#マーケティング #ブランディング #顧客体験

2025 年 12 月の年末、沖縄に家族旅行で訪れ、「ジャングリア沖縄」 にも行ってきました (隣接する 「スパジャングリア」 にも行きました) 。

そこで感じたことが、ブランディングに通じると思ったのでご紹介します。

はじめてのジャングリア沖縄

出典: ジャングリア沖縄

ジャングリア沖縄で、大きく 2 つのことが印象に残りました。

コンセプト 「Power Vacance!!」 の浸透

ジャングリア沖縄のコンセプトは 「Power Vacance!!」 (パワーバカンス) です。

世界自然遺産 「やんばる」 から連なる大自然で体験する、本物のクオリティと興奮。0:50都会の喧騒を離れ、森の絶景を全身で味わう贅沢と解放感が、心が昂る瞬間を提供するとしています。

今までにない非日常の興奮と感動を体験できるとジャングリアは謳っていますが、自分が体験して思ったのは、「すごく感じられる時」 と 「そうでもない時」 に分かれていて、どちらかというとあまり感じられない場面のほうが多かった印象です。

ジャングリア沖縄のメインのアトラクションは、確かに 「パワーバカンス」 は体現していました。

  • スカイフェニックス: 高さ約 20m のタワーから眼下に広がるやんばるの森へ鳥のように飛び出すジップラインアクティビティ
  • ダイナソーサファリ: 大型オフロード車に乗り込み、暴走した T-REX などの恐竜が潜むジャングルを駆け巡り、ミッションを遂行するライド型アトラクション
  • バギー ボルテージ: 森の中をバギーを運転して走るアトラクション (乗ったのは 「アドレナリン チャレンジ コース」 です) 

これらは、ジャングリアならではの迫力とバカンスの高揚感が組み合わさった体験で、これだよねと思えるものでした。

一方で、それ以外の要素、具体的には、園内の BGM や効果音、フード、お土産グッズ、ショップのつくり、施設全体の雰囲気などは、相対的にパワーさやバカンスを楽しんでる感が弱く感じました。

もっと、あらゆる場所でしつこいくらいにパワーバカンスを打ち出してもいいと思いました。そうやって徹底すれば、ジャングリアのコンセプトがゲストの体験として浸透していくはずです。

ディズニーリゾートと比べると分かりやすいですが、ディズニーの 「夢の国」 「魔法の国」 というコンセプトは、ディズニーランドやシーの隅々まで染み込んでいる感じがあります。それに比べると、ジャングリアはまだ道半ばという印象でした。

ただ、ジャングリア沖縄は開園してまだ 1 年も経っていないので、そのぶんパワーバカンスの浸透には伸びしろがあるというのが 1 つ目の感想です。

ナビゲーター (スタッフ) の雰囲気

もう 1 つ強く感じたのは、ジャングリア沖縄のナビゲーター (スタッフ) の雰囲気がすごく良かったことです。

笑顔や声がけが多くて、通りかかっただけで手を振ってくれたり、自然に話しかけてくれたりします。仕事としてやってるというより、ナビゲーター自身が本当に楽しそうにしているのが印象的でした。

自分たちがここで、ナビゲーターとして役割を果たしていることに誇りを持っているんだろうな、やりがいを感じているんだろうなと受け取りました。

その空気感が来場者にも伝わって、こちらも自然と楽しくなってくる。結果として、ジャングリア全体の雰囲気にも良い影響が波及しているように感じました。

ブランディングへの着想

今回のジャングリア沖縄で感じたことは、マーケティングにも通じます。

1 つ目の 「コンセプトの浸透」 と、2 つ目の 「ナビゲーターの振る舞い」 を合わせて考えたときに、これはマーケティングでいうブランドに示唆のある話だと思いました。

