投稿日 2024/10/30

【誰でもできる!】ジョブ理論でマーケティングを成功させるための実践的な方法

#マーケティング #ジョブ理論 #本

なぜお客さんはその商品を選んだのかーー。この問いに答えることで、製品開発やマーケティング戦略の扉が開かれます。


書籍 「ジョブ理論 - イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (クレイトン・M・クリステンセン) 」 は、お客さんが商品やサービスを購入する背後にある真の理由を解き明かす 「ジョブ理論」 について、詳しく解説しています。

本書では、ジョブ理論の定義から、ジョブの見つけ方、ジョブの解決策の開発方法まで、実践的な内容が書かれています。

また、ジョブ理論を実際に活用して成功を収めた企業の事例も紹介されており、自社の商品やサービス開発に役立てたい方にとって参考になる一冊です。

ジョブ理論の核心に迫り、あなたのビジネスに活かせる具体的な方法を見ていきましょう。

本書の概要



ジョブ理論というレンズを使うことで、「人はなぜそれを買うのか?」 「なぜあの商品は売れなかったのか」 を解き明かす本です。

著者のクリステンセンは 「破壊的イノベーション」 や 「イノベーションのジレンマ」 を提唱した人物です。

この本では、イノベーションをどうやって起こせばいいのかという問いに、ジョブ理論という手法が提示されています。

お客さんの望みに応えたり困りごとを解決するために大切なのは、お客さんの置かれた 「状況」 を把握し、その特定の状況下で行動を起こさせた要因となる 「ジョブ」 を見極めることです。そして、ジョブというお客さんの 「成し遂げたい進歩」 のために、いかに自社商品やサービスが選ばれるかが大事です。

本書は、そのためにはどうすればいいかを詳しく解説しています。

ジョブ理論 (Jobs to Be Done) 


ではジョブ理論について詳しく見ていきましょう。

ジョブの定義

クリステンセンのジョブの定義は、「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩 (progress) 」 です。

もともとは次のように表現されました。

    the progress that the customer is trying to make in a given circumstance — what the customer hopes to accomplish. This is what we’ve come to call the job to be done.

    ある状況において顧客が行おうとしている進歩、つまり顧客が達成したいと考えていること。これが、私たちが 「やるべき仕事 (job to be done) 」 と呼ぶようになったものだ。


重要なのは、お客さんなぜその選択をしたのか (ジョブのために商品を雇用したのか) を理解することにあります。ゴールへ向かう動きを表すため、あえて 「進歩」 という言葉が選択されたのでしょう。

ジョブの定義には 「状況」 という言葉が含まれています。ジョブはそれが生じた特定の文脈に関連してのみ定義することができ、同じように、有効な解決策も特定の文脈に関連させることで もたらすことができます。

ジョブの基本要件

まとめると、ジョブの基本要件は次のとおりです。

  • ジョブとは、特定の状況で人 (あるいは人の集まり) が追求する進歩である

  • 成功するイノベーションは、顧客のなし遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない望みを叶える。それまでは物足りない解決策しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片づける

  • ジョブは機能面だけでとらえることはできない。感情的および社会的な側面も重要であり、それらのほうが機能面より強く作用する場合もある。社会的な要素とは、他人から認められたい・評価されたいという気持ち。

  • ジョブは日々の生活のなかで発生するので、その文脈を説明する 「状況」 が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」 である

  • 片づけるべきジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない

ネガティブジョブ

できれば避けたいジョブは、進んでやりたいことと同じくらいたくさんあることでしょう。そうしたことを 「ネガティブジョブ」 と呼びます。

ネガティブジョブにはイノベーションの優れた機会であることが多いとクリステンセンは言います。

ジョブではないもの

ジョブの概念をより理解するために、「ジョブではないもの」 を理解しておくといいでしょう。

例を示すと、「350ml の使い捨て容器に入ったチョコレート味のミルクシェイクがほしい」 というのはジョブではありません。というのは、これを片づけるために雇用する有力候補は、すべてミルクシェイクという製品カテゴリーの中にあるからです。この例はニーズまたは嗜好とは言えても、ジョブではないです。

次に別の例として、「通勤中に、目を覚ますことができ、運転に専念させるものがほしい。さらに、10時から始まる会議の間に空腹を感じないように、小腹を満たせるものを手に入れたい」 というのはジョブです。

このジョブのために雇用される可能性があるのは、ミルクシェイク以外にも、バナナ、ドーナツ、ベーグル、チョコレート菓子、コーヒーなどでしょう。ジョブを片づける雇用候補は、すべて異なる製品カテゴリーに属していることがわかります。

