投稿日 2023/07/19

Amazon が地域の中小店舗と物流網を構築。Win-Win な競争ストーリーのつくり方

#マーケティング #戦略 #ストーリー


物流の巨人 Amazon が地域の中小店舗と連携し、お互いに利益を生み出す Win-Win のビジネスを実現しようとしています。

今回は、そのユニークなアプローチからどんな競争ストーリーがつくられているのかを掘り下げます。

ぜひ一緒に Amazon の事例からインスピレーションを得て、お仕事やビジネスに活かしてみませんか?

Amazon Hub デリバリーパートナープログラム


アマゾンジャパンが地域密着型の物流サービスを強化しています。

街の飲食店や雑貨店などの中小店舗と連携した新たな宅配網 「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」 を本格的に展開しはじめました。

中小店舗と組みラストワンマイルを強化


このプログラムでは、アマゾンは 「ラストワンマイル」 の能力を強化することで、物流における人員不足の解消を狙っています。

参加する中小店舗 (パートナー) にとっては、空き時間を利用して近隣の住宅へ商品を配達し、副収入を得ることができます。

アマゾンは日本で新配送サービス 「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」 を20年9月から試験的に始めた。配送の委託料などは明らかにしていないが、報酬は荷物の配送個数に応じて支払われる仕組み。パートナーは1日平均30 ~ 50個の荷物を運び、現状では月におよそ2万5000円から25万円の副収入を得ているという。

パートナーのメリット


アマゾンから配送の委託を受けるパートナーには、副収入以外にもさまざまなメリットがあるようです。

配送を担う商店主からは副収入以外の効果があるとの声も出ている。

 「配達中、地域の方から声をかけてもらうことが増えた。自分の店の『歩く広告塔』ができるのも魅力」 。配送パートナーを務める浜田良太さんはそう語る。大阪市内で居酒屋と卸売業を営む浜田さんは約2年前、アマゾンの誘いを受けて試験段階からプログラムに参加した。

スタッフは仕込み作業や卸売業の仕事と同時にアマゾン商品の仕分けを行い、昼食時と夕食時を避けた時間帯に配達する。町内会長も務める浜田さんにとって配達は街の見回りをするいい機会という。「商店街の電気が切れているのに気づいたり、地域の人と会話をしたりすることにもつながる」 と地域への貢献も1つのメリットだと語る。

運動不足の解消を参加のきっかけにあげる声も。東京都江東区で約40年、写真店を営む鈴木吉昭さんだ。「座り仕事が主なので、近所を歩いて配達すれば健康にもいいと考えた」 

週2回、午前9時ごろに商品を受け取って仕分けし、午前10時ごろには徒歩で配達を開始。40年以上慣れ親しんだ街での配送は 「名前を見れば住所が分かる所がたくさんある」 とお手の物だ。配達を機に運動量が多くなり、「知り合いとの会話のきっかけにもなり楽しい。健康的になったと言われる」 と満足げだ。

金銭的な収入以外のパートナーメリットを整理すると、

  • 広告効果: 配達員が 「歩く広告塔」 となり、パートナーの店舗の認知度が向上する
  • コミュニケーション: 配達中に地域住民との会話が増え、店舗と地域との関係が強化される
  • 地域貢献: 配達を通じて地域の見回りができ (パトロール) 、地域のニーズに気づく機会が増える
  • 健康面の改善: 配達を機に運動量が増えるので、運動不足が解消し健康状態が向上する


学べること


ではアマゾンのプログラムから学べることを掘り下げていきましょう。

Win-Win の問題解決を追求


Amazon Hub デリバリーパートナープログラムは、アマゾンと地域の中小店舗がタッグを組むことで、双方に利益をもたらします。

アマゾンは物流の人員不足を解消し、ラストワンマイルを強化することができます。一方の請け負うパートナーにもメリットがあります。具体的には金銭的な副収入、広告効果、地域の活性化や健康増進などです。

Amazon Hub デリバリーパートナープログラムは、他社 (地域の中小店舗) の未利用資源を活用して自社 (アマゾン) の問題を解決する狙いがあります。ただしアマゾンだけにメリットがあるのではなく、双方にとって Win-Win な問題解決が実現できているのです。

違いが連鎖する競争ストーリーを創出


戦略の成功のカギは 「他との違い」 をつくり出し、その差が目的達成につながるかどうかです。

ただし、単なる差異化だけでは十分ではありません。違いが複合的に連鎖し、ストーリーとして展開されることで強固な戦略が築けます。

アマゾンの事例では、これまで活用していなかった地元の中小店舗の未利用リソースを活用しました。単にアマゾンにとってのメリットがあるだけでなく、中小店舗にも副収入や金銭的なメリット以外にまで様々に及んでいます。

このように、1つのコアアイデア (アマゾンの例では中小店舗とタッグを組む地域密着型の物流網の構築) から多くのメリットが波及していくと、パートナーやお客さんに価値を生み出す競争ストーリーができるのです。


まとめ


今回は 「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 戦略では他との違いをつくり、その違いが目的達成につながることが大事
  • 戦略のコアアイデアから多くのメリットが波及していくことで、パートナーやお客さんに価値をもたす競争ストーリーが生まれる
  • 違いが価値をもたらし全体でストーリーが描かれると強固な戦略になる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。