投稿日 2023/07/31

情報過多時代のマーケティング。「受け身な買い物」 をする消費者の心理とは?

#マーケティング #顧客心理 #購買行動


お客さんは、なぜその商品やサービスを選ぶのでしょうか?
その選択をよりスムーズでストレスフリーにするには、どうすればよいのでしょうか?

今回は、これらの問いについて掘り下げます。お客さんの 「受け身な買い方」 に注目し、情報過多の時代におけるマーケティングを一緒に探求していきましょう。

受け身での買い物


Z 世代の商品選びは受け身なのかもしれない、という調査結果をご紹介します。

1990年代半ば以降に生まれた Z 世代は、電子商取引 (EC) サイトでの商品選びが受け身がち?――。ポータルサイト運営の NTT レゾナント (東京・千代田) の調査によると、ハッシュタグ (検索目印) やおすすめワードを基に探す割合が全体に比べて高かった。いつも大量の情報に触れており、周囲の評価を参考にしながら購入する傾向がうかがえる。

1カ月以内に EC サイトを利用した15 ~ 69歳の男女1035人を対象に、インターネット経由で2月に調査した。

EC サイトで商品を探す方法について尋ねた (複数回答可) ところ、ハッシュタグなどを意味する 「タグで探す」 と回答した Z 世代 (15 ~ 24歳) は 20.7% に達した。全体の 11.3% を上回る。「おすすめワード、トレンドワードで探す」 と答えた Z 世代も 27.8% と、全体 (14.1%) に比べて14ポイント近く多い。

買い物は疲れる行為


ここまでの内容と関連してつながるのは、Google が見出した消費者心理です。

Google は、リピート購入についての調査から、人の奥にある気持ち (深層心理) を紐解きました。注目したいのは 「買い物とは疲れることでもある」 という指摘です。

EC と流通の充実により買い物に関する情報と選択肢が増えましたが、ただ便利になっただけではありません。このような状況では、買い物はただ愉快なことではなく疲労を感じるものでもあります。

買い物の中で再購入というルーティンを導入することは、情報量の増大に対する自然な反応であり、ほぼ無意識的な行動なのです。「信あれば徳あり」 ということわざのように、「信じる商品を継続購入する」 という心理と行動は、生活者が買い物にかかる負担を最適化した結果であると言えるでしょう。

消費者へのデプスインタビュー (1対1のインタビュー) では、次のような買い物疲れと、買い物への影響が聞かれました。


ビールは糖質 OFF の 「淡麗グリーンラベル」 。お茶は 「お〜いお茶 濃い茶」 だけを買う。どちらも機能性商品で味や価格など含めてこれと決まった。考えるのをやめたいからルーティン化しているという面もある。化粧品・ファンデーションなども買うものを決めてしまいたいという思いがある
女性 / 20代

ブランドを意識するものは始めからそのなかでしか検討しない。年齢とともに買い物に時間をかけなくなった。レストランだったら恵比寿や麻布、洋服なら銀座など過去の経験や情報のストックがあるし、そもそも買い物に時間をかけたくない気持ちがあるからかも
男性 / 40代

とんかつはまい泉、お米はコシヒカリ、家電はパナソニック、洋服は Theory 、化粧品は資生堂。あらゆるジャンルで基本的にブランドやお店が固定されていてそのなかで選んでいる若い頃よりも冒険を試すことが減っているという自覚がある
女性 / 50代

消費者の中には増加する情報量や選択肢からくる買い物の疲労を感じる人がいます。そこで、自分が信じる商品を継続購入することで、負担を減らしているのです。


お客さんの 「受け身な買い方」 に対応する方法


では、ここまでの内容を踏まえ、さらに考察を深めていきましょう。

受け身で選ぶ人


お客さんが商品やサービスを 「選ぶ」 そして 「買う」 という行為は、いつも能動的であるとは限りません。先ほど見たように 「受け身な買い方」 をする人たちが存在します。

受け身な買い方とは、消費者が直面する情報の過多からくる疲れを避け、選択肢を減らすことで心理的負担を軽減する購入行動のことを指します。

具体的には、特定の商品を決めてルーティン化して購入したり、信頼するブランドからのみ選んだりする買い方です。購入をより簡単にし、ストレスを減らすための自然な反応と言えるでしょう。

お客さんへの配慮


ここにマーケティングへの示唆があります。お客さんが 「受け身での買い方」 をすることを理解し、その心理的負担を下げる重要性です。

商品の選択肢が多すぎるとお客さんはどれを選んだら良いか迷い、買い物疲れが起こってしまいます。

そこでマーケターは、お客さんが 「省エネ」 で選べる状況をつくることに配慮するといいでしょう。自社の商品やサービスが、お客さんにとって選びやすく、買いやすい状態にするようにすることが大事です。

例えば、

  • 選択肢を多くしすぎず、伝える情報量を適切にする
  • 口コミやハッシュタグのような情報を見やすくし、探しやすくする
  • 他には商品やサービスのカテゴリー分けを見直し、お客さんが目的の商品をすぐに見つけられるようにする
  • 信頼できるレビューや評価を目立つ位置に配置する
  • 定期購入やお気に入り登録などの機能を提供する

こうした方法から、お客さんが買い物をより簡単に行えるようになります。

マーケターの役割


これらの施策は、お客さんが商品選びにかける時間とエネルギーを節約するのに役立ちます。お客さんが何を基準に商品を選べば良いのか、どんな視点から商品を評価すれば良いのかを考えやすくなります。

マーケティングで求められるのは 「お客さんから選ばれやすい状況」 をつくることです。マーケターはお客さんの買い物体験を改善し、負担を軽減する役割も担っているのです。

これらを実行することで、お客さんと長期的な関係を築くことができるでしょう。そして、結果としてビジネスの成功につながります。


まとめ


今回は消費者の買い物への行動と心理を見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 消費者の中には、情報過多での疲れやストレスがあると、特定の商品や信頼するブランドのみを選ぶ 「受け身な買い方」 をする人がいる

  • このような消費者の購入行動と心理を理解し配慮することが重要。たとえば、商品の選択肢を多くしすぎず、提供する情報を適切な量にするといい

  • マーケティングの役割は 「お客さんから選ばれやすい状況」 をつくること


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。