投稿日 2022/12/20

チュッパチャプスが V 字回復。ブランドの世界観のつくり方


今回のテーマは、ブランディングです。

おもしろいと思ったチュッパチャプスの事例を取り上げて、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • チュッパチャプスが V 字回復
  • かつての課題とマーケティング施策
  • 意思決定の仕組み化
  • ブランドメッセージの伝え方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

チュッパチャップス


こちらの記事を読みました。

 「チュッパチャプス」 驚異の V 字回復 - 10代男性の売り上げ約7倍に|日経クロストレンド

あめ菓子のチュッパチャプスが Z 世代に人気を集め、売上を伸ばしているとのことです。

コロナ禍で売上が一度は落ち込みましたが V 字回復をし、要因の1つが Z 世代施策という記事でした。V 字回復というのは、2021年はコロナ禍前より売上が約 6% 増加したことを指しています。

かつての課題感


チュッパチャプスは、以前には課題がありました。

チュッパチャプスは大きな課題を抱えていた。

それは、小学生にはよく食べられているものの、中高生、大学生と成長するにつれて喫食率が下がっていく傾向があることだ。

 「理由を知りたくてそうした若者にインタビューをしてみると、"子どもっぽい" "幼い" などネガティブなイメージがあり、『自分たちの商品ではない』と思われていることが分かった」 と小長井 (こながい) 氏 (引用者注: チュッパチャプス ブランドマネジャーの小長井雅彩氏) は話す。

Z 世代へのマーケティング施策


課題に対応するために展開されたのは、若年層である Z 世代へのマーケティング施策です。

注力したのが、Z 世代に影響を与えている人物やブランドから SNS を通じて発信する施策であり、その代表例が 9090 (ナインティナインティ) とのコラボだった。

その効果は絶大だった。若者からの支持が厚いアパレルやモデルと一緒に写り込むことによって、チュッパチャプスへの共感性が高まり、「自分たちの商品である」 と想起を変えることに成功。

中高生や大学生の間で、人前でなめるのが恥ずかしい行為ではなく、むしろかっこいいスタイルとして広まり、10代の売り上げを爆発的に増やす原動力となったのだ。

ブランドメッセージの徹底


マーケティング施策の成功の裏には、ルールの厳守があったとのことです。

様々な施策が見事に当たったチュッパチャプスだが、インフルエンサーやブランドとのコラボ、もしくはプロモーションでは、あるルールを厳守して取り組んでいる。それは、16年からチュッパチャプスがグローバルで設定しているブランドメッセージである 「FOREVER FUN (フォーエバーファン) 」 からずれていないかどうかだ。

 「特に気にしているのが、"ファニー (こっけいさ) " ではなく "ファン (楽しさ) " があること。この線引きはとても難しいが、指標となる内部資料もつくり、徹底している。例えば内部資料では、何がフォーエバーファンで、何がそうではないかを写真で示して感覚をつかみやすくし、広告代理店とも共有している」 と、小長井氏は話す。

 「日本でのウェブ CM などのクリエーティブも必ず本社のチェックを受ける。その際、必ず問われるのが『これは日本人的にフォーエバーファンなのか』ということ。そこで言葉に詰まるようでは承認は得られない」 (小長井氏) 

学べること


では、チュッパチャプスの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

意思決定の仕組み化


チュッパチャプスは、意思決定を仕組み化しています。

興味深いのは、自分たちが大切にする価値観である 「フォーエバーファン」 をブランドメッセージにしているだけではなく、実務での判断基準にもなっていることです。

先ほどの記事の引用内にあったように、「内部資料では、何がフォーエバーファンで、何がそうではないかを写真で示して感覚をつかみやすくし、広告代理店とも共有している」 と。

抽象化と具体化による基準化


チュッパチャプスでは、大切な価値観を 「フォーエバーファン」 と一言で言語化しています。

ただし抽象化することで、人によっては何がフォーエバーファンなのかの解釈が違ってきます。そこで社内で内部用の資料を作り、「フォーエバーファンとは具体的にどういうことなのか」 を言葉の説明や写真で示したわけです。

奇をてらったようなおもしろさではなく (Funny でなはく) 、楽しい (Fun) というフォーエバーファンの意味合い、自分たちがやるべきこと、そしてやるべきではないことの線引きが明確になるのです。

ブランドの世界観のつくり方


コンセプトや価値観のようなパッと言葉にしたり数字で表現しにくいことも、チュッパチャプスのように徹底すれば、メンバー間で認識を揃えることができます。

色々な施策アイデアを考え、企画、実行するときの判断のよりどころになるわけです。

以上のように、チュッパチャプスでは共通する皆で大切にしたい価値観 「フォーエバーファン」 を意思決定に入れています。

価値観やブランドメッセージはただ掲げるだけでは浸透しません。判断のよりどころにするなど、日々の実務で活用することで、自分たちのやることに整合性が生まれます。

自ら体現し続けることで商品に魂のように吹き込まれ、お客さんへのコミュニケーションにも反映され、ブランドメッセージとしてお客さんに伝わっていくのです。


まとめ


今回はチュッパチャプスを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ ブランドの世界観のつくり方
  • コンセプトや価値観を言語化し、視覚的にも具体化すればメンバー間で認識が揃う
  • アイデアや企画、実行への意思決定などの日々の実務で活用することで、自分たちのやることに整合性が生まれる
  • 自ら体現し続けることで商品に吹き込まれ、コミュニケーションにも入り、ブランドメッセージがお客さんに伝わっていく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。