ブランドコンセプト

ブランドを打ち出していくうえで、まず最初にやるべきことは、ブランドコンセプトを明確にすることです。

その点、ジャングリア沖縄は 「パワーバカンス」 というコンセプトがはっきり設定されています。

ただし、現時点ではそれがパーク内のさまざまな施策において、まだ完全には浸透しきっていない印象です。だからこそ今後の課題は、ブランドコンセプトをどれだけ隅々まで浸透させられるかにあります。

インナーブランディング

そして 2 つ目のナビゲーターの振る舞いは、インナーブランディングに示唆的です。

ブランディングというと、外部に向けた活動のイメージが強いでしょう。でもその前段階として重要なのが、内部の関係者がブランドの体現者になることです。ここにインナーブランディングの重要性があります。

ジャングリアの場合、ナビゲーターの一人ひとりがブランドの伝道者であり体現者として振る舞い、そこから来園したゲストという外に向けて発信されていくことで、ブランドコンセプトは広く伝わっていきます。

この点で、ジャングリアのインナーブランディングはうまく機能しているように思います。ナビゲーター自身が自分たちの役割に意義を感じ、誇りを持ち、楽しそうにしている。それがやらされ感やわざとらしさではなく、心の底から自然ににじみ出ているのが印象的でした。

ジャングリア沖縄に学ぶブランディングの秘訣

ジャングリア沖縄での体験から見えてきた、ブランディングの本質的な押さえどころをもう少し考えていきます。

ブランディングの起点は 「コンセプトの体験設計」 

ブランドコンセプトの言語化は、大事なスタート地点です。

ジャングリアでいえば、パワーバカンスという言葉がそれにあたります。コンセプトが明確であること自体は大きな強みです。

ただし、重要なのはここからです。

言語化されたコンセプトが、体験として実装されて初めて、人の記憶に残るブランドになります。ブランディングの肝は、コンセプトを体験に翻訳して、再現性のある形で設計することなのです。

ジャングリアの場合、スカイフェニックスやバギーなどのメインアトラクションでは、迫力や力強さの 「パワー」 と、沖縄のやんばるの森にいる非日常感の 「バカンス」 の高揚感が体感として成立していました。ここでは、コンセプトがちゃんと体験に落ちています。

一方で、BGM や効果音、フードやグッズ、ショップなどで感じられない瞬間があり、個人的にはパワーバカンス感はありませんでした。

こうした揺らぎやチグハグ感が積み重なると、コンセプトは言葉としては知っているものの、体験として腹落ちしない状態になります。

体験の一貫性をつくるには 「コンセプト翻訳」 が必要

パワーバカンスという言葉があるだけでは、十分ではありません。必要なのは、コンセプトを各要素に翻訳することです。

たとえばパワーバカンスを、要素ごとに分解して基準化します。

  • 音: 鼓動が上がる, 身体が動く, 躍動感がある
  • 食: エネルギーが湧く, 豪快, 野性, 見た目の迫力
  • 物 (グッズ) : 見たり手にするだけでテンションが上がる, 思わず写真を撮りたくなる
  • 空間: 開放感, 熱量, 生命力, 自然との一体感
  • 言葉 (声がけ) : テンションが高い, 背中を押す, 冒険へ誘う, 気分を上げる

こうした落とし込んだ翻訳があると、フード担当・物販担当・音響担当など、持ち場が違う人たちによる最終的な提供体験の方向性が揃うはずです。

ブランドコンセプトは世界観が統一された翻訳ルールになって初めて機能します。

 「神は細部に宿る」 

ブランディングが対象とするのは、目玉の主役だけではありません。むしろ、周辺要素の統一感がブランドを決めると言ってもいいでしょう。

ジャングリア沖縄の場合、ゲストが滞在中に触れている時間が長いのは、アトラクションの瞬間だけではなく、その前後を含む体験にあります。

  • 入口、待機列、移動導線
  • 音 (BGM・効果音・アナウンス) 
  • 食 (ネーミング・見た目・提供体験) 
  • 物 (グッズのデザイン・店内の世界観や雰囲気) 
  • 空気 (オブジェ・照明・サイン・スタッフの声がけ) 

