#マーケティング #ベネフィット訴求 #顧客理解
自社の商品やサービスをアピールするとき、どこに光を当てているでしょうか?
商品・サービスの機能面の説明だけで、本当にお客さんの心は動くでしょうか?
多くの場合、私たちは商品の一次的な価値を伝えることに留まり、その先にある 「お客さんの生活やビジネスがどう変わるのか」 という本質的な価値には触れていないかもしれません。
今回は、お客さんの心に響くための 「二段階のベネフィット訴求」 について、具体例を交えながら解説していきます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
二段階のベネフィット訴求
マーケティングにおいて、商品の魅力を伝えるためには 「便益 (ベネフィット) 」 の訴求が欠かせません。
多くのケースでは、商品の機能や特徴という一次的な便益の訴求にとどまりがちです。
例えば、掃除機の広告が 「吸引力が高い」 とだけ伝える場合、消費者はその商品が自分の生活をどう改善するかを想像しづらいことでしょう。これでは消費者の心を動かすには十分とは言えません。
商品の本当の価値を知ってもらうためるには、一次的な便益に加え、そこからさらに 「生活や気持ちがどう変わるか」 という二次的な便益まで掘り下げて伝えることが効果的です。
ではまずは一次的な便益 (ベネフィット) から順番に見ていきましょう。
一次ベネフィット
一次的な便益は、商品の機能や特徴がもたらす直接的な利点を指します。
例えば、大画面テレビの場合は 「くっきりと大きな映像が見られる」 や 「映画館のような迫力がある」 といった特徴が該当します。
また、スマートフォンを例にすると、「高解像度カメラで美しい写真が撮れる」 や 「高速プロセッサーでスムーズにアプリを操作できる」 といった機能的価値が挙げられます。商品そのものが持つ機能的価値を中心にするのが一次ベネフィットです。
二次ベネフィット
商品がお客さんにもたらす価値は一次的な便益だけではありません。
商品の便益が生活や感情にどのような変化をもたらすかを、「商品を手に入れたことや使うことで得られる新しい体験や気持ち」 を訴求することによって、お客さんの心をさらに動かすことができます。
例えば、大画面テレビがもたらす二次的な便益としては、「リビングに家族が集まり、同じ時間を共有する温かい生活」 となります。機能的価値にとどまらず、お客さんが 「こんな生活を手に入れたい」 と願う情緒的価値やライフスタイルをより良くする便益です。
二段階でのベネフィット訴求のメリット
ここまで見てきた一次と二次での二段階でベネフィットを訴求する方法には、いくつかのメリットがあります。
具体的には次のようなものです。
- 共感を引き出す: 一次ベネフィットだけでは競合製品との差異化が難しい場合でも、二次ベネフィットはお客さんの具体的な生活シーンや課題に寄り添うため、感情的な共感を引き出しやすくなる
- ライフスタイルを提案する: 商品を通じて消費者が得られる理想のライフスタイルを提示することで、商品購入が 「価値のある選択」 として捉えてもらえることが期待できる
- ブランドイメージを向上させる: お客さんの生活や事業を深く理解し、改善を提案する姿勢は 「顧客ファースト」 の企業姿勢を打ち出し、信頼を築く原動力になる
他の事例
では、スマートウォッチ (またはスマートバンド) と連携するアプリを例に、二段階のベネフィット訴求について具体的に考えてみましょう。
スマートウォッチとアプリは、健康管理ツールにとどまらず、消費者の生活や目標達成をサポートします。
もしマーケティングするなら、一次的なベネフィットだけでなく、派生する二次的なベネフィットまで広げて訴求することによって、より多くの消費者の共感を得ることができるでしょう。
一次ベネフィット
スマートウォッチとアプリの一次ベネフィットは、機能に焦点を当てた価値です。
これらのベネフィットは、消費者が自分の健康状態を管理したいという基本的なニーズに応えるものであり、日常生活をより健康的に過ごすためのサポートを果たします。
具体的には、
- 健康データの記録: 歩数、心拍数、睡眠データを正確に計測
- リアルタイム通知: 運動不足や高ストレス状態を知らせるアラート機能
- 目標達成サポート: 日々の運動目標や睡眠目標の達成を可視化
