投稿日 2022/12/19

ファミマがヒット商品を連発。2つのマーケティングリサーチ変革

ファミマの生カヌレケーキ: FASHION PRESS

今回のテーマはマーケティングリサーチと商品開発です。「内にこもらない姿勢が大事」 という話です。

おもしろいと思ったファミマの商品開発を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • ファミマがヒット商品を連発している
  • マーケティングリサーチの2つの変革
  • 変革の本質は 「2つの外向き姿勢」 にあり
  • マーケティングに学べること

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ファミマの商品が好調


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

ファミリーマートがヒット商品を連発している。

スイーツでは 「スフレ・プリン」 を皮切りに、2021年6月発売の 「バタービスケットサンド」 が発売8日間で300万個を突破。22年3月発売の 「ファミマ・ザ・クリームパン」 は2カ月足らずで1000万個、6月発売の 「ファミマ・ザ・クレープ」 が3日で120万個を突破している。

定番化を狙う商品開発


ファミマの商品開発の方針として、商品の定番化を狙っているとのことです。

背景にあるのは、かつてのファミマの課題感でした。

 「スイーツ部門の売り上げは、ここ5年で1.5倍になった」 と明かすのが、商品本部 FF・スイーツ部長の木下紀之氏だ。躍進の裏側には "定番化" に重きを置いた商品開発があった。

 「かつては大量の新商品が発売され、週ごとに棚の8割近くが入れ替わっていた。新商品と前の週の商品がカニバリ (カニバリズム, 自社商品との競合) を起こし、販売効率が悪かった」 と、木下氏は振り返る。

そこで思い切って新商品の数を絞り、SKU (Stock keeping Unit = 商品の最小管理単位) を減らしていった。商品数が減れば、売るべき定番品が明確になり、カニバリも起こりにくい。「SKU を3割近く減らした一方、商品単価を1.5 ~ 2倍に引き上げて販売効率を高めた」 と木下氏。

新商品が通年で棚に置かれる "定番品" として定着すれば、安定的に売り上げを稼げる。その結果、思い切った商品を開発する余裕が生まれたというわけだ。木下氏は 「こうした好循環が、売り上げが増加した要因の1つ」 と見る。

2つの変革


ファミマは商品の定番化を狙う方針に変えました。

とはいえ、新しく開発した商品を定番化させることは簡単ではありません。それができないから、千三 (せんみつ) という言葉があるように、1000個の開発をしてヒットして生き残る商品は3個と言われるわけです。

ファミマは定番化の確率を高めるために、2つの変革を行ったとのことです。

 「コンビニのデザートは浮き沈みが激しく、年間に150種ほど発売される。翌年まで残る商品はごくわずか」 (木下氏) 。開発現場ではヒット率を上げるため、大きく2つの変革を行った。

1つ目は市場調査。専門店やリテール (小売り) にアンテナを張り、人気があるショップをいち早く察知し、トレンドに合わせた商品開発に力を入れた。「毎週金曜日は原則、市場調査の日にしている」 (木下氏) 。

この調査から生まれたヒット商品が、22年5月に発売した 「生カヌレケーキ」 。カヌレの専門店が増加し、世の中に "進化系カヌレ" という言葉が出始めていた。発売8日で100万個を販売し、22年9月初旬時点で500万個を突破した。

2つ目は、消費者意向調査。いわゆるモニターの強化だ。これまで行われていた試食調査の前に、メニューの 「意向調査」 を追加した。具材の種類やパッケージのデザインなどを確認する工程だ。

この段階で商品カップのモックアップまで作成する。「例えばフラッペの場合、味を文字だけで説明しても、商品を想像しにくい。売り場で購入するシーンをイメージしてもらうため、本物に近いモックを制作している」 (木下氏) 。意向調査に対する本気度がうかがえる。
ファミマの生カヌレケーキ: FASHION PRESS


学べること


では今回のファミマの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

結論から言えば、学びは 「外向き姿勢の商品開発」 です。

外向きには2つの意味があります。

✓ 外向きの意味合い
  • 参入市場の外
  • 社内ではなくお客さん

2つについて順番にご説明しますね。

参入市場の外


ファミマは、コンビニの商品、例えばコンビニスイーツの市場調査においてコンビニ他社だけではなく、もっと広くアンテナを張りました。

先ほどの引用した記事にあったように、専門店や小売にも広げ、人気のあるショップをいち早く察知するなどトレンドを掴むようにしています。

自分たちが参入しているカテゴリーやマーケットだけではなく、周辺領域にも目を向けているわけです。ここに 「外向き姿勢」 の1つ目の意味があります。

社内ではなくお客さん


2つ目の外向き姿勢の意味は、お客さんをしっかりと見ていることです。社内ではなく社外という外向き姿勢です。

これは持論ですが、マーケティングでの自分たちが求めている答え、すなわち 「顧客の真の理解への答え」 は、結局のところはお客さんが持っていると考えます。

逆に言えば、いくら社内で議論したり、確認、検討、研究をしても知りたい情報の粒度での 「答え」 は得られません。答えはお客さんの中にあり、自ら掘り起こして発見するのがマーケターの役割です。

マーケターが見出し商品開発の担当者、IT の会社であればエンジニアと共有し、会社全体で顧客理解の解像度を上げることが大事です。


まとめ


今回は、ファミマの商品開発の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 外向き姿勢の商品開発
  • 参入市場の外、参入しているカテゴリーやマーケットだけではなく周辺領域にも目を向けよう
  • 答えは社内ではなくお客さんの中にある。自ら掘り起こして発見するのがマーケターの役割
  • マーケターは見出し商品開発の担当者やエンジニアと共有することで、会社全体での顧客理解の解像度を上げよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。