投稿日 2023/04/12

スーパーのセルフ型レジの光と影。あらかじめの撤退シナリオの想定と準備を

#マーケティング #戦略 #シナリオ

出典: 日経

今回のテーマは 「What if」 という複数プランを持っておくことの重要性です。

あらかじめの撤退シナリオの想定と準備をしておこうという話です。

✓ わかること
  • スーパーでのセルフ型レジ導入の光と影
  • やめることの難しさ
  • What if 思考
  • 撤退シナリオの想定と準備をしておこう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

小売のデジタル化の光と影


スーパーでのセルフ型レジ導入について、日本とアメリカでの3つのニュース記事をご紹介します。

まずは日本の事例からです。

カート型セルフレジが高齢者から好評


過疎化が進む秋田県で地場の食品スーパーが表示を見やすいカート型セルフレジを導入しました。

カートで合計金額をその場で確認でき、商品や金額の表示が大きく見やすいところが高齢者に評価されているとのことです。

 「カート型レジ」 を試験導入したのは秋田県南で食品スーパー5店を運営するバザール (横手市) 。POS (販売時点情報管理) システム大手の東芝テックによると、北東北の地元スーパーで初めてで、2022年10月に大仙市の大曲 (おおまがり) 店にカート10台と精算機2台を設置した。

バザールは特売日などレジ前の混雑緩和につなげる狙いで、デジタル端末の操作に慣れた30 ~ 50代の利用を想定した。ただ同社の飯塚拓也常務は 「平日を中心に想定以上に60 ~ 70代の利用者が多くなっているようだ」 と話す。

買い物客は会員登録して利用する。2カ月で会員数は1000人ほどに上った。カート上のタブレット端末に接続するスキャナーで買いたい商品のバーコードを読み込むと、端末に商品名や個数、価格が表示される。

合計金額をその場で確認でき、表示が大きく見やすい点が高齢者に評価されている。「一度使えば仕組みがわかり、買い物を楽しみに来店するお年寄りが増えた」 (飯塚常務) 

アメリカではスマホレジが相次いで中止や縮小


一方の別の記事です。

アメリカではスマホレジにより商品の万引きが増えてしまい、スマホを使ったセルフレジが中止や縮小をしているとのことです。

2022年9月に大手スーパーマーケットのウェグマンズがアプリを使ったスマホレジの使用を中止した。パンデミックがはじまった2020年に実験的に開始したものなので、わずか2年で終了したことになる。

同社の広報はステートメントで、不明ロス増加によって継続的な使用が難しくなったと説明、万引きが増えてしまい許容範囲を超えたのが理由である。

ウォルマートは10年前の2013年に40店舗から実験を開始し200店舗まで増やしたが、2014年に中止、その後傘下のサムズクラブとウォルマート+ の会員のみと、対象を制限して使用を復活させている。

理由はウェグマンズと同じく万引きである。ウォルマート担当者は、抜き打ちチェックをしたところカートの中の商品の半分以上がスキャンされていない例があった、とコメントしていた。

 (中略) 

ウォルマートの CEO は同時期にマスコミのインタビューに対して 「もし店頭犯罪の影響が長引くと場所によっては値上げや店舗閉鎖につながるだろう」 と答えている。

両社に限らず店頭犯罪の増加に言及する大手小売企業は少なくない。

日本でも万引きが発生


アメリカだけではなく、セルフレジでの万引きは日本でも発生している問題です。

スーパーマーケットが 「セルフレジ」 を悪用した万引き被害に頭を悩ませている。

バーコードの読み取りや精算を客が自ら行うセルフレジは、人件費削減への期待などから普及が進むが、万引き犯に 「人の目」 の少なさにつけこまれた格好だ。故意の万引きと悪意のない精算ミスを見分けづらい難点もある。

店側は、レジに客を撮影するカメラを取り付けるなど対策を急ぐ。

学べること


小売のセルフ型レジが消費者に利便性をもたらしている一方で、万引きへの対策が難しい状況もあるという話でした。

ではセルフ型レジ導入の光と影から学べることを掘り下げていきましょう。

やめる難しさ


学びを一般化すると、何か新しい取り組みをする時にはあらかじめ撤退シナリオを持っておく重要性です。どうなったらやめるのかです。

何かを始めると、特に大規模なプロジェクトほど中止の判断を下しやめることは難しいです。一度動き出した組織はなかなか止まらないからです。

撤退シナリオの想定、実行プランの準備


新しい取り組みやチャレンジはいつもうまくいくとは限りません。挑戦の度合いが大きいほど失敗する可能性も高くなります。

だからこそ大事なのは悲観的に失敗シナリオを事前に描いておくことです。どうなったら失敗するのかという失敗への因果関係、うまくいかないストーリーをつくっておき、それと併せて撤退の実行プランも用意しておくといいでしょう。

やる前から失敗のことを考えたり言うのは縁起でもないと周りから思われるかもしれません。しかし戦略をつくる立場の人やプロジェクトマネジメントを担う人には大事なやることの1つです。

 「もしそうなったら、こうする」 という What if 思考です。プランは1つだけではなく必ず代替案のプラン B をつくり、できれば楽観的なシナリオ、妥当なシナリオ、そして悲観シナリオと複数案を持っておくといいです。


まとめ


今回は小売のセルフ型レジ導入の光と影の話から、戦略に学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ あらかじめ代替案を持っておく
  • 新しいチャレンジはいつもうまくいくとは限らない。挑戦の度合いが大きいほど失敗する可能性も高い
  • 新しい取り組みを始める際には、あらかじめ撤退シナリオを持っておくことが重要
  • 楽観的なシナリオ、妥当なシナリオ、悲観シナリオの複数案を持つことで What if 思考が可能になり、より効果的な戦略や計画が立てられる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。