ジョブの見つけ方 (ジョブハンティング) 


ここまでの 「ジョブとは何か」 を受けて、次に 「どうやってジョブを見つけるか」 を見ていきましょう。

お客さんのジョブをしっかりと理解するには、ある特定の状況でお客さんがなし遂げようとしている進歩を、機能的、感情的、社会的側面も含めて見極めることが重要です。

さらに、お客さんが 「引き換えにしてもいい」 と考えているものが何かを理解することも大事です。

ジョブハンティングというジョブを見つける方法として、次の5つを意識するといいでしょう。

  • 身近なところでのジョブ
  • 無消費に注目 (何も雇用していない) 
  • 間に合わせの雇用で我慢しているジョブ
  • 本当はやりたくないジョブ (ネガティブジョブ) 
  • 想定外の使い方


ジョブの解決へ


ジョブの理解が前半戦だとしたら、後半戦はお客さんの進歩 (progress) を実現することです。

見出したジョブからの価値創出へ

お客さんのジョブをとらえることは重要ですが、片づけるべきジョブを明らかにすることは、最初の一歩にすぎません。

というのは、お客さんが商品を買って期待するのはプログレス (進歩) であって、プロダクトそのものではないからです。この認識が大事です。

お客さんが心から雇用したいと思い、しかも繰り返し雇用したくなる働き手である 「ワーカー」 となるためには、つまりジョブの解決策を生むには、お客さんの片づけるべき 「ジョブの文脈」 まで深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握しなければなりません。

代わりに何が "解雇" されるかという視点

ジョブを完了させるワーカーには、通常は複数の雇用候補がいます。

よって、「当社の商品が新たにワーカーとしてお客さんに雇用されるためには、今雇用している何が解雇されなければいけないか?」 という競合を捉える視点が大事になります。

何を解雇して、何を新しく雇用するかを決めるお客さんの判断基準や意思決定プロセスは、お店に入るずっと前から始まっており、しかも大抵は込み入ったものです。

このように代わりに何が解雇されるかというリプレイス (置き換え) の視点を持つことで、何らかの選択を行う瞬間には、お客さんの頭の中でワーカーを選ぶための綱引きが行われていることがイメージしやすくなります。

 「ジョブスペック」 

ジョブを解決するためにカギを握るのが 「ジョブスペック」 です。

ジョブスペックは製品スペックとは違い、ジョブを完了させるために必要な要素です。

ジョブスペックには、お客さんが求める進歩について機能的・感情的・社会的側面から内容が書かれます。さらに、お客さんから雇用される競争をする相手 (競合) と、お客さんが雇用するときに障壁となる心理的・物理的バリアが含まれます。

ジョブスペックは、お客さんのジョブを完了するための指針となるものです。

パーパスブランドを目指す

クリステンセンは、自社商品やサービスの目指す姿として 「パーパスブランド」 という考え方を打ち出しました。

パーパスブランドとは、お客さんがジョブを遂げるためにワーカーとして独占的に選ばれるブランドのことです。他に雇う候補がない状態にまでもっていければ、お客さんとの関係はそれだけ強くなります。

ジョブを的確にとらえ、唯一と言っていいほどのジョブスペックがあれば、自社ブランドはパーパスブランドとなれるわけです。

パーパスブランドは、社外の人にとってはあなたの会社が何を体現しているのかを理解するシンボルとなり、社内の人にとってはブランドの意思決定と行動を体現する指針となります。

まとめ


今回は、書籍 「ジョブ理論 - イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (クレイトン・M・クリステンセン) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ジョブ (Jobs to Be Done) は、お客さんが特定の状況で遂げたい進歩。人はジョブを完了させるために商品やサービスをワーカーとして雇う。状況とジョブを理解することで、お客さんがなぜその商品やサービスを買ったり使うのか (雇うのか) が見えてくる

  • ジョブを見つけるためには、① 身近なところでのジョブや、② 何も雇用していない無消費の状況、③ 間に合わせの雇用で我慢しているジョブ、④ 本当はやりたくないネガティブジョブ、⑤ 想定外の使い方に注目することが有効

  • ジョブ解決のプロセスでは、顧客の進歩 (プログレス) を実現するためにジョブスペック (ジョブを完了させるために必要な要素) を設計する。競合製品の 「解雇」 を促す視点も取り入れる。お客さんのジョブを独占的に解決する存在となるパーパスブランドになることを目指す


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。