投稿日 2022/12/08

KATE リップモンスターの大ヒットは、社内の反対を打ち破ったマーケターの直感から

#マーケティング #顧客理解

出典: PR TIMES

今回のテーマは、「マーケターとしての直感をどうやって磨くか」 です。

人気の化粧品を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げていきます。

✓ わかること
  • 口紅の 「KATE リップモンスター」 大ヒット商品に
  • 社内の反対 vs マーケターの直感
  • マーケターの直感の磨き方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

KATE リップモンスター


ご紹介したいのは花王の 「KATE リップモンスター」 です。

出典: PR TIMES

モンスター級のヒット


売上は好調な滑り出しでした。

都内のドラッグストア。化粧品がずらりと並ぶ中、いまだに品切れが目立つ棚がある。2021年5月に発売した口紅 「KATE (ケイト) リップモンスター」 の売り場だ。

発売直後の 「瞬間風速」 ともいえる週間シェアは5割超。まさにモンスター級のヒットだ。マスク生活中の発売にもかかわらず、累計出荷本数は470万本 (8月末時点) を突破。21年にはドラッグストアやコスメ専門店など、百貨店を除く口紅市場で、初のシェア1位を獲得した。

社内の反対 vs マーケターの直感


大ヒットになった 「KATE リップモンスター」 ですが、発売前の企画段階では社内には不安や反対の声があったようです。

リップモンスターの企画が始まったのは20年。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた頃だった。

自粛要請で外出する機会自体が減ったほか、せっかく口紅をつけたところで外では口元がマスクで隠れる時間が大半を占める。「これからマスク生活が続く中、口紅を増やして大丈夫なのか」 「コロナ禍にリップは求められていないのでは」 。社内では口紅の新商品投入を不安視する声が高まった。

マーケティングチームの見立ては逆でした。

 「社内の意見 vs マーケティングチームの意見」 で、結果として合っていたのは、マーケターのほうでした。市場やターゲット顧客である女性の心理を直感的にわかっていたのです。

社内の消極ムードを打ち破ったのは岩田有弘ブランドマネジャーが率いるチームの 「マスクをするからって口紅をしないなんてありえない」 との確信だった。

調査など定量データがあるわけではなかったが、「口紅をしないと顔が完成しない」 「マスクを外す一瞬でも顔がかわいくないと嫌」 という女性は少なくないとの直感があった。

定量的なデータではなかったものの、マーケティングチームの直感的な生活者の理解があったからこそ、ヒット商品につながったわけです。


学べること


では、どうすればマーケターの直感を磨いていけるのでしょゔか?

お客さんとの適切な距離感


先ほど引用した記事にはヒントが書かれています。

岩田氏は今年44歳。20 ~ 30代女性を中心としたケイトの開発・マーケティングのメンバーとは、他愛もない雑談も含めてひっきりなしにやりとりしている。自身の感覚を常にアップデートするためだ。「月に1回以上は子供を連れて原宿や渋谷にも足を運ぶ。ドラッグストア巡りをしたり、街ゆく人のファッションを見たり……」 

一方で自分の考えを常に持っておくことも意識している。「そうでないとブランドとしてそれはやるべき、やるべきじゃないという判断ができなくなる」 と岩田氏は語る。

印象的なのは、ターゲット顧客との距離感を適切に保とうとしていることです。

社内でお客さんと同世代のチームメンバーの女性と他愛もない雑談をしたり、休日のプライベートの時間にも、月に1回以上は原宿や新宿に訪れて肌感覚でマーケットを理解しようとしています。

一方で、自分の軸 (自分の考え) となるようなものを持っておくことも意識されています。軸とは船の錨 (いかり) のようなイメージで、刺さっていて拠りどころになるからこそ、自由に移動ができるのです。

マーケターの直感の磨き方


マーケターとしての直感を磨くためには、いかに顧客視点になれるかです。

お客さんのいる状況、普段の生活スタイルなど、お客さんの文脈を知り、お客さんの見ている景色と同じものを見ようとするのが顧客視点になるということです。

お客さんに乗り移るような 「憑依 (ひょうい) 」 をどこまでできるかです。

そして憑依した後にまた自分に戻ってくる、つまりお客さんからマーケターに復帰する時に、拠りどころになる自分の軸がブレないようにします。

以上のようなお客さんへの 「憑依」 と自分自身 (マーケター) への 「復帰」 は、マーケットインとプロダクトアウトの関係と同じです。

お客さんと同じ景色を見ようとする憑依と、ブランドやマーケティングでのブレない軸をよりどころにする復帰を愚直に繰り返すことが、マーケターの直感を磨く方法です。


まとめ


今回は花王の化粧品 「KATE リップモンスター」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ マーケターの直感の磨き方
  • マーケターのアンテナ感度を高めるには、顧客視点になることが大事
  • 顧客視点になるとは、お客さんの文脈を知り、お客さんの見ている景色と同じものを見ようとすること
  • お客さんに乗り移る 「憑依 (ひょうい) 」 と、自分 (マーケター) に戻る 「復帰」 を愚直に繰り返すことで、マーケターの直感は磨かれる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。