投稿日 2022/12/14

気になる人とは 「7秒ビデオ通話」 からの 7seconds 。PMF とはどういう状態かを解説


今回のテーマは、商品やサービスをお客さんのニーズにどうやって結びつけるかです。

おもしろいと思った 「ビデオ通話の出会いサービス」 を取り上げ、商品開発やマーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 初対面の人と7秒でビデオ通話をする 「7seconds オンラインシェアハウス」 とは
  • サービス開始当初は5分の会話が、7秒になった経緯
  • お客さんのニーズにドンピシャでハマる PMF とは?

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

7seconds オンラインシェアハウス


ご紹介したいのは、出会いのサービス 「7seconds オンラインシェアハウス」 です (公式サイトはこちら) 。

出典: PR TIMES

7秒で終わるビデオ通話


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

情報サイト運営のリンクバルが6月に始めた独身者向けのコミュニティサイト 「7seconds オンラインシェアハウス」 が好調だ。一般的に恋人探しを目的とするサービスは1対1のやりとりが中心だが、複数人での会話から人柄を知り、相手を探せるのが特徴。

テーマにしたのはシェアハウスだ。20 ~ 30代の男女を中心に人気を集めており、すでに累計約7000人が利用している。

このサイトでは利用者は興味があるテーマのグループチャットに参加する。複数人のビデオ通話で会話した後、参加者の中で個別に話したい人を見つけた場合はリクエストを送る。

承認されれば1対1でやりとりできるようになるが、最初に通話できるのは7秒だけ。利用者が 「さらに話したい」 と感じた場合は、77秒、7分と通話時間を延長することができる。

もともとこのサイトは 「7秒でビデオ通話ができるサービスを作れないか」 というところから始まった。新型コロナウイルス禍で雑談などのコミュニケーションが減る中、「まずはメッセージではなく、相手の顔を見て会話ができるサービスにしたかった」 と開発を担当した石橋健輔ブランド戦略室長は振り返る。

もともとは5分だった


興味深いのは、サービスを始めた当初は7秒の会話ではなかったということです。

テストマーケティングでは、1対1で5分間のビデオ通話ができるサービスをやっていました。

実はコロナ禍以前に、5分間1対1のビデオ通話ができるというサービスを開発し、テストマーケティングをした経験があった。しかし、「初対面の相手との会話において、5分という時間は少し長かった」 という。そのため、「挨拶ができるくらいの時間」 として7秒に設定した。

コンセプト決定後、すぐにベータ版 (試用版) を公開したが、その結果 「初対面の人と1対1でビデオ通話をするのはハードルが高いとわかった」 。そこで、コンセプトを見直し、グループチャットを通じて相手の人柄や雰囲気などを知れるようにした。

プロダクトの改善の経緯を整理すると、

  • 1対1で5分のビデオ通話でテストマーケティングを実施
  • 5分は長いとわかり、7秒のビデオ通話 (1対1) に変更
  • まだハードルが高かった。まずグループチャットで複数人での会話をする。個別に話したい人にリクエストを送り、承認されれは1対1の7秒でのビデオ通話ができる


学べること


独身者向けのコミュニティサイト 「7seconds オンラインシェアハウス」 から学べるのは、商品・サービスをどうやってお客さんや市場の求めることに結びつけるかです。

専門用語を使って表現すれば、PMF という Product Market Fit です。

使ってもらって初めてわかること


7seconds では、 もともとは1対1で5分間のビデオ通話ができるサービスでした。

しかし実際に初対面の人たちに使ってもらったところ、5分は長いという声が出ました。挨拶ができるくらいの7秒に変えたものの、それでも1対1のビデオ通話のハードルが高いことがわかりました。

そこで、1対1の前に複数人での会話をしてもらい、個別に話したい相手へのリクエストが承認されれば7秒の1対1の会話という設定にしました。

5分でのビデオ通話からここまで行き着くには、多くの試行錯誤があったはずです。

プロダクトが響くとは (PMF とは) 


おそらくですが、5分のビデオ通話、その次の最初から1対1での会話ができるプロダクトとしていた時は、提供者側の実感として 「何かしっくりこない」 という感じだったのではないでしょうか。

プロダクトの作り手である自分たちがいけると思っても、期待するほどのユーザーからの反応が見られない状態です。自分の経験から言うと、こういう状況ではお客さんの求めることにドンピシャでハマってはいません。まだ何かしらの改善の余地があるということです。

一方で、お客さんに響くプロダクトになっている、つまり PMF ができている状況は違います。

適切な市場を見出していて、お客さんやユーザーの方から自ら使いたいと言ってくれる、向こうから進んでユーザー登録をしてくれたり、他の人に紹介までしてくれます。これがプロダクトがお客さんやマーケットにフィットしているという PMF の状態です。

イメージを言語化するなら、

  • PMF ができていない時: 重い荷物を背負いながら霧の中を山登りしていて、頂上が見えない状態
  • PMF ができている時: ゴンドラに乗り、下山の目的地まで何もしなくても運んでくれる状況

PMF か否かは、これくらいの違いがあります。


まとめ


今回は、独身者向けのコミュニティサイト 「7seconds オンラインシェアハウス」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ PMF とは
  • 適切な市場を選択できていて、商品やサービスがお客さんのニーズにドンピシャにハマっている状態が PMF (Product Market Fit) 
  • PMF が未達の時は、重い荷物を背負いながら霧の山を登っていて、頂上が見えない状態
  • PMF 達成時は、ゴンドラに乗り下山の目的地まで何もしなくても運んでくれる状況


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。