投稿日 2022/12/06

リニューアルで 「マイシャンプー化」 を狙う花王のサクセス。二段階での自分ごと化

#マーケティング #価値提案 #自分ごと化


今回のテーマは価値提案です。見込み客から 「この商品が欲しい」 と思ってもらえるために、二段階での自分ごと化をしようという話です。

おもしろいと思ったシャンプーの事例から、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。

✓ わかること
  • 花王サクセスがリニューアル
  • マイシャンプー化を狙うマーケティング
  • お客さんの 「自分ごと化」 を生む方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

花王サクセスのリニューアル


ご紹介したいのは花王の男性ヘアケアブランド 「サクセス」 の事例です。

今年2022年で花王の男性向けヘアケア用品 「サクセス」 シリーズの 「サクセス 薬用シャンプー」 は35周年を迎えました。

 「マイシャンプー化」 を狙う


ロングセラー 「サクセス 薬用シャンプー」 のリニューアルについて見ていきましょう。花王の狙いは 「マイシャンプー化を図る」 というのが興味深かったです。

22年6月にアデランスが発表した 「シャンプーに関する全国意識調査」 では、男性が家庭内で自分専用のシャンプーを使用している割合は約 35% にとどまり、家族とシャンプーを共用している状況が明らかになっている。

恐らく専用シャンプーを使っている約 35% は、こだわりを持ち、各社が商品力発信に力を入れている商品を購買している層だろう。サクセスシリーズが狙うのは、まだ家族とシャンプーを共用している約 63% の層と考えられる。だからこそ、サクセスシリーズの強みである 「育毛トニックとシャンプーのシナジー」 に目を付けた。

 「新型コロナウイルス禍で在宅時間が増え、健康意識が高まった。その中で髪や頭皮のケアを見つめ直す人も増えたが、まず何から始めたらよいか分からないという声も寄せられた。そこでシャンプーが育毛につながる価値を提案することで、共用シャンプー利用者のマイシャンプー化を図りたいと考えた」 (ヘアケア事業部ブランドマネジャー林裕也氏) 

花王はサクセスでマイシャンプー化を実現するために 「トータルでの育毛ケア」 を提供していくとのことです。

トータルでの育毛ケアを提案


どのような提案なのかを続けて見てみましょう。

共用シャンプー利用者層を狙う上で、サクセス 薬用シャンプーの強みは価格設定にもある。

メンズシャンプー市場において、人気商品の価格相場は1500 ~ 3000円だが、サクセス 薬用シャンプーは1000円以下で買える。頭皮環境に悩みを抱える人にとってケアを継続できるコストパフォーマンスは強みになる。

前述の 「シャンプーに関する全国意識調査」 をはじめ、各社調査でも、男性がシャンプーを選ぶ決め手は価格ということが明らかになっている。育毛に関心があっても、高価な商品の購入には抵抗がある層や、妻が夫のシャンプーを選んでいる代理購入層にとって、値ごろ感は手に取ってもらう大きな武器になり得るだろう。

 (中略) 

主力製品である育毛トニックと薬用シャンプーをセットで使ってもらえるよう、「トータルケアブランド」 として提案し、訴求する戦略を推進していく。

学べること


では花王のサクセスから、マーケティングに学べることを掘り下げていきます。

二段階に分ける


花王はサクセスのターゲット顧客を30 ~ 40代の家族と同居している男性と想定し 「マイシャンプー化」 を狙っています。

ゴールをマイシャンプー化と置いた時に一足飛びではなく二段階に分けて行くのがポイントになります。

2つの段階の1つ目は、まずはシャンプーというカテゴリーへの意識が高まるように興味喚起をします。

具体的には、これまではお風呂場に置いてある家族との共用シャンプーをただなんとなくの理由で使っていた状況から、「本当にこのシャンプーは自分にとってベストなのか」 「もっと自分向けのシャンプーがあるのでは」 というシャンプーカテゴリーでの課題感を持ってもらいます。

これがマイシャンプー化への一段階目のステップです。

商品レベルでの自分ごと化


シャンプーカテゴリーへの意識関与が高まれば、次にシャンプーの 「商品レベル」 での興味を持ってもらうように働きかけをします。

シャンプーといっても様々な商品がある中で、どれが自分にとって最適なシャンプーなのかという商品のレベルで課題感の解像度が高くなっている状態を目指します。

多くの中で自社商品 (花王にとってはサクセス) が能動的に選ばれれば、晴れて 「マイシャンプー」 になれるわけです。

順番に興味喚起を高めよう


サクセスの事例からの学びを一般化すると 「二段階での興味喚起」 です。

見込み客の中での 「自分ごと化」 が生まれるためにまずはカテゴリーレベルで、次に商品レベルで順番に進めると良いです。

逆に言えば、カテゴリーへの意識が弱くアンテナ感度がまだ高まっていない時に商品を訴求しても興味を持ってもらいづらいです。商品に強いインパクトがあり、商品をいきなり提示して目を向けてもらえる方法もありますが、これは難易度が高いです。

汎用的に使える方法としてカテゴリーでの興味喚起をし、その後で商品への関心を高めてもらうというマーケティングの二段階のアプローチは覚えておいて損はないです。


まとめ


今回は花王のシャンプー 「サクセス」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 二段階での自分ごと化
  • カテゴリーへの意識が弱くなんとなくでしか使っていない状態で商品を訴求しても、興味を持ってもらいにくい
  • まずはカテゴリーへの意識を高め、次に商品レベルでの興味を持ってもらうように働きかけをするとよい


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。