投稿日 2023/04/23

米国でハイチュウが爆売れ。全員でパスをつなぎお客さんが買える状況をつくるテクニック

#マーケティング #顧客接点 #営業

出典: MORINAGA

森永製菓のお菓子 「ハイチュウ」 がアメリカで爆発的な人気を獲得するまでに、どのような試練とチャレンジがあったのでしょうか?

この記事ではハイチュウがアメリカで成功を収めるまでの道のりと、その過程で学べるマーケティングの重要ポイントについて深掘りしていきます。広告や SNS 施策だけではなく、小売や営業活動の重要性にフォーカスします。

学びのテーマを 「お客さんが自社商品を買える状況をつくることの大事さ」 として、一緒に掘り下げていきましょう。

✓ わかること
  • 鳴かず飛ばずだった7年間を経て、ハイチュウがアメリカで爆売れ
  • 小売で自社商品が買える状況をつくる
  • 購入接点を持つ重要性

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

HI-CHEW


出典: MORINAGA

アメリカ事業のエース


アメリカでは HI-CHEW (ハイチュウ) は森永製菓のエース的な存在です。

海外で 「HI-CHEW (ハイチュウ) 」 というブランドで展開されているハイチュウは、森永製菓の重点領域である米国事業の絶対的エースだ。

同社の2023年3月期決算説明会資料によると、ハイチュウの21年度の売上高は9200万ドル、日本円に換算すると約105億円を突破し、営業利益も過去最高の14億円を達成した。

鳴かず飛ばずだった7年間


今でこそハイチュウはアメリカ事業の絶対的エースという存在ですが、かつては違いました。7年も鳴かず飛ばずだったとのことです。

日本とアメリカの商習慣の違いから 「地元のスーパーなど小売へのハイチュウ導入そのものに一苦労した」 と担当者は当時を振り返っています。

全国規模のスーパーを狙うためには、商品採用の決定権を持つバイヤーを説得する "何か" が必要だった。森永製菓の担当者たちは、バイヤーへの説得材料を集めようと、地元スーパーのアジアコーナーで実績を上げたり、地区採用してもらった店舗で販売目標数を達成したりと、地道な努力を日々積み重ねた。

ある全国チェーンのスーパーから、試しにキャンディコーナーにハイチュウを陳列しようとオファーを受けたとき、「実績を出せるかが不安だった」 と担当者は吐露した。なぜなら米国のスーパーでは、地域ではなく、店舗規模でトライアル先が決定されるからだ。これは、店の大きさによって、置かれる商品アイテム数が決まっていることが関係する。日本のように、特定地域で試しに販売し、結果が出たら全国展開というスタイルとは異なる。

バイヤーは、全国の販売平均額が目標ラインに達するかどうかでその商品を評価する。もし西海岸の店舗が合格ラインだったとしても、他の地域が低かったら採用は厳しい。

商談も一苦労だった。「スーパーは年明けから春ごろにかけて商品を入れ替えるため、商談は前の年の夏から始まるのが一般的なスケジュールです。そこで採用されなかったら、次の夏まで基本的にチャンスがありません」 

ハイチュウは、トライアル採用されては、目標数に届かずにカットされるを繰り返した。何回ぐらいで採用されたかを質問すると、「何回挑戦したかは、正直分からない」 と苦笑が返ってきた。

 「商談に落ちた翌年に、別のチェーン店での提供実績を持っていき、再度挑戦できないか提案したのも一度や二度ではありません。ただ、一度売れなかったという実績が残っているので、正直、再チャレンジ自体が難しかったです」 (森永製菓の担当者) 

何度も何度も挑戦し続け、14 ~ 15年頃にようやく全国規模のスーパーマーケットの菓子コーナーにハイチュウが置かれることが決まった。同時に、現地の人からの認知も急激に高まったという。

学べること


ではアメリカでのハイチュウの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

購入接点を持つ重要性


アメリカのハイチュウの事例が教えてくれるのは、スーパーなどのお店で消費者が自社商品を買える状況をつくる重要性です。お客さんとの直接の購入接点 (タッチポイント) を確保しているかです。

マーケティングでは広告や著名人・インフルエンサーを使った SNS の施策は派手で目立ちます。一方の小売の開拓や商談などの営業活動は泥臭く地味に映りますが、購入接点をいかに確保するかは大事なことです。

社内の組織が広告宣伝部と営業部に分かれ、宣伝部がやっていることがマーケティングと見なされていると、マーケターは小売への営業活動をどこか他人事と捉えてしまいます。

広告などの施策はもちろん必要です。しかし消費者に商品を知ってもらい欲しいと思ってもらえたとしても、肝心の商品がお店で売られていなければ、広告などのマーケティング投資や活動が無駄になってしまうのです。

全員でパスをつなぎ点を取る


役割をサッカーにたとえるなら、

  • 広告や SNS の施策はミッドフィルダー (MF) 
  • 小売での購入接点の獲得や充実はフォワード (FW) 

派手な広告や SNS という空中戦にしか目が向いておらず成果に一喜一憂している状況は、サッカーの中盤で MF のプレイヤーだけが自分たちの華麗なパス回しに酔いしれているようなものです。FW は蚊帳の外で、これでは観戦しているサポーターは興ざめしてしまいます。

大事なのは全員でパスをつなぎ、ゴールを入れて点を取ることです。

MF から FW へボールをつながってこそ、つまり認知や購入意向を上げるマーケティング施策は小売や EC サイトなども含めた購入接点の獲得と充実があってこそ活きるのです。


まとめ


今回はアメリカのハイチュウの事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 購入接点を充実させる重要性
  • 広告や SNS で商品認知・購入意向を上げても、商品がお店で売られていなければ広告などのマーケティング投資や活動が無駄になってしまう
  • 大事なのは全員でパスをつなぎ、ゴールを入れて点を取ること。認知や購入意向へのマーケティング施策は小売や EC サイトでの購入接点の獲得と充実があってこそ活きる
  • 消費者が自社商品を購入できる状況をつくるために、購入接点を確保することが大切


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。