投稿日 2022/12/09

ヤクルト 1000 が大ヒット。新商品をヒットさせるお手本のストーリー

出典: ITmedia

今回のテーマは新商品をヒットさせるにはどうすればいいかです。

おもしろいと思った Yakult 1000 の事例を取り上げ、成功理由の分析からマーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 大ヒットの Yakult 1000
  • 発売前の不安
  • 新商品をヒットさせる方法 (スモールスタートからの市場創造) 

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

Yakult 1000


出典: ITmedia

ご紹介したいのは 「Yakult1000」 です。

1日に120万本を売り上げているとのことです (参考) 。

新しい市場創造


以下は日経新聞の記事からの引用です。

驚異的な売れ行きで品薄状態が続く 「Yakult (ヤクルト) 1000」 (宅配用) と 「Y1000」 (店頭用) は、ストレスを抱え睡眠時間が短い日本人の悩みにアプローチする新しい市場を作り出した。

 「ヤクルトといえば乳酸菌 シロタ株」 。こう連想する人は多いかもしれない。だが、「あのヤクルトで私の睡眠が変わるの!?」 という驚きは大きかった。多くの消費者が抱える悩みに応える新規性と期待感がヒットを生んだ。

発売前は市場が未成熟ゆえの不安


品薄状態が続くヤクルト 1000 ですが、発売前には不安があったとのことでした。

脳と腸がお互いに密接に影響を及ぼしあうことを 「脳腸相関」 と呼ぶ。ストレスを感じると腹痛が起き、便意をもよおすなどが分かりやすい脳腸相関の例だ。

ヤクルトの研究機関が脳腸相関に注目して研究を進めた結果、「乳酸菌 シロタ株」 がストレス緩和などの機能を果たすには、菌の数だけではなく菌の密度が重要ということが分かった。

 (中略) 

試行錯誤の結果、2019年10月に菌数が1000億個、菌の密度は1ミリリットルあたり10億個という Yakult1000 の発売にたどり着いた。

ただ、良い商品が必ず売れるとは限らない。ヤクルト本社業務部企画調査課の金安輝起課長は 「商品としてはエビデンスがあるので自信を持っていたが、市場はほとんどないようなものだった。本当に売れるのか、不安は常にあった」 と話す。

というのは、Yakult1000 を発売した19年当初、睡眠やストレスにアプローチする飲料の市場はまだ小さく、脳腸相関の考え方も消費者に理解されるかが不透明だったからだ。

ヤクルトレディにアプローチ


何をしたかと言うと、ヤクルトレディに白羽の矢を立てました。

そこで、「まずは限られた地域の宅配で、ヤクルトレディによる丁寧な説明が重要」 (金安氏) と判断し、まずはストレスを抱えやすいビジネスパーソンが多いとみられる関東1都6県で宅配の商品として展開することにした。効果を正しく伝え、価値を理解してもらうには対面での説明が不可欠だった。

 「ヤクルトレディにも実際に飲用してもらい、その感想や効果を直接説明してもらうようにした。SNS などネットの情報が過多になっている今だからこそ、顔を知っている信頼できる人からの説明は大きな力になった」 。

さらに、宅配をメーンにしながらも一部の百貨店や高級スーパーで販売し、消費者の間口を広げる工夫をした。店頭であっても担当者を置くなどして、丁寧な説明に力を入れた。

ここまでの整理


いったんのここまでの内容の整理をしておきましょう。

✓ 発売前の解決すべきだった問題
  • 脳腸相関に消費者は馴染みがない
  • 乳酸菌飲料で睡眠を改善という認識がない。市場がない

✓ 打ち手
  • 宅配地域は、最初はターゲットをビジネスパーソンが多い地域に絞る
  • ヤクルトレディにも飲んでもらう
  • 見込み客へは、ヤクルトレディから自身の感想や効果の話も交えて丁寧に説明してもらう
  • 宅配をメインにしつつ、一部の百貨店や高級スーパーで販売
  • ヤクルトレディや売場の担当者から対面で直接説明をする


学べること


ではヤクルト 1000 から学べることを掘り下げていきましょう。

インターナルマーケティング


ヤクルト 1000 の成功ストーリーから学べるのは 「インターナルマーケティングの重要性」 です。

インターナルマーケティングとは内側に向けた、つまり社内関係者を 「お客さん」 と見立てマーケティング活動をしていくことです。

ヤクルトの事例に当てはめれば、ヤクルトレディに向けて行なったことがインターナルマーケティングです。具体的には実際にヤクルト 1000 を飲んでもらい、自分自身への効果を体験してもらいました。

これによってヤクルトレディはリアルな実感を伴っての説明をお客さんにできるようになったわけです。

スモールスタート


もう1つ学べるのは 「新商品をスモールスタートで展開していったこと」 です。

最初は販路を広げず関東1都6県での宅配からでした。ストレスを抱えやすいビジネスパーソンが多いと見て、ターゲット顧客に設定しお客さんを絞ったわけです。

また、実店舗での販売も始めは限定しました。一部の百貨店や高級スーパーのみとし、売場に担当者を立て、ここでも商品の特徴や効果を直接説明するようにしたのです。

インターナルからエクスターナルへのマーケティング


以上のように初めは小さく始めて少しずつ市場をつくっていきました。

流れを整理すると次のようになります。

✓ インターナルからエクスターナルへのマーケティング
  • ヤクルトレディに実際に飲んでもらい体験してもらった (インターナルマーケティング) 
  • 宅配のターゲット地域は、ストレスを抱えやすいビジネスパーソンが多いであろう関東1都6県から
  • 実店舗では百貨店や高級スーパーの一部店舗のみとした
  • ヤクルトレディや売場の担当者から、商品の特徴や価値を対面で直接消費者に説明した

このようにスモールスタートでヤクルト 1000 を少しずつ浸透させていきました。

このアプローチは新商品を出したり、新しい市場をつくり出す時に一般化できる方法です。


まとめ


今回はヒット商品の 「Yakult1000」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ スモールスタートでの市場創造
  • インターナルマーケティングから社内関係者を 「お客さん」 と見立て、商品理解を深めてもらう (社内でのファンづくり) 
  • 最初はコアターゲット顧客に絞り訴求していく。販売チャネルも絞る
  • 商品の特徴や価値の説明を丁寧に行う
  • スモールスタートでインターナルからエクスターナルへマーケティングを展開していく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。