投稿日 2023/04/07

女性マーケターに学ぶ。マーケティング近視眼にならず、高い次元で存在意義を見出そう

#マーケティング #マーケティング近視眼 #存在意義


今回のテーマは 「事業や商品の存在意義をどう捉えるのか」 です。

マーケティング近視眼にならず、高い次元で存在意義を見出そうという話です。

✓ わかること
  • 2人の女性マーケターのビールの捉え方
  • 鉄道業界を衰退させたマーケティング近視眼
  • 3人のレンガ職人の話
  • マーケティング近視眼にならず、高い次元で存在意義を見出そう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

女性マーケターのビールの捉え方


2023年1月9日の 日経 MJ の一面は女性マーケターや社長を特集する記事でした。

キリンビールでブランドマネージャーを務める中村早織さんは次のように語っていました。

 「私はビールは人と人をつないでいくものだと思っている。それがコロナ禍によりなくなってしまった。まだコロナ禍ではあるが、少し生活も落ち着いた今だからこそ、一番搾りができることをやろうと決めて、今までにはない広告のフレームで CM を制作した」 

もう1人の女性マーケターであるアサヒビールでスマドリ (アルコールを飲む人も飲まない人も楽しめるドリンク体験の提案) を推進している津田真里さんも、同じことを言っています。

 「お酒の本当のベネフィットは酔っぱらうことではなくて、人と人をつなぐとか、ストレスを解消するとか、人々を楽しく幸せにすることと思う。ところが、やはりお酒が体質的に受け付けなかったり、お酒の席で嫌な思いをされた方がたくさんいらっしゃることは事実だ」 

マーケティング近視眼


お2人のビールの捉え方からつながるのはセオドア・レビットの 「マーケティング近視眼」 です。マーケティング近視眼は1960年にセオドア・レビットが提唱した概念です。

マーケティング近視眼とは 「事業定義の範囲が商品の販売のみで、お客さんにとっての価値を考えない状態」 です。

マーケティング近視眼の例で出てくるのが鉄道会社なのですが、昔はアメリカでの人や物の移動手段には鉄道が使われていました。しかしその後は自動車や航空機が発達し、鉄道に取って代わっていきました。

この間、鉄道会社はあくまで鉄道という手段にこだわり、お客さんの移動ニーズを捉えられなくなりました。後発の会社が自動車での輸送会社や飛行機での航空会社として成長し、一方の鉄道会社は衰退していったのです。

鉄道会社は自社の事業定義を 「鉄道事業」 と捉え続けました。もし 「総合的な輸送事業」 と存在意義を設定していたら、鉄道会社は違う未来を築いたかもしれません。

この鉄道会社の話が 「マーケティング近視眼」 の説明として用いられ、セオドア・レビットは 「顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまった」 と指摘しています。

鉄道会社は自社の事業を、輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために、顧客をほかへ追いやってしまったのである。事業の定義を誤った理由は、輸送を目的とせず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ。

because they assumed themselves to be in the railroad business rather than in the transportation business. The reason they defined their industry incorrectly was that they were railroad oriented instead of transportation oriented; they were product oriented instead of customer oriented.
Marketing Myopia, HBR, July-August 1960

高い次元での存在意義


キリンビールとアサヒビールの2人のビールの捉え方、マーケティング近視眼からの示唆は商品や事業に対する視座をどこに置くかです。

自社商品や事業は何のために存在するのか、存在意義を体現するために自分たちは何をやるかでつながるのが、イソップ寓話の3人のレンガ職人です。

3人のレンガ職人


3人のレンガ職人とは次のような話です。

ある時に旅人がレンガを積む仕事をしていた3人に 「ここで何をしているのですか」 と尋ねました。

答えは三者三様でした。1人目のレンガ職人は 「見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろう」 と答えました。

2人目の答えは 「お金を稼いで家族を養うためにレンガで壁を作っている」 、そして3人目のレンガ職人が旅人に言ったのは 「歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ」 でした。

3人のレンガ職人の捉え方は今回の話に通じます。やっている作業は一見すると同じで自分の捉え方次第で意味合いは変わるんですよね。

視座・視野・視点


セオドア・レビットのマーケティング近視眼も合わせると、考えさせられたのは高い次元で存在意義を捉える重要性です。

1つのものごとでも見る立ち位置や立場からの視座の違い、どこまで広く見るかの視野、どういったところに目をつけるかの視点。視座・視野・視点の違いで捉え方は異なります。

マーケターにとって大事なのは、お客さんや世の中にとっての自分たちの存在意義は何かを高い次元から見つめ直し、お客さんの立場で価値を提供することです。


まとめ


今回は 「高い次元から存在意義を見出そう」 という話でした。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ マーケティング近視眼にならないために
  • マーケティング近視眼とは事業定義が商品の販売に限定され、お客さんにとっての価値を考慮せず視野が狭い状態。かつてのアメリカの鉄道会社が製品中心の考え方で顧客ニーズを見落とした例が挙げられる
  • マーケターにとって重要なのはお客さんや社会に対する自社の存在意義を高い次元から捉え、お客さん目線で価値を提供すること
  • 視座、視野、視点の違いで捉え方は変える


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。