
バリュー・プロポジションを設計し、お客さんに価値もたらすためのフレームが 「バリュー・ダイヤモンド」 です。
- 現在の状況 (状況 A)
- 機能 (プロダクトができること)
- 体験コンセプト (≒ バリュー・プロポジション)
- 理想状態
- 目指したい状況 (状況 B)
流れを順番に補足すると、想定するお客さんの 「現在の状況」 を理解します (状況 A) 。
次に、意志をもって機能 (プロダクトができること) を仮決めし、進歩を生み出せそうな状況に対し、提供する機能とバリュー・プロポジション (プロダクトがもたらす体験コンセプト) を考えていきます。
現在の状況が、「機能」 と 「バリュー・プロポジション」 によって、理想状態から落とし込んだ 「目指したい状況 (状況 B) 」 にアップデートしていく未来像を描きます。
まとめると、現在状況に対して、機能とバリュー・プロポジションから 「目指したい状況」 を導きます。
逆からたどれば、目指したい状況を実現するための 「体験コンセプト (バリュープロポジション) 」 、下支えするプロダクトの 「機能」 、そしてプロダクトの 「価格設定」 も行います。
バリュー・プロポジションの目指すところは、お客さんの 「現在の状況」 から、売り手や企画者が叶えたいと思う 「理想状態」 へと、お客さんとともに共創しながら近づいていくことです。
なお、理想状態はあくまでも理想として抽象的に描かれるため、完璧に実現されることは簡単ではなく、本質的には達成自体が難しいものです。そこで、理想状態からより現実的なレベルにした 「目指したい状況」 への到達を、機能とバリュー・プロポジションで導きます。
まとめ
今回は、書籍 バリュー・プロポジションのつくり方 - 顧客の価値を 「状況」 で考えればプロダクト・サービス開発はうまくいく (前田俊幸, 安達淳)を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- お客さんの 「状況」 をとらえることが重要。お客さんが置かれている状況を理解することで、お客さんの行動だけではなく、心理 (気持ちや欲求) を推測できる
- 価値への認識として、プロダクトやサービスそのものに価値があるというよりも、お客さんがプロダクトを使うことではじめて価値が生み出される
- バリュー・プロポジションとは、お客さんに価値を感じてもらうために、どのような状況でどんな体験を提供したいかの方向性を示す顧客体験コンセプトのこと
- バリュー・プロポジションを設計し実行するフレームが 「バリュー・ダイヤモンド」 。現在の状況、機能、体験コンセプト、理想状態、目指したい状況の5つの要素から成る
- バリュー・プロポジションで目指すのは、お客さんの現在の状況から、売り手や企画者が叶えたいと思う理想状態へとお客さんとともに近づいていくこと。お客さんと一緒に理想の状態に向う進歩を共創し続けることが大切
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