投稿日 2022/12/07

GU が1週間の通勤服コーデを提案に見る、守破離マーケティング

出典: Pouch

今回は、「守破離」 をマーケティングに入れてみるとこうなる、という話です。

おもしろいと思った GU のキャンペーン企画を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • GU が一週間の通勤服コーディネートを提案
  • 「守破離」 との共通点
  • ライトユーザー向けの守破離マーケティング

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

全部 GU 服のコーディネート提案


GU がおもしろい取り組みをやっていました。

女性向けに1週間の通勤服コーディネートの提案で、1週間ごとの着回しコーデを展示する 「GU 1week Wardrobe」 という企画です (リリースはこちら) 。

GU 銀座店に 「通勤電車」 をイメージする特設スペースをつくり、公式サイトでも連動させてコーディネートの提案をしました (2022年8月29日 ~ 9月25日までの4週間) 。

出典: Pouch

GU ならではの組み合わせや着こなし方で、合計1万5000円以下におさまるコーディネートです。

背景となった調査結果


リリースには GU の自主調査の分析結果が紹介されていました。

調査は、20代 ~ 50代の働く女性を対象とし、コロナ禍以前と比較した通勤服やファッションに関するものです。

分析結果から、1週間コーディネート提案の背景になった消費者の実態は、

✓ コロナ禍以前と比較してコロナ禍中の支出で減少したトップ 3 (n = 500)
  • 交際費
  • 娯楽費
  • 被服費

✓ コロナ禍中に被服費を減らしたことで現在困っていること (コロナ禍中に被服費が減少したと答えた人 n = 153)
  • 約4割の人が 「リラックスした雰囲気の服が多くなった」 と回答
  • 約2割の人が 「トレンドの服がない」 や 「通勤服が不足している」 と回答

✓ 通勤服に求めること (n = 500)
  • 半数以上の人が 「着まわしやすさ」 を通勤服に求めている
  • 次いで、「価格」 や 「着心地」 を求めていると回答
  • 低価格で着まわしのできるアイテムが重視されている傾向

まずはマネをしてほしい


GU の通勤での服の着こなしの提案は、ファッションの上級者ではなく、普通の人に向けてです。

これはやや乱暴な言い方かもしれませんが、「とにかく、こうしたらいいですよ」 という、いわば四の五の言わずにマネをしてほしいというメッセージです。

自分なりのこだわりや工夫を入れるのは後でいいので、つまりファッションの中上級者になってからで、まずはこれをそのままマネをしてみてという提案です。


学べること


では GU の一週間の通勤服コーディネートの提案から、学べることを掘り下げていきましょう。

GU のアプローチは 「守破離」 と共通します。

守破離


守破離とは、日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の1つです。

修業における過程を示したもので、具体的には次のような三段階になります。

✓ 守破離
  • 守: 師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける
  • : 他の師や流派からも良いものを取り入れるなど、自分なりの工夫を入れていく
  • : 1つの流派から離れ、独自の新しいものとして確立させる段階

順番に言えば、最初は型を守り、少しずつ破り、最後は型から離れていきます。

GU の1週間コーデ提案は、守破離の 「守」 に当たります。

定着を狙う


守破離の守は、「型を忠実に守り、確実に身につける」 でした。

確実に身につけるとは、GU の文脈で捉えれば GU の服を着ることを習慣化し、定着を図るということです。

守の後に 「破」 と 「離」 に進んでいく、つまり GU 以外の服も着こなしに入っていくであろうが、そこに行く前に GU でそろえてもらうことを狙っているわけです。

GU の一週間の通勤服のコーディネートを、まるっと GU でそろえて、このまま着こなせばいいですよという提案は、守破離の観点からおもしろい事例です。

マーケティングへのヒントとして一般化しておくと、お客さん、特に新しくお客さんになったばかりの人や不慣れな人に、まずは商品やサービスの使い方の 「型」 を提案し徹底してもらうことで、早期での定着や習慣化をつくるアプローチです。


まとめ


今回は GU のキャンペーン事例を取り上げて、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 守破離マーケティング
  • 守破離とは芸道や芸術における師弟関係や鍛錬のあり方の1つ
  • 師匠の教え・型を徹底的にマネをし (守) 、少しずつ工夫を入れ (破) 、最終的には自分の型を確立する (離) 
  • 守破離をマーケティングに取り入れるなら、特に新規顧客やまだ不慣れな人に、商品やサービスの使い方の 「型」 を提案し、早期での定着や習慣化を狙おう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。