投稿日 2022/12/26

自宅の鏡がパーソナルトレーナーに。買い手視点で 「選ばれる状況」 をつくるのがマーケティング

出典: サイト

今回は、買い手の文脈に合ったマーケティングが大事という話です。

おもしろいと思ったスマートミラーを取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 自宅の鏡がフィットネストレーナーになるスマートミラー
  • 売り手と買い手の 「見ている景色」 の違い
  • 選ばれる状況をつくろう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ミラーフィット


ご紹介したいのは、自宅の鏡でフィットネスができるようになるスマートミラーです。

名前は 「ミラーフィット」 といいます (公式サイトはこちら) 。

出典: サイト

自宅の鏡がフィットネストレーナーに


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

ジムに通い始めたが、なかなか継続できない。そんな悩みを持つ人にも続けやすいと人気を集めているのが鏡形の健康器具だ。エクササイズの提案機能などがあり、「自宅で手軽にパーソナルトレーニングを受けられるよう」 と好評だ。

縦145センチメートル、横51センチメートル、厚さ3センチメートルの薄型の鏡。一見すると普通の鏡にしか見えないが、電源を入れてネットに接続すると健康器具に様変わりする。2020年設立のミラーフィット (東京・渋谷) が企画・開発するスマートミラー 「ミラーフィット」 だ。

できること


ミラーフィットではどんなトレーニングができるかと言うと、

利用者が鏡に向かって立つと、鏡に内蔵された 3D 計測機能で全身を撮影する。15秒ほどで測定が完了すると、その日の胸囲やウエスト、二の腕などの数値が表示される。利用者が痩せたい部位を選ぶと、目的に応じたエクササイズが自動的に提案される仕組みだ。

 「ジムに通っても何をやればよいかわからない」 (30代女性) と悩む人は多いなか、鏡がパーソナルトレーナーのような役割を担う。

現在、ミラーフィットのコンテンツは400種類ほどあり、ヨガやストレッチなどが人気という。エアロビクスやバレエも用意しており、好きな時間に楽しんでもらう。決まった時間に行われるエクササイズのレッスンもあり、鏡越しに多くの参加者とともにジャズダンスで汗を流す。

開発背景


ミラーフィットの開発背景も続けて見ていきましょう。

ミラーフィットを開発したのは黄皓 (こうこう) 社長の実体験が影響している。

大手商社に勤めていた際に体重が増え、パーソナルジムに通った。効果はあったものの高額と感じ、自身で安価なパーソナルジムの運営を始めた。

一定の需要があり人気となったが、料金が安くても続かずに辞めていく会員は少なくなかった。「どうすれば解約されない健康サービスを届けられるか」 。試行錯誤するなかで生まれたのが鏡を使った商品だった。

学べること


では、ミラーフィットから学べることを掘り下げていきます。

すでにあるものに着目


ミラーフィットの特徴は、フィットネストレーニングを続けやすいように、自宅にある鏡にサービス提供の機会を見出したことです。

部屋に置いてあるスタンドミラーは、全世帯にあるほどではないものの、一般的には普通にあるものです。ミラーフィットは、お客さんの日常の中に入っていくために、すでにそこにあるもの (今回の場合は置き鏡) に着目しました。

自社プロダクトに置き換えてもらうことで、サービスを使ってもらうことをミラーフィットは狙っています。

天動説と地動説


ミラーフィットの話から教訓として残しておきたいのは、全体像を広く捉える重要性です。

よく起こりがちなのは、作り手や売り手は、自社の商品・サービスを全てだと思ってしまうことです。

売り手が見ている景色は、自社商品が中心に回っている天動説のようなものです。地球が中心にあり、太陽が公転するという自分中心の視点です。

一方の買い手や使う人の視点は異なります。

同じたとえを続けると地動説で、自社商品は決して中心にあるわけではなく、お客さんという太陽のまわりにある1つの惑星にすぎません。多くの商品やサービスがある中で、自社の商品はお客さんにとっては 「One of them」 なのです。

選ばれる状況をつくる


ミラーフィットは、部屋にあるスタンドミラーを置き換えることで、パーソナルトレーニングを続けられるという価値を提供しています。

トレーナーのいるジムに新たに通ったり、トレーニング器具を家の中に増やすのではなく、普段は鏡として使い、トレーニング時のみ電源を入れてもらうことでうまくお客さんの日常生活の中に入り込んでいます。

お客さんの生活シーンにおいて全体像を広く見て、どこに共生するかを見出してのサービス提供になっています。このように、お客さんからの 「選ばれる状況」 をいかにつくるかがマーケティングでは大事です。


まとめ


今回はパーソナルトレーナーになるミラーフィットを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 選ばれる状況をつくる
  • 作り手や売り手は、自社の商品・サービスを全てだと思ってしまう。しかし、自社商品はお客さんにとっては 「One of them」 にすぎない
  • 多くの選択肢がある中から、お客さんから 「自分たちが選ばれる状況」 をいかにつくるかが大事
  • お客さんの生活シーンの中で全体像を広く捉え、どこに共生するかを考えてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。