#マーケティング #STP #コミュニティ
現代社会は、リアルとバーチャルの境界が曖昧になり、コミュニティも多次元的に存在します。
情報化社会の申し子である Z 世代、そして次にくる α 世代は、SNS やゲームの世界を中心としたオンラインコミュニティを縦横無尽に駆け巡り、独自の価値観とアイデンティティを形成しています。
従来のこれまでのやってきたマーケティングは、こうした多様な価値観を持つ若者たちに通用するのでしょうか?
そこで今回は、Z 世代や α 世代の新しい価値観を紐解き、若年層へのマーケティングについて考察します。
若者のコミュニティ観
現在の若者の代名詞でもある Z 世代 (1997年から2009年生まれ) です。
Z 世代の次に台頭するのが2010年から2024年生まれの α 世代です (X 世代, Y 世代, Z 世代ときてアルファベットの最後まできたので、次は α なんですね (その次は ベータ世代?) ) 。
現代社会はリアルとバーチャルの境界が曖昧で、コミュニティも多次元で存在します。Z 世代や α 世代は、SNS などを通じて複数のコミュニティに参加しているのが普通です (参考書籍) 。
複数のコミュニティを使い分ける Z 世代
Z 世代は複数の SNS アカウントを使い分け、趣味や関心ごとに異なるコミュニティに所属しています。たとえば、Instagram では本アカウントとサブアカウント、趣味用アカウントを持ち、それぞれ異なる人をフォローしていたり、違うコミュニティに参加しています。
各コミュニティでの自己表現を最適化し、コミュニティごとにアイデンティティを出していくようにチューニングをしています。
人か AI かは気にしない α 世代
Z 世代と比べて α 世代の特徴は、AI の扱い方や AI との距離感にあります。
α 世代は AI に馴染みがあり、AI の言うことや提案を受け入れやすく、コミュニティの選択においても AI の推奨を参考にすることでしょう。
また、α 世代はオンラインゲームなどでアバターを使うのは普通のことで、見知らぬ人とつながることに慣れています。コミュニケーションのやり取りをする相手が人間か AI かは、あまり気にしません。
若者層へのマーケティング
では、ここまでの内容を文脈にして、若者へのマーケティングをどのように展開していくのかを考えてみましょう。一石を投じることになるのは、STP (セグメンテーション, ターゲティング, ポジショニング) において、これまで主流で行われてきた 「人の属性」 をもとにしたアプローチはうまくいかないのでは、ということです。
ターゲット顧客の属性ベースでの STP 戦略がうまく機能しない要因を整理してみます。
コミュニティの重要性の高まり
趣味や関心を共有する 「界隈」 と呼ばれるコミュニティでは、趣味、興味、価値観にもとづいて形成され、属性情報だけではその全貌を把握することができません。
コミュニティごとに異なるマーケティングのアプローチが必要であり、単純な属性ベースの戦略では効果が薄れるでしょう。
アイデンティティの表現方法の変化
Z 世代および α 世代は、所有物や所属するブランドよりも、どんな人とつながっているかでアイデンティティを判断する傾向があるようです。
属性ベースのセグメンテーションでは、こうしたアイデンティティの表現方法の変化を捉えきれません。その結果、ポジショニングが生活者の実態と乖離し、共感を得られなくなる可能性があります。
企業は、生活者に情報を一方的に届ける存在から、コミュニティ内のコンテクストを生み出す支援をする存在へと変化していく必要があるでしょう。生活者が自分の思いを投影できる余白のあるコンテンツが求められるようになり、生活者とともにコンテクストを生み出していく共創のアプローチが重要になります。
コミュニティやアイデンティティを起点にする STP
では、コミュニティやアイデンティティを起点としたマーケティングの手法を考えてみましょう。
ここでは架空の化粧品ブランド 「ピュアラ」 を例に解説します。
コミュニティ起点のマーケティング
ピュアラは、SNS 上の美容系コミュニティ、特に 「クリーンビューティ界隈」 に注目します。この界隈では、環境に優しく、肌に優しい成分を使用した化粧品に関心を持つ人々が集まっています。
ピュアラは、クリーンビューティ界隈のインフルエンサーとコラボレーションし、製品開発から販促活動まで協働します。インフルエンサーの意見を取り入れた限定品を発売したり、インフルエンサーが製品の使用感をレビューする動画を配信したりすることで、界隈内でのブランド認知度と信頼度を高めていきます。
さらに、ピュアラは 「サステナブル・ビューティ・プロジェクト」 を立ち上げ、クリーンビューティに関心を持つ人々が集まり、アイデアを共有し、新しい価値を生み出すコミュニティを形成します。このプロジェクトを通じて、ピュアラは生活者とともにブランドを成長させていきます。
アイデンティティを重視したマーケティング
ピュアラは、従来の年齢や性別などの属性によるセグメンテーションではなく、生活者のアイデンティティに着目します。
具体的には 「クリーンビューティ」 という世界観に共感し、サステナブルなライフスタイルを志向する人々をターゲットとします。ピュアラは、製品パッケージや広告、SNS 上のコンテンツなどを通じて、この世界観を一貫性を持って表現し、ブランドのアイデンティティを確立します。
また、ピュアラは生活者が自分らしさを表現できるような体験を提供します。
たとえば、店頭での肌分析により、一人ひとりの肌の悩みや好みに合わせたパーソナライズされた製品提案を行います。これにより、生活者はピュアラを通じて自分のアイデンティティを確認し、強化することができます。
ブランドと生活者との共創
ピュアラは、お客さんとともにブランドを育てていくことを重視します。
SNS やプロジェクトを通じてお客さんからのフィードバックを積極的に収集し、製品開発や販促活動に反映します。また、限定品のパッケージデザインを生活者から公募したり、店頭でのイベントをお客さんと共に企画・運営したりすることで、お客さんがブランドに主体的に参加できる機会をつくります。
こうした活動を通じて、ピュアラはお客さんとの長期的な関係性を構築し、ブランドへの愛着とロイヤルティを高めていきます。
以上のように、コミュニティやアイデンティティを起点としたマーケティングでは、生活者の多様性を尊重し、共感できる世界観を提供することが重要です。企業は、生活者とのつながりを深め、共創的な関係性を築くことで、ひいてはブランドの価値を高めていくことができるのです。
まとめ
今回は Z 世代とその次にくる α 世代へのマーケティングについて、コミュニティとアイデンティティをキーワードに考えてみました。
最後にポイントをまとめておきます。
- Z 世代および α 世代は、趣味や関心、価値観にもとづいて形成される 「界隈」 と呼ばれるコミュニティに複数所属している。コミュニティでは、どんな人とつながっているかで自身のアイデンティティを打ち出し、他人のそれを判断する傾向がある
- 従来の属性ベースのセグメンテーションでは、こうしたアイデンティティへの価値観を捉えきれず、結果として商品や企業のポジショニングが生活者の実態と乖離し、共感を得ることが難しくなる。若年層へのコミュニケーションは、コミュニティごとに異なるアプローチをとるといい
- 企業は、生活者のコミュニティ内でのアイデンティティをとらえ、企業やブランドから生活者に情報を一方的に届けるのではなく、コミュニティ内での文脈を共に生み出し、アイデンティティを表したり共有することを支援する存在となる
- 企業は生活者の多様なコミュニティとアイデンティティを尊重し、共感できる世界観を提供することで、生活者との長期的な関係を築いていく
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