投稿日 2023/07/16

価値イメージを変えて市場を席巻!市場で勝ち抜くアスレティアのマーケティング

#マーケティング #価値提案 #パーセプションチェンジ


マーケティングで成功させるためには、何が必要なのでしょうか?

今回は、スキンケア & ライフスタイルブランド 「アスレティア」 の事例を取り上げ、生活者からの商品やカテゴリーへの価値イメージをどのように新しく変え、市場での競争力を向上させられるかを解説します。

この事例からの学びをマーケティングに活かしていくことで、マーケティングのことがさらにおもしろいと思えるはずです。では一緒に秘訣を探っていきましょう!

アスレティアのパーセプション変容


出典: aisent

スキンケア & ライフスタイルブランド 「athletia (アスレティア) 」 は、2022年4月に 「refreshing deodorant mist (リフレッシング デオドラント ミスト) 」 という制汗剤を発売しました。

この商品の機能は、既存の制汗剤が目指していた汗をおさえることではなく、汗をかいたときのニオイをおさえる効果が特長です。汗をかくこと自体は心身の健康にもつながるので、汗をおさえるのではなく、むしろ気持ちのいい汗をかきましょうという新提案をし、パーセプション変容を目指しました。

 (中略) 

パーセプションを変えることで新しい市場をつくり出すことを目指しました。その結果売り上げも好調で、計画比 180% を3カ月で達成し、ブランド内でも人気のアイテムとなっています。

引用した中に 「パーセプション変容」 とありましたが、パーセプション変容とは、マーケティングの文脈において生活者やお客さんの知覚や認識を変えることを指します。商品やサービスに対する生活者からの評価や価値イメージをより良くし、市場やカテゴリーでの競争力の向上を狙います。


学べること


ではアスレティアの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

価値イメージと競争ルールの書き換え


アスレティアは 「汗をおさえるのではなく、むしろ気持ちのいい汗をかきましょう」 という新しい提案を通じて、生活者に今までの制汗剤とは異なる視点を提供しました。汗をかくこと自体が心身の健康につながるという考え方を取り入れ、従来の制汗剤への価値観を刷新したわけです。

アスレティアの提案により、生活者は 「良い商品の定義」 を新しく見直すようになります。

これまでの制汗剤に求めていた役割は 「汗を抑えること」 でした。一方のアスレティアが打ち出しているのは 「汗をおさえるのではなく、むしろ気持ちのいい汗をかきましょう」 というものです。良い汗をかくことを前提に、汗のニオイを抑える効果を特長にしています。

これにより生活者は制汗剤への価値イメージがアップデートされ、「良い制汗剤の定義」 が新しく変わるのです。

定義が変わるとは、売り手にとって、生活者からどのように自分たちの商品が選ばれるかという 「市場での競争ルール」 が変わることを意味します。カテゴリーやジャンル内で商品を選ぶときにこれまでとは違う選択基準が加わり、生活者は新しい視点から 「今までとは異なる商品の選び方」 をするようになるわけです。

ここまでを整理すると、全体像は次のような流れです。

  • 新しい視点を提示
  • 生活者からのカテゴリーや商品への見方が変わり、価値イメージがアップデートされる
  • 良い商品の定義が変わり、商品・サービスの選ばれ方 (競争ルール) が変わる

マーケティングの本質と役割


マーケティングの本質は 「お客さんから選ばれる理由をつくること」 にあります。

そのためにマーケターが担う役割は、お客さんがまだ気づいていないカテゴリーや商品の意味合いを見出し、新しい価値に捉え直し、お客さんの文脈に沿って価値を提案することです。価値提案を生活者が魅力だと思い、他にはない価値だと思えば自分たちが選ばれ買ってもらえるのです。

売れるもマーケ 当たるもマーケ - マーケティング 22 の法則 という本に次のようなことが書かれています。


Marketing is not a battle of products, it's a battle of perceptions.
マーケティングは商品の戦いではなく、パーセプションをめぐる戦いである。

パーセプションは今回の文脈に当てはめれば 「価値イメージ」 です。マーケティングとは商品やサービスに 「どんな価値のイメージを持ってもらうか」 をめぐる戦いであると。

パーセプションは価値提案によってつくられます。

単に商品の機能的な特徴を説明するのではなく、商品がお客さんにとってどんな意味や価値があるかをお客さん目線で伝えることが大事です。お客さんの文脈に寄り添い、価値があると思ってもらえることで商品がようやく自分ごととして捉えてもらえるわけです。

学びを一般化すると、たとえ商品そのものは変わらない・変えられなくても、マーケティングの役割はお客さんからのカテゴリーや自社商品への価値イメージを変え、お客さんから選ばれる理由をつくることです。


まとめ


今回はアスレティアのパーセプション変容の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 新しい視点を提示し、カテゴリーや商品への価値イメージをアップデートさせることで、市場での競争ルールが変わる

  • マーケティングの本質は 「お客さんから選ばれる理由をつくること」 。マーケターの役割はお客さんがまだ気づいていないカテゴリーや商品の新しい意味合いを見出し、価値を提案すること

  • マーケティングは商品の戦いではなく、パーセプション (価値イメージ) をめぐる戦い。お客さんの文脈に寄り添った価値を提案し商品が選ばれる理由をつくろう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。