投稿日 2023/07/14

自社プロテインを飲み放題に。インターナルマーケティングの魅力と活用術

#マーケティング #インターナルマーケティング #価値提供


今回は、社内メンバーをお客さんと見立てる 「インターナルマーケティング」 によって、従業員のモチベーション向上や組織の一体感を高める方法をご紹介します。

さらに、このアプローチがどのように通常のマーケティングとつながり、ビジネスにプラスに働くのかについても解説していきます。では、さっそくその秘訣を探っていきましょう!

自社プロテイン商品が飲み放題の福利厚生に


出典: @Press

イーバリュー社が、社員の福利厚生としてプロテイン飲み放題を開始しました (リリースはこちら) 。

環境コンサルティングサービスを手掛けるイーバリュー (名古屋市) は社員への福利厚生としてプロテイン飲み放題を始めた。自社開発したプロテインの販売を2月に始めたことをきっかけに導入。社内に 「プロテインバーカウンター」 を設け、好きなだけ飲めるようにした。運動習慣をつけてもらい、社員の健康促進につなげる狙いだ。

 (中略) 

社員からも 「飲みたい」 という声があがったことを受け、福利厚生として取り入れた。導入後、社員からは 「ジムに通っているのでとてもありがたく、おやつ感覚で飲んでいる」 (27歳女性) 、「ちゃんと運動しないとという気持ちになる」 (23歳女性) などの声があがる。

身内を 「お客さん」 と見立てるマーケティング


今回の事例は、社内メンバーという身内を 「お客さん」 と見立てるインターナルマーケティングに学びがあります。

インターナルマーケティングとは


インターナルマーケティングでは組織内の関係者をお客さんと見立て、彼ら・彼女らに対してマーケティング活動を行います。

ご紹介したイーバリューの社員の福利厚生としてプロテイン飲み放題にした事例は、インターナルマーケティングと捉えることもできます。社内メンバーに積極的に利用してもらうための方法を考えることで、実際のお客さん向けのマーケティングのアイデアが生まれるでしょう。

自社商品を使いこなすヘビーユーザーになる


お客さんに売ろうとしている商品を、自分たちも実際に使っているかどうかは大切なポイントです。

自分たちが一番のヘビーユーザーになることで商品の特徴だけでなく、用途ごとの具体的な使い方や商品の開発背景、作り手の込めた思いまでを深く理解できます。これにより、お客さんに対して商品の魅力をより具体的に伝えられ、お客さんに自信を持って商品を薦めることができるのです。

前提の違いに注意する


ただし、インターナルマーケティングでの利用における前提や文脈は、実際のお客さんのそれとは同じではないことに注意が必要です。社内メンバーをお客さんにしますが、身内の人間でありピュアのお客さんではありません。

今回の事例で言えば、プロテイン飲み放題はあくまで福利厚生として提供されており、社員は無料で利用できる立場です。一方、実際のお客さんはお金を払って商品を購入する立場にあります。文脈が本当のお客さんとは全く一緒ではないので、この前提は忘れないようにしましょう。


通常のマーケティングとの共通点


インターナルマーケティングと通常のマーケティング (エクスターナルマーケティング) は、お客さんと見立てる対象が異なるものの、その本質は同じです。共通点から重要なことを3つに絞ると以下のようになります。

お客さんの理解


マーケティングは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動」 です。選ばれるためには、お客さんの持つ価値観や欲しいと思う気持ち、奥にある望みや不満を理解する必要があります。

マーケティングは顧客理解に始まり、顧客理解に終わります。顧客理解に終わるという意味は、マーケティングというお客さんに選ばれる働きかけをして、はじめてお客さんのまだ知らなかった側面を理解することもあるからです。

インターナルマーケティングでもエクスターナルマーケティングでも、対象となるお客さん (社員や顧客) のニーズや価値観を理解することが重要です。これにより、戦略や適切なメッセージを考えることができます。ターゲット顧客を深く理解することで、効果的なマーケティング活動を展開することが可能になります。

価値提案へのコミュニケーション


お客さんの理解から、お客さんにもたらす価値を見出します。

買ってもらったり使ってもらうのは商品ですが、本質的に商品を通じてどんな価値を提供することになるのかを定義します。お客さんの文脈に沿って商品の意味づけをし、魅力に思ってもらえるような価値を提案します。その価値提案をコミュニケーション戦略に落とし込んでいくことが重要です。

インターナルもエクスターナルマーケティングもいずれも適切なメッセージを伝え、お客さんとの関係を深めていきます。

評価と改善


マーケティングを実行した後はやりっぱなしにせず、事前の想定や目標と照らし合わせて、何がうまくいったか、何がうまくいかなかったかを評価します。経験や学びを教訓にして次に活かすことが大切です。

インターナルマーケティングとエクスターナルマーケティングの両方で取り組みの成果を測定し、改善に努めるといいでしょう。具体的なゴール設定や KPI (Key Performance Indicator: 重要成果指標) を設定し、施策後に評価をし改善策を実施することで、マーケティング活動の効果を最大化していくことができます。

* * *

以上のポイントを意識してインターナルマーケティングに取り組むことで、社員のモチベーション向上や組織の一体感を高められます。

その結果、組織全体の生産性向上やエクスターナルマーケティングにつなげてお客さんへの価値を高めることで、ビジネスの成功に貢献できます。


まとめ


今回はイーバリューが社員の福利厚生としてプロテイン飲み放題にするという事例から、学べることを掘り下げました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • インターナルマーケティング: 社内メンバーを 「お客さん」 と見立てるマーケティング。自社商品やサービスを実際に使ってもらい、フィードバックから商品の魅力や価値を深く理解できる

  • 通常のマーケティングとの共通点: お客さんの理解、顧客理解からの価値提案、評価と改善がインターナルとエクスターナルマーケティングの両方で大事

  • インターナルマーケティングの効果: 社員のモチベーション向上や組織の一体感を高める。エクスターナルマーケティングにつなげお客さんへの価値を向上し、ビジネスの成功に貢献する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。