投稿日 2022/12/27

ミツカンが 「異色な納豆たれ」 を連発できる秘密。強みを生むロジックを理解しておこう


今回のテーマは、競争優位のつくり方です。

おもしろいと思った納豆の事例を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • ミツカン納豆の異色のタレがすごい
  • 次々に新しいタレを出せる理由
  • 競争優位をつくる方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ミツカン納豆


こちらの記事を読みました。

ミツカン 「異色な納豆たれ」 連発のワケ - 焼肉、バター醤油風味……|日経クロストレンド

異色なタレを連発


以下は記事からの引用です。

ミツカンが2022年9月1日から、「味ぽん」 や 「バターしょうゆ」 風味のたれをつけた納豆を発売。

同社は他にも 「焼肉」 「たまご醤油」 「うな重」 など、異色のたれの納豆を多数展開してきた。一見、邪道にも思える "変わり種フレーバー" は売れているのか。


色々なタレがある効果


バラエティに富んだ味がたくさんあることで、こんな効果があるようです。

納豆好きからしたら、購入機会が多いゆえに、ワンパターンの味だとマンネリを感じることは多い。そんな消費者に気分転換となる味の選択肢を提案することは、自社商品の購入機会を増やすだけでなく、ブランドから離れないようにする効果もある。

また、フレーバー系納豆の強みは、納豆が苦手な人に受け入れられているところだ。例えば、焼肉やバターしょうゆではたれを濃く甘めに、黒梅酢では酸味でさっぱりさせている。納豆特有の発酵したにおいが抑えられることで、納豆に抵抗感のある消費者を取り込めるのだ。

新しいタレを次々に出せる理由


記事で興味深かったのは、 ミツカンが異色なタレを出し続けられる理由でした。

ミツカンがこうした変わり種のフレーバーを定期的に展開できるのは、大きく3つの理由がある。

1つ目は、調味料メーカーとしての知見だ。ミツカンといえば、味ぽんやごまだれ、追いがつおつゆなど、数多くの調味料でヒット商品を世に出してきた。こうした自社の商品と納豆を掛け合わせることで、常に新しいものを追求している。

2つ目は、部署を異動するサイクルが速いことだ。ミツカンでは、例えば去年まで鍋つゆを開発していた担当者が、今年に入って納豆の企画担当に異動するなど、様々な商品カテゴリーを経験する社員も少なくない。ミツカンの持つ商材が、納豆に生かされやすい組織体制になっているのだ。

3つ目は、攻めた企画も受け入れられやすいことだ。「ミツカンは創業以来、変革と挑戦を繰り返しており、ユーザーに受け入れられる見込みがあれば、ユニークな企画でも商品化されやすい。常に新しいフレーバー系納豆のアイデアはたくさん出ている」 と梶原氏 (引用者注: ミツカン マーケティング本部 食品企画部 食品企画1課 梶原洋平氏) 。

商品化には至らなかったものの、過去にはデミグラスソース風、お好み焼き風、バーベキュー味など、攻めた商品ながら市場調査の段階まで企画を進めていたものも多い。

ミツカンが色々なタレを出せる理由を整理すると、

✓ 新しいタレを次々に出せる理由
  • 調味料メーカーの技術や知見 [技術]
  • 異動サイクルが早く、様々な経験をした社員がいる [仕組み]
  • 攻めた企画が受け入れられやすい [社風]


学べること


では、ミツカン納豆から学べることを掘り下げていきましょう。

競争優位の源泉


ミツカンの納豆が消費者、小売店からも選ばれる理由は色々な味で楽しめることです。

これは他社にはできない提供価値で、お客さんから選ばれる理由という 「強み (比較優位) 」 につながっています。

先ほど見た、ミツカンが異色のタレを出し続けられる3つの理由 (技術, 仕組み, 社風) は、ミツカンの納豆市場における 「競争優位の源泉」 になっています。他社が持っていない知見や能力、人事制度などの会社としての仕組み、さらには挑戦を歓迎する社風があることで、一発屋ではなく持続可能な優位性をつくれているのです。

競争優位をつくるため問い


ミツカンからの学びを一般化すると、次の3つの問いかけを自分たちにすることで、強みや競争優位を築くヒント・気づきが得られます。

[問い 1] 自分たちの強みは何か
  • 他にはない自分たちならではの選ばれる理由
  • これこそが強み。比較優位

[問い 2] その強みはなぜ実現できているのか
  • 強みの源泉は何か
  • 何が持てている・できているから強みにつながっているか

[問い 3] これからも強みであり続けられるか
  • 持続可能な強みか
  • 強みの源泉は中長期でそうであり続けられるか

これらの問いに一度答えて終わりとするのではなく、ビジネスの世界にいる以上は継続して向き合うことが大事です。


まとめ


今回はミツカン納豆を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

✓ 競争優位をつくるための問い
  • 自分たちの強み (お客さんから選ばれる理由) は何か
  • その強みはなぜ実現できているのか。強みの源泉は何か
  • 強みの源泉は中長期で持続可能なものか。これからも強みであり続けられるか


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。