#マーケティング #新しい問題 #価値創出
自社の商品やサービスが、市場の変化に取り残されていると感じることはないでしょうか?
私たちのまわりで起こっている 「新しい現実」 に、ビジネスチャンスが眠っていたりします。日常のちょっとした変化の中に、ビジネスのヒントが隠れているのです。
今回は、コクヨの 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 の事例から、新しい現実の中に生まれている 「新しい問題」 をとらえ、お客さんに寄り添った顧客価値をつくる方法を紐解きます。
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
キャンパス フラットが気持ちいいノート
コクヨが新たに発売した 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 は、1975年から販売されているキャンパスノートの最新作です。2023年12月の発売から半年で100万冊を売り上げました (参考記事) 。
見開き2ページが完全にフラット
最大の特徴は、ノートを開いた時に中央部分が膨らまず、2枚のノートの紙が倍の1枚の大きな紙のようになり、全くの平らでフラットなつくりになっていることです。ノートは真ん中が膨らんでしまうのが当たり前という認識を変える画期的なノートです。
ちなみにキャンパスノートのロゴも50年近い歴史で初めて変更され、視覚的に 「史上最高にフラット」 であることを強調するデザインになりました。
開発のきっかけは中高生のノートの使いかた
ノートの中央部分をふくらまないようにしたのは、キャンパスノートのメインユーザーである中高生のニーズに応えるためでした。
中高生のノートの使いかたは、ノートに書いた内容をスマホで写真に撮り、あとから通学時の電車内などで見返すという用途が普通にされるようになりました。しかしノートの中央部がふくらんでいることで、スマホで撮影したノートの写真はふくらみによる影が目立つようになり、写真だとノートに書かれていることが見にくいという不都合が生じます。
この 「新しい問題」 の解決を目指したのが、コクヨの最新の 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 なのです。
コクヨによれば、開発する前の段階では 「もはやノートでできることや開発の余地は限られる」 と見られていたとのことです。すでに、ノートのケイ線や表紙のデザイン、紙質やサイズなどの工夫をやり尽くしていたからです。ここに新たな切り口として見開きのフラットさに焦点を当てたというのがおもしろいです。
ノートの見開きがフラットになることで、ノートの2枚分をまとめて使って書けるという使いかたもできるようになります。
マーケティングへの学び
私たちの生活は少しずつですか日々変化しています。新しい技術が生まれたり、生活・ビジネス環境が変わることで、これまでにない 「新しい現実」 が起こります。
この 「新しい現実」 が 「新しい問題」 を生み出すこともあります。その 「新しい問題」 を解決することで、お客さんに新たな価値を提供することができるのです。
コクヨの 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 の事例は、まさにこの 「新しい現実」 から生まれた 「新しい問題」 を解決し、顧客価値を創出した好例です。
新しい現実
スマートフォンの普及がもたらした変化は計り知れません。中高生を中心に、ノートに書いた内容をスマートフォンで撮影し、後からその写真を見返すという習慣が一般的になっています。
こうした 「新しい現実」 は、ノートの使いかたに非連続な変化をもたらしました。
新しい問題
しかし、この 「新しい現実」 は、従来のノートでは対応できない 「新しい問題」 も生み出しました。
ノートを開いたときに中央部分が膨らむことで、スマートフォンで撮影した際に影ができやすくなり、撮影したノートの内容が見えにくくなるのです。
特に中高生にとって、この問題は日常的に発生する困りごととなりました。授業や勉強の合間にスマートフォンでノートを撮影し、後で復習するという行為が当たり前になる中で、中央の膨らみによる影の問題は学習効率を下げる要因になるからです。
今までは問題にならなかったことが、ノートでスマホを撮影するという 「新しい現実」 が普通になったことで起こった 「新しい問題」 です。
問題解決
この新しい問題に対し、コクヨは 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 を開発しました。
開発には3年を要し、技術的な困難を克服するために多くの工夫が施されています。30種類以上の糊を使い、100通り以上の塗りかたを試行錯誤し、強度を保ちつつ薄さを追求した結果、従来品の13ミリメートルの膨らみを4ミリメートル程度に抑えることに成功しました。
ノートの特徴は、開いたときに中央部分が全く膨らまず、完全にフラットな状態を保っていることです。
これによりスマートフォンで撮影した際に影ができず、ノートの内容が鮮明に写ります。
価値創出
コクヨは 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 によって新しい価値を創出しました。
ノートをスマートフォンで撮影するという新しい現実に対応し、中高生のニーズを的確に捉えた商品を生み出しました。
中高生や大学生はノートに書いた内容を鮮明に撮影でき、後で見返す際に内容をしっかりと確認できます。ノートの中央部分に影ができるという問題が解消されたことで、ストレスなく勉強ができるようになったことでしょう。
もたらされた顧客価値は、スマートフォンで撮影した画像が鮮明で読みやすくなり、学習効率が向上することです。さらに、フラットな見開きを活用した新しいノートの使いかたもできるようになりました。
学びの汎用化
コクヨは新しい現実から生じた新しい問題を解決し、それによりお客さんに新たな価値を提供することに成功しました。
この事例から学べるのは、「新しい現実」 がもたらす 「新しい問題」 を見逃さないことの重要性です。
常に変化し続ける世の中の動きを察知すること、そして 「新しい問題」 を解決することで、お客さんに新たな価値を提供することができるのです。
ビジネスでは、自社の製品やサービスが 「新しい現実」 を捉えているか、 「新しい問題」 に直面していないかを常に検証し、必要であれば柔軟に対応していくが求められます。その際に従来の常識にとらわれず、新しい発想で解決策を見出すことが大事です。
「新しい現実」 が生み出す 「新しい問題」 とは、見方を変えれば、新たな価値を創出するチャンスと言えます。この機会を逃さず、お客さんに寄り添い、解決策を提供し続けることが重要なのです。
まとめ
今回は、コクヨの 「キャンパス フラットが気持ちいいノート」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 新しい現実が生み出す 「新しい問題」 を見逃さないことが大事。スマートフォンの普及により、中高生がノートをスマホで撮影し、後から見返すという習慣が一般的になったが、スマホで撮影した際にノートの中央部分に影ができるなど、撮影したノートの内容が見えにくくなるという問題が発生していた
- 「新しい問題」 を解決することで、お客さんに新たな価値を提供できる。コクヨは、ノートの中央部分が膨らまない完全にフラットなノートを開発。スマホで撮影したノートの写真画像が鮮明で読みやすくなり、学習効率が向上するという価値を生み出した
- 従来の常識にとらわれず、新しい発想で解決策を見出すことが大切。ノートの開発余地が限られていると考えられていた中で、コクヨは見開きのフラットさに着目し、新しいノートを生み出した
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