投稿日 2022/12/23

JR 東・飲料商品の販路拡大はどうなる?マーケティング活動の整合性

出典: acure

今回は、マーケティング活動に一貫性をもたせることが大事という話です。

おもしろいと思った JR 東日本の飲料事業を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • JR 東の飲料ビジネス
  • オリジナル商品のブランド化
  • 販路拡大は吉と出るか?
  • マーケティング活動に整合性を

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

JR 東の飲料ビジネス


JR 東日本の飲料販売が好調のようです。

駅ナカ関連事業を手掛ける JR 東日本クロスステーション (東京・渋谷) の飲料商品開発・販売部門、ウォータービジネスカンパニーの今年1 ~ 7月累計の飲料販売数量は、前年比 10% 以上増えた。

飲料市場全体は 3% 増、自動販売機チャネルでは前年並みという市場を大幅に上回った。

オリジナル商品も販売


JR 東は独自の飲料商品も出しています。

商品数を増やしつつ機能を進化させた自販機 「acure (アキュア) 」 を設置し、オリジナル商品を開発するなど独自のマーケティングを購買喚起につなげている。

例えば谷川連峰 (たにがわれんぽう) の水を生かしたペットボトル入り 「From AQUA 天然水ゼリー」 。清涼感に加え小腹も満たせるというニーズに応え、通勤通学での利用が多くヒット商品となった。

希少化によるブランド化


オリジナル商品は限定感を出し、ブランド化を目指しています。

自販機を acure ブランドで統一し、オリジナル商品には 「acure made (アキュアメイド) 」 ブランドを付けている。メイン商品であるミネラルウオーター 「From AQUA」 は今年、採水地を白神山地 (しらがみさんち) 、谷川連峰の2か所にしたうえで内容量も増やした。

アキュアメイドは果汁飲料にも広がる。以前より、「青森りんご」 「愛媛みかん」 など地域の優れた素材を地産飲料として販売してきた。パッケージデザインを一新し今年は6月に自販機で発売した 「福島あかつきもも」 は、産地・数量・期間の3つの限定で発売され、希少性を増すことで、注目を一層集めるよう仕掛けた。

 「鉄道会社で旅のお供というイメージもあり、果汁へ注目が集まりやすい」 。総務部の小室塁副課長は語る。これら一連の商品は、自販機のほか量販店や東日本以外のエリアにも販路が拡大している。

学べること


では、JR 東の飲料ビジネスから学べることを掘り下げていきましょう。

Product と Place での独自化


JR 東のオリジナル商品は、マーケティング 4P の Product (商品) と Place (販売チャネル) で差異化を図っています。

✓ Product
  • 地域の優れた素材を使う地産の飲料
  • 例: 福島あかつきもも。産地・数量・期間の3つで限定

✓ Place
  • JR 東日本エリアの駅構内や駅ナカで売る

販路拡大でどうなる?


先ほどの引用した記事の最後に書かれていたのは、「これら一連の商品は、自販機のほか量販店や東日本以外のエリアにも販路が拡大している」 でした。

興味深いのは、ここが吉と出るかどうかです。

吉となるシナリオは、販売チャネルを駅ナカの自販機以外の量販店や東日本エリア以外にも拡大することで、売上が増えることです。短期的にはこうなるでしょう。

一方で、販路拡大によりこれまでのブランドとしての 「らしさ」 が弱まる、つまりブランドが希薄化する可能性があります。こちらは中長期で起こり得るシナリオです。

東日本エリアでなじみのある産地の果物を使った飲料を、数量や期間を限定し、駅ナカでしか買えない希少性やストーリーが独自な存在となっていました。消費者が他とは異なるイメージを持った結果としてブランドになるわけですが、この状況が販路拡大により 「どこにでもある飲料商品」 というイメージが付くと希少性が薄まります。

全体での一貫性を


学びを一般化すると、マーケティング活動を大きく変える時には、部分ではなく全体最適をすることが重要です。

例えば、全体での整合性をマーケティング 4P の4つでチェックするといいです。

今回のように販売チャネルを増やしたり変える時には、ターゲットとなるお客さんを中央に据えて、4P の Product, Place, Price, Promotion で一貫性を失わないようにすることが大事です。


まとめ


今回は JR 東日本の飲料ビジネスを取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ マーケティング活動の整合性
  • マーケティング活動を大きく変える時には、部分ではなく全体最適になるようにする
  • ターゲットとなるお客さんを中央に据えて、マーケティング 4P の Product, Place, Price, Promotion で一貫性をもたせることが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。