#マーケティング #営業 #組織連携
消費者の購買行動が多様化し、メーカーにとっては小売店への提案営業を行うことは容易ではありません。
そんな中、サントリーはデータ分析と部門間の連携を高め、小売店への的確な営業から売上を向上させることに成功しました。サントリーはどのようなアプローチをとったのでしょうか?
今回は、サントリーの成功事例から、データドリブンな組織体制と仕組み、営業とマーケティング部門との連携の秘訣を探っていきます。データ分析を活用することで売上を向上させた具体的な手法や、部門間の連携の重要性について見ていきましょう。
サントリーの営業活動
サントリーは、データを活用する営業活動を進め、小売店に対する提案力を強化しています。
データを活用した提案営業
従来の属人的な営業スタイルから脱却し、購買データを分析して小売店のバイヤー (メーカーからの商品仕入れ担当者) に対する説得力のある提案を行う体制を整えました (参考記事) 。
具体例を見ると、サントリーはノンアルコール飲料の売場の配置を見直すことで、売上を向上させることに成功しました。
これまでは別々に売られていたノンアルコールビール、チューハイ、ワインなどの異なるカテゴリーの商品を、一箇所にまとめて配置するという新しいアプローチを取りました。ある小売チェーンでは、ノンアルコール飲料全体の売上が2倍以上に跳ね上がったとのことです (参考記事) 。
成功を受けて、サントリーは他の小売チェーンにも提案し、狙い通りの棚割りを採用されるようになりました。
こうした成功事例は 「勝ちネタ」 としてサントリー社内で共有され、他の営業部門にも展開されています。
マーケティング部門と営業部門の連携
サントリーの営業活動は、PDCA サイクルを取り入れた長期的な視点にシフトしており、リピート率を重視した提案を行っています。
また、マーケティング部門と営業部門でのデータ共有とお互いへのフィードバックを通じて、プロモーション方針も柔軟に変更できる体制になりました。
たとえば、サントリーの 「パーフェクトサントリービール」 のプロモーション施策では、ID-POS (会員 ID 付きの POS) データの分析により、中華料理などのがっつりした食品と一緒にパーフェクトサントリービールを購入する消費者が多いことが判明。営業方針とプロモーションの方向性を 「健康志向」 から 「がっつり食品とのペアリング」 に変更しました。
サントリーに学ぶマーケティング部と営業部の連携
サントリーの成功事例は、マーケティング部と営業部が同じ方向を向いて連携することの重要性とその効果を示しています。連携の背景には、データドリブンなアプローチと共通の目標設定があります。
データの共有とリアルタイムでの活用
サントリーでは、ID-POS データを活用して消費者の購買行動を詳細に分析し、そのデータをマーケティング部と営業部で共有しています。
データをもとにしたリアルタイムでの分析・フィードバックの仕組みをつくり、マーケティングや営業を柔軟に変更できる体制が整っています。
目標と戦略の共有
マーケティング部と営業部が共通の目標を持ち、それに向けた戦略を共有することが重要です。
サントリーでは、家庭用統括部が両部門の間に立ち、データにもとづいた対流通戦略と戦術の策定を担っています。家庭用統括部は、2019年に発足した組織で、データ分析を行う MD 推進グループがあります。このグループは様々な購買データを分析し、実動部隊の営業提案を支援します。
成功事例の共有と横展開
サントリーの事例で注目したいのは、成功した営業提案やプロモーションを 「勝ちネタ」 として社内で共有し、他の営業部門にも横展開していることです。
このように成功事例をお互いが積極的に共有することで、全社的なノウハウの蓄積と活用が進みます。
グローバル市場での展開
また、サントリーは国内市場だけでなく、グローバルでもデータドリブンな営業体制を導入しています。
国内では、ID-POS を活用して消費者の購買行動を詳細に把握し、リピート率を重視した営業戦略を展開しています。グローバル市場でも同様の営業体制を 「EISUI」 として導入し、各国の市場に対応した戦略をとっているとのことです。
学びの汎用化
サントリーの事例から学べることは、マーケティング部と営業部がデータを共有し、リアルタイムでフィードバックを行いながら、共通の目標に向かって連携することの重要性です。
そして、成功事例を全社的に共有することで個々人の知見が組織知に進化し、それがひいては会社全体の持続的な成長につながります。サントリーの連携体制は、他の企業にとってもヒントになります。
まとめ
今回はサントリーの全社的な取り組みをご紹介し、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- サントリーは従来の属人的な営業スタイルから脱却し、購買データ分析にもとづく提案型営業へと転換
- ノンアルコールビールやチューハイ、ワインなどの異なる商品カテゴリーを小売店の一箇所にまとめる新しい配置方法が小売に採用され、ある小売チェーンでは売上が2倍以上に増加なった
- データ活用と、マーケティング部門・営業部門の連携強化が、サントリーの成功のカギとなっている。ID-POS データの共有と活用により、両部門が同じ目標に向かって協働する体制が構築された
- 成功事例を 「勝ちネタ」 として社内共有から横展開され、個々の知見が組織知へと発展し、さらなる成功につながる。このアプローチはグローバルにも展開され、各国の市場特性に応じた戦略立案を可能にしている
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