これらは、スマートウォッチとアプリが提供する機能的な価値として、消費者への直接的な利点になります。
二次ベネフィット
一次ベネフィットをさらに掘り下げ、二次的なベネフィットである 「商品がもたらす生活や感情の変化」 を言語化し、消費者に自分ごと化できるよう伝えることが、購買意欲を引き出すカギになります。
スマートウォッチとアプリの場合、以下のような二次ベネフィットが考えられます。
- 健康意識の向上: 普段の運動不足に気づき、こまめに動く習慣が身につくことで、将来の病気や健康を損なう可能性を減らせる。自分の健康に自信が持てるようになる
- 自己実現や自己成長: 歩数や運動スコアなどの日々の小さな目標を達成することにより、自分もやればできるという自己肯定感が高まる。他の目標にも積極的に挑戦できる自分に変わる
- 家族や友人とのつながりの構築: 家族や友人と同じアプリで目標を共有し、お互いに励まし合うことで、健康をきっかけに絆が深まる
こうした二次的なベネフィットを見出し、次のような訴求が可能になります。
歩数計測機能という一次ベネフィットに加えて、「友人同士や家族みんなで1日の歩数を競い、健康的なライフスタイルを一緒に作りませんか」 といった二次ベネフィットまでを入れた用途提案をすると、スマートウォッチとアプリが消費者の生活の中でどのように役立つかを具体的にアピールできます。
汎用的な学び
では最後のパートでは、今回の内容からのマーケティングへの汎用的な学びについて整理してみます。
顧客文脈の掘り下げ
ベネフィットを訴求する際に必要なことの1つ目は、お客さんの置かれた状況と状態 (心理状態や身体的状態) の深掘りです。
例えば、健康管理を続けられない理由を把握し、成果が見えにくいこと、ひとりだとなかなか続かないといった課題を見つけます。ある人が毎日1万歩を目標に設定しても、自分ひとりでは達成しにくく、モチベーションを保つのが難しい状況があることでしょう。
このような具体的なリアルな状況から顧客文脈まで理解していくわけです。
ハッピーな未来描写と提案
2つ目のベネフィットの訴求に必要な要素は、商品ではなくより高い次元での、例えばライフスタイルがより良くなるという、お客さんにとってハッピーな未来を提案することです。
スマートウォッチの場合は 「ウォッチとアプリを使えば、ただ健康を維持するだけでなく、より豊かな日常や身体を手に入れられる」 という理想の未来を描くわけです。
このようにベネフィットを二段階まで掘り下げることによって、商品の説明や機能的な特徴だけに終始せず、お客さんにとって自分ごと化できる提案につながります。お客さんの状況と状態、その状況下で生じている顧客ニーズに寄り添い、新たな価値を提案する方法は、お客さんに選ばれるために欠かせないアプローチです。
二段階のベネフィットを訴求するポイント
整理すると、二段階のベネフィット訴求を活用するには次のことがポイントです。
- 一次ベネフィットの特定: 商品の機能や特徴を洗い出し、それがもたらす直接的な利点を明確にする
- 二次ベネフィットの深掘り: 一次ベネフィットがお客さんの気持ち、生活、ライフスタイルにどうポジティブな影響を与えるかを再解釈する
- ストーリーで訴求する: 一次ベネフィットから二次ベネフィットへとストーリーで結びつけ、消費者がお客さんが商品を手にして使った後の 「ハッピーな未来」 を具体的にイメージできるように伝えていく
まとめ
今回は、商品やサービスからのベネフィット (便益) をいかに訴求するかを考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 顧客の置かれた状況と、その状況での状態を掘り下げることで、本当のニーズが見えてくる。状況と状態から具体的な課題や未充足のニーズを特定する
- マーケティングで目指したいのは、お客さんの理想の未来を描くこと。機能紹介で終わらず、商品によって実現できる豊かなライフスタイルや成功イメージまでを提案することによって、顧客の心を動かす
- 一次ベネフィットと二次ベネフィットを設計し、2つをつなげるストーリーに落とし込む。商品の直接的な利点 (一次ベネフィット) を起点に、顧客の生活やビジネスがどう変わるか (二次ベネフィット) を具体的に描く
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