出典: BRIDGE
食品ロス問題が深刻化する現代社会で、新たな救世主として登場したアプリ 「TABETE」 。この食品ロス削減サービスが、マーケティングにも新しいヒントを提供してくれます。
TABETE はどのように新規のお客さんの獲得に貢献しているのか?ユーザーに魅力的な世界観や価値を伝える方法とは?
この記事では TABETE をマーケティング視点で掘り下げ、あなたのビジネスにも活かせる学びを解説します。
✓ わかること
- 売れ残った食品の廃棄問題を解決する TABETE
- マーケティング視点でおもしろいこと2つ
- 新規の顧客獲得に貢献
- 「ヒーローになりレスキューする」 という世界観
- お客さんに意味合いと価値を伝える重要性
TABETE
出典: BRIDGE
食品ロス削減サービス
TABETE は食品ロス削減サービスです。まだ安全に食べられるのに廃棄されてしまう売れ残りの食べ物とユーザーをマッチングするアプリです。
出典: 足立区
あるホテルではフードシェアリングサービス 「TABETE (タベテ) 」 を導入し、50% 以上の食品ロス削減に成功したという。TABETE とはいったいどんなアプリなのか。
コークッキング (埼玉県東松山市) が運営する食品ロス削減アプリ 「TABETE」 は、安全に食べられるのに、廃棄の危機にある食べ物とユーザーをマッチングするアプリ。2018年にリリースし、現在はユーザー数約65万人、登録店舗数は都心部を中心に2500店舗を誇る。これまでに50万食以上の食品ロス削減を実現している。
導入企業は 「中食」 と呼ばれるケーキやパンなど、陳列して並べる業態が多く、パン店が5 ~ 6割、洋菓子店 (ケーキを含む) が2割、ホテルが1割程度だという。商品は福袋形式、詰め合わせ形式が多い。価格は店舗側で利益が残り、納得感がある金額を設定しているという。通常と比較して2 ~ 3割引きが多い。
具体的な使い方
使い方のイメージは次のようになります。
出典: ITmedia
✓ TABETE の使い方
- お店が余った商品を TABETE に出品する
- ユーザーがアプリ上で購入したい商品を選択。購入手続きと受け取り時間を設定し決済する
- 設定した時刻にユーザーがお店に取りに行く
- お店側がユーザーの本人確認を行い商品を渡す
学べること
では TABETE から学べることを掘り下げていきましょう。
新しいお客さんの獲得に貢献
マーケティングの観点で興味深いのは TABETE が新しいお客さんの獲得に貢献していることです。
「ホテル ザ セレスティン東京芝」 を運営する三井不動産ホテルマネジメント (東京都中央区) では、ブッフェで余ったパンの詰め合わせを500円、弁当を600円で販売。パンは 90% 以上、全体でも 50% 以上の食品ロス削減に成功している。
購入者は周辺地域の住民が多いという。弁当を購入したことをきっかけにブッフェに通常来店する客もおり、新規顧客の発掘にも貢献している。
また、自信を持って作った料理が大量に廃棄されることはつらいと感じていた料理人、従業員の心理的負担が軽減。現場の食品ロスに対する意識が高まることも評価されているという。
TABETE が 「ドアノックツール」 の役割を果たしています。ドアノックツールとは見込み客が手にしやすい安価または無料の商品やサービス、試供品のことです。
新しく知る認知、興味喚起、利用によって本品を買いたいという購入意向を生みます。TABETE で残り物を安く試してみて、お店での正規メニューを食べたいというニーズをつくり出しています。
「ヒーローになりレスキューする」 という世界観
TABETE で注目したいのは食品ロス削減に協力することの捉え方です。
ユーザー (食品ロス削減協力者) を 「ヒーロー」 と呼び、余った食品をお店に買いに行くことを 「レスキューする」 と表現しています。ここがおもしろいです。
TABETE では、ユーザーを 「ヒーロー」 、TABETE を通じて商品を購入することを 「レスキューする」 と表現している。ユーザーがより 「自分が食品ロス削減に貢献しているのだ」 と感じやすいように、「レスキュー」 「ヒーロー」 という世界観を作りこんでいるという。
「『買いに行く』ではなく『レスキューをしに行く』という表現にすることで、自分、事業者、地球・環境全てに対してよい行動をしていると実感してもらいたいと考えています。ユーザーに『自分はヒーローだ』と感じてもらえるよう、TABETE の活用による食品ロス削減量などは可視化し、アプリから見れるようにしています」 (篠田さん (引用者注: TABETE の事業責任者の篠田沙織 COO) )
出典: ITmedia
お店をレスキューしに行き 「自分はヒーローとして活躍している」 という気持ちが高ぶる世界観にしています。食品ロス削減への義務感がなく、ゲームのような楽しさがあります。
意味合いと価値を伝える
TABETE ユーザーがやる行為を 「ヒーローになってレスキューをする」 と解釈し、意味合いを変え言語化することで新しい体験価値をもたらしています。
たとえやっていることは同じ行動でも、自分のことを 「レスキュー隊のヒーロー」 と自然と思えることで結果的に食品廃棄の問題がうまく解決されています。
学びを一般化すると、お客さんにやって欲しいことの意味合いを伝え、お客さんにとってどんなメリットや価値があるかを売り手がしっかりと伝える重要性です。買う意味、使ったり保有することで得られる価値を提案するところにマーケティングの役割があります。
まとめ
今回は食品廃棄の問題を解決するサービス TABETE を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ お客さんに意味合いと価値を伝える重要性
- やっていることは同じでも意味合いを変えることで、新しい体験価値をつくれる
- マーケティングの役割は価値提案
- お客さん目線での商品やサービスの意味合いを見出し、買って使ったり保有することによるお客さんへのメリットや価値について、売り手がしっかりと伝えよう
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!