投稿日 2023/04/11

5分で鍛えるチョコザップ成功の秘訣はストーリー。違いをつなげる戦略の構築法

#マーケティング #戦略 #ストーリー


今回のテーマは 「戦略ストーリーをどうつくるか」 です。

コンビニジムの 「チョコザップ」 を取り上げ、違いがストーリーでつながっている戦略について見ていきましょう。

✓ わかること
  • ライザップのコンビニジム 「チョコザップ」 
  • 大型ジムと棲み分けるコンセプト
  • 違いをつくってつなげるのが差異化
  • 戦略ストーリーのつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

チョコザップ



チョコザップはライザップが展開するコンビニジムです。

間口の狭い店内に、トレーニングマシン約20台がひしめく。スポーツジム大手、ライザップ (東京) の小規模ジム 「chocoZAP (チョコザップ) 」 を平日の午前中に訪れると、スーツの上着だけを脱ぎ、筋力トレーニングに励む会社員らの姿があった。

チョコザップはスタッフがいない完全無人営業。運動後に汗を流すシャワーもない。一見、不便なようだが、運動用のシューズやウエアが不要で、手ぶらで利用できる気軽さがある。

月額2980円 (税込3278円) で24時間365日通い放題の初心者向けのトレーニングジムです。1日5分の 「ちょいトレ習慣」 を打ち出しています。

利用者のコメント


先ほど引用した記事にはチョコザップを利用している人のコメントが紹介されていました。

革靴、ネクタイ姿で体を鍛えていた男性会社員 (41) は、「靴を履き替えずに筋トレができるので、出勤前や仕事帰りに週に2、3回来ています」 。ビジネスバッグはマシンの傍らに置いていた。

手ぶらで来店した別の男性会社員 (36) は、「会費が安いので気軽に来ています」 と、慣れた様子で数種類のマシンを使っていた。

総合型ジムと一線を画すコンセプト


チョコザップはコンセプトがわかりやすいです。

ライザップ執行役員の村橋和樹さんによると、チョコザップは 「来店して5秒で開始、5分で終える、がコンセプト」 という。

令和3年に4店舗で始め、4年11月に200店を突破。会員数は3年末に約400人だったが、4年11月には10万人を超えた。村橋さんは 「時間価値を重視する今の世相に、隙間時間を効率よく使って鍛えるというコンセプトが合致したのだろう」 と見る。

もう少し記事から続けます。

総合型ジムは、施設が広く、シャワー、スタジオ、プールなど設備が豊富。インストラクターが指導する運動プログラムも充実しており、筋トレに特化するコンビニジムよりも利用の幅は広い。

そのため利用料にも違いが見られ、都市部の総合型ジムは月額1万円以上の店舗が目立つが、コンビニジムは3千円台から8千円台とリーズナブルだ。

日本フィットネス産業協会の吉田正昭専務理事は、「コンビニジムは一人で隙間時間にトレーニングしたいサラリーマンが主なターゲット。トレーナーや利用者とのコミュニケーションを重視し、シニアが中心の総合型ジムとは客層が異なる」 と説明する。

前半のまとめ


では一度ここまでの内容をまとめます。

  • チョコザップはライザップが展開する無人のコンビニジムで、手ぶらで利用できる気軽さと低価格が魅力
  • コンセプトは 「来店して5秒で開始、5分で終える」 。時間価値を重視する現代のニーズに合致し会員数が増加している
  • 総合型ジムと比較してコンビニジムは設備がシンプルで利用料がリーズナブル。主なターゲット層は隙間時間にトレーニングしたいサラリーマンで、総合型ジムのそれとは客層が異なる


戦略ストーリーのつくり方


それではチョコザップから学べることを掘り下げていきましょう。

学べるのは戦略ストーリーのつくり方です。

ターゲット顧客のニーズと提供価値の整合性


チョコザップを俯瞰するとターゲット顧客、お客さんのニーズ、サービスのコンセプト、提供している中身、お客さんが得ている価値がきれいにつながっています。

  • ターゲット顧客の心理は運動はしたいがジムに通って本格的にやるほどではない。そこまでは面倒
       ↓ そこで…
  • 来店して5秒で開始でき、5分で終えるジム
       ↓ 具体的な特徴は…
  • トレーニングマシン以外の設備を極力削る
  • スタッフやトレーナーがいない完全無人営業
  • 運動後に汗を流すシャワーはない
       ↓ つまり価値は…
  • お客さんは手ぶらで行け、サクッとやってそのまま帰る手軽さと利便性

 「ないこと」 の価値


専用のトレーナーはいなくシャワーやプールといった設備もなくしているジムは、総合型ジムを基準にすれば不足していることばかりです。「そんなのでジムとして成立するのか」 と思えるレベルでしょう。

ただしこの見方は 「充実したジムサービス」 を 「本格的にトレーニングしたいという人」 に向けて提供したい立場から見た捉え方です。

一方のチョコサップが狙っている隙間時間に5分でサクッとトレーニングをしたい、月に数千円程度なら払ってもいいと思うトレーニングライトユーザーには、むしろシンプルなほうがうれしいという価値になっているわけです。

違いをつくって、つなげる


学びを一般化すると、他との差異化からお客さんへの価値を提供するためのポイントは 「違いをつくってつなげること」 にあります。

両方が大事で、違いをつくり、1つ1つの要素がストーリーとしてつながっているからこそ戦略がストーリーとしてできあがるのです。

✓ 違いをつくる、つなげる
  • ターゲット顧客
  • お客さんのニーズ。背後にある課題感、望み、悩み
  • 問題を解決する商品やサービス。ソリューションとしての仕組み
  • お客さんへの提供価値
  • 価値提供の対価としての収益モデル

誰の問題に対してどう解決し、提供する価値の対価としてどのように収益化するかです。

コンビニジムの 「チョコザップ」 は5つの要素がストーリーとしてつながっています。

視野を広げるとチョコザップは布石の役割も果たします。チョコザップでトレーニング初心者に価値を提供し、もっと本格的にトレーニングをしたい人にはライザップというもともとのサービスにつなげるという流れです。


まとめ


今回はコンビニジムと言われるチョコザップを取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 戦略ストーリーのつくり方
  • 戦略ストーリーのつくり方は、ターゲット顧客のニーズと提供価値の整合性を重視し、違いをつくってつなげる
  • 5つの要素 (ターゲット顧客, お客さんのニーズ, 問題を解決する商品・サービス, 提供価値, 収益モデル)がストーリーとしてつながることで戦略が完成する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。