投稿日 2023/04/03

おくすりパクッとねるねる。イノベーションを起こす方法

#マーケティング #イノベーション #利用シーン

出典: iZa

今回のテーマはイノベーションです。

おもしろいと思った駄菓子の派生商品から、イノベーションを起こす方法を掘り下げます。

✓ わかること
  • 子どもが苦い薬を飲めるようになる 「おくすりパクッとねるねる」 
  • 開発のきっかけは想定外の使い方から
  • 辺境にあるイノベーションの種
  • イノベーションを起こす方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

おくすりパクッとねるねる


子どもに人気のお菓子に 「ねるねるねるね」 があります。1986年から売られているロングセラーの駄菓子です。

出典: クラシエ

最初は粉末になっていて、水を入れて練ると色が変わってふわふわとふくらむのが特徴です。子どもが自分の手でお菓子を作って食べられます。

今回ご紹介したいのは、ねるねるねるねから派生した 「おくすりパクッとねるねる」 です。

子どもが苦い薬を飲みやすくする


出典: iZa

おくすりパクッとねるねるは、子どもが粉末の薬を飲みやすくするようにクラシエフーズが開発した商品です。

おくすりパクッとねるねるは、楽しく、菓子のような感覚で服薬補助ができるねるねるねるねだ。作ったねるねるねるねに薬を混ぜたり、包んだりして食べると苦味が解消されて薬が飲みやすくなるという。

アレルギー物質不使用 (アレルギー表示義務・推奨の28品目不使用) で、薬の効果を阻害しない品質設計を実現。粉末の薬での使用を推奨しており、通常の商品よりもより食べやすく、使いやすい仕様になっているという。1回使い切り、6回小分け包装で、メロンソーダ味とイチゴ味の2種類が各3袋入っている。


開発のきっかけ


興味深いのは 「おくすりパクッとねるねる」 の開発背景です。

お医者さんからの 「子どもに薬を飲ませる際にねるねるねるねを使用している」 という声がきっかけでした。

昨今 SNS 上では 「薬を飲むときにねるねるねるねに混ぜて飲む」 という方法が話題を集めている。また、実際に医師からも 「子どもに薬を飲ませる際にねるねるねるねを使用している」 という声があり、新たに 「薬の服用専用」 のねるねるねるねを開発したという。
出典: Twitter

クラシエフーズは子どもが苦手な薬の服用を笑顔で前向きにできないかと考え、知育菓子の持つ楽しさも取り入れて開発を進めたとのことです。小さな子どもを持つ親の悩みを解決し少しでも役に立ちたいとの想いからでした。


学べること


では今回の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

想定外の使い方から


注目したいのは売り手にとって想定外の使い方から新しい商品が生まれたことです。

まさか自分たちの駄菓子 「ねるねるねるね」 が子どもが薬を飲む補助品として使われ、医師もそのような方法を患者さんに伝えていたとは思っていなかったわけです。

一般化して捉えるとエクストリームユーザーという極端な人・尖った使い方をしている人のやり方をビジネス機会に変えました。

辺境にあるイノベーションの種


少し大げさかもしれませんが、お菓子の 「ねるねるねるね」 を薬用の 「おくすりパクッとねるねる」 にしたことはイノベーションです。

今回の事例はイノベーションを起こす方法に示唆があります。

イノベーションは 「辺境の地」 で生まれます。

辺境の地とは中央や本流ではなく会社や業界、世の中の隅っこです。多くの人が関心を持たず気づいてすらいない世界で、一部のマニアとも言えるような人たちだけが人知れず熱狂的にやっていることがイノベーションの種になります。

これを 「ねるねるねるね」 に当てはめれば、本流は子どもが自分で作って楽しめるお菓子でした。一方の辺境の地で起こっていたのは、苦味のある薬を子どもが飲みやすくする服用の補助品としての使い方です。

イノベーションを起こす方法


駄菓子の 「ねるねるねるね」 を薬の服用に使うのは 「辺境の事象」 です。

異端として見逃さず、むしろ自分たちが知らなかったユーザーニーズと捉え積極的に取り入れて、薬の服用専用の商品を開発しマーケティングを展開しているのが 「おくすりパクッとねるねる」 です。

イノベーションになる従来とは非連続な大きな変化は本流ではない辺境で密かに兆しが生まれます。辺境の事象を発見した時に 「ふーん」 とか 「そういうこともあるのか」 程度で終わらせず、意味合いを見出し本質を捉え、本流に変えていくことでイノベーションが起こるのです。

辺境の具体を抽象化し、ビジネス機会として横展開し具体化することでイノベーションが生まれます。



まとめ


今回は薬を飲みやすくする 「おくすりパクッとねるねる」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ イノベーションを起こす方法
  • イノベーションは 「辺境の地」 で生まれる。多くの人が関心を持たず気づいてすらいないが、一部のマニアな人たちだけが人知れず熱狂的にやっていることから
  • 辺境の具体の意味合いを抽象化し、ビジネス機会として横展開し具体化することでイノベーションが生まれる
  • 異端として見逃さず、むしろ新しいニーズと捉え積極的に取り入れてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。