これらがすべて、コンセプトを感じるいわば装置のようになります。

メインアトラクションでパワーバカンスを強く感じられ、さらに周辺のすべてが同じ方向に寄っていくほど、体験は点から線になり、線が紡がれて面になっていきます。逆に、周辺に行かないと、コンセプトは点で終わりやすいわけです。

ここでの汎用的な示唆は、ブランドは主役のみで伝わるのではなく、脇役となる周辺要素も合わせたトータルでの総量で染み込むということです。ブランドの神は細部に宿るのです。

インナーもアウターも両方大事

ジャングリア沖縄で強く感じたナビゲーター (スタッフ) の雰囲気。笑顔や声がけが自然で、本人たちが楽しそうで、その空気がゲストにも伝わっていく。これはインナーブランディングが効いている状態です。

インナー (内側) とアウター (外側) は両方が重要で、相互に影響し合います。

関係性としてはインナーは土台となります。

  • インナー (土台) : スタッフがコンセプトを理解し、誇りを持ち、自然に体現できる
  • アウター (表現) : 空間・演出・商品・発信などがコンセプトを一貫して表現している

どれだけ外側の装飾を整えても、最後にゲストが触れるのは現場の人と現場の空気で、そこに齟齬があるとブランドコンセプトは崩れます。

ジャングリアは、ナビゲーターの振る舞いがすでに強い良さとして立ち上がっています。その良さをパワーバカンスの体現にさらに接続できると、インナーの強さがアウターの強さへと波及ししていきます。

アウター側が強化されると、スタッフも自分たちはこういう世界をつくっているんだという実感が得られ、インナーもさらに強くなります。インナーとアウターは両輪で、相互強化のループを回せるかが大事です。

ブランディングの肝は 「一貫性」 と 「伝播」 

ジャングリア沖縄の例から抽出できるブランディングのチェックポイントは、次の 2 つです。

1 つ目は体験が一貫しているかです。目玉のアトラクションだけでなく、周辺要素 (音・食・物・空間・言葉) まで含めて、コンセプトが同じように揃っているか。点ではなく線でつながり、複数の線が面になっているかが大事です。

2 つ目は内と外で伝播が起きているかです。スタッフの体現 (インナー) と、空間・商品・発信 (アウター) が噛み合い、相互強化のループが回っているか。その結果として、お客さんの記憶にブランドとしての 「らしさ」 が残っているかが重要です。

ブランディングとは

ジャングリア沖縄の体験から汎用化できる本質はこうです。

ブランディングとは、ブランドコンセプトを体験として設計し、細部まで一貫した世界観として実装しながら、インナー (内部の体現) とアウター (顧客接点) の両方から、お客さんの記憶に 「ブランドらしさ (= コンセプトの表出) 」 を残す活動である。

ジャングリア沖縄は、メインアトラクションとナビゲーターの雰囲気という中核がすでにありました。だからこそ次は細部へ広げ、内と外の表現を揃えられるか。そこにジャングリア沖縄の伸びしろがあるという見立てです。

まとめ

今回は、ジャングリア沖縄に行って感じたことから、ブランディングへの示唆を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ブランドコンセプトは、言葉のままではなく体験として設計して初めてお客さんに伝わる
  • コンセプトを各要素に翻訳することで、現場の判断基準が揃う
  • ブランドは主役だけではなく、周辺要素までの浸透と統一感の総量で染み込んでいく (神は細部に宿る) 
  • インナーブランディングは土台となり、顧客接点でブランドを表現するアウターとの相互につながり、ループとしてまわる構造が重要
  • 隅々までの一貫した世界観と熱量の伝播が、顧客の記憶に残る 「らしさ」 をつくり、頭の中にブランドができる