投稿日 2023/07/04

これで顧客の心をつかむ!シニア向け VR に学ぶバーニングニーズの重要性

#マーケティング #顧客理解 #解像度


マーケティングの成功のカギはお客さんの心をつかむことです。では、どうすればいいのでしょうか?

今回は 「バーニングニーズ」 をキーワードに、お客さんのニーズを捉える方法について具体的な事例とともに解説します。

シニア向けの商品やサービス


2つの事例をご紹介していきます。

VR 技術を用いた散歩アプリや、排せつ状況を自動で記録管理できるセンサーの事例から、高齢者や介護施設のニーズにどのように応えているかを見てみましょう。

シニア住宅で VR 散歩


1つ目は VR 散歩です。

国内外400カ所以上の観光地や自然風景を VR 空間上で散歩できるアプリで、名前は 「RehaVR (リハ VR) 」 といいます。

東急不動産傘下の東急イーライフデザイン (東京・渋谷) は同社が運営する高齢者住宅で、仮想現実 (VR) 空間で観光地を散歩できるサービスを始めた。ペダルをこぐと連動して映像が動く仕組みだ。運動不足の解消に加え、会話しながら進めることで認知症予防なども期待できる。新型コロナウイルス下で外出の機会が減った高齢者の利用を見込んでいる。

 (中略) 

高齢者向けに定期的な運動やリハビリでの利用を想定する。過去に訪れた場所を VR 空間で追体験してもらい、思い出を語り合うことで認知機能などの改善につなげる心理療法 「回想法」 の効果も期待できるという。

センサーで排せつを自動記録


2つ目の事例でご紹介したいのは、パナソニックの排せつ状況を自動で記録管理できるセンサーです。

パナソニックホールディングス (HD) は介護施設向けの業務支援サービスを拡大する。入居者の排せつ状況を自動で記録管理できるセンサーを開発し、3月中に同社の介護業務支援サービス 「ライフレンズ」 のオプションとして提供を始める。

 (中略) 

開発したセンサーは便座に取り付けるタイプ。便尿の画像を撮影する 「センサーヘッド」 、センサーヘッドを便器へ取り付ける 「取付プレート」 、赤外線センサーで入室検知とセンサーヘッドの情報をクラウドに送る 「エッジコンピューター」 で構成される。

独自の人工知能 (AI) 技術を活用し、利用者の排せつ状況を自動で検知し、時刻や回数、量などを記録する。排便量や排尿量はそれぞれ3段階、2段階で検出するほか、排便の形状から硬い便、普通便、軟らかい便、下痢便の3段階で判別する。取得したデータは、ライフレンズと連携させ、介護職員はパソコンやスマートフォンから確認できる。

ベッドに敷いて使える排せつセンサーなどもあるが、「自立歩行でトイレに行ける入居者の排せつ記録は多くが自己申告に頼っていた」 (パナソニック HD 担当者) 。排せつセンサーをつけることで、自立歩行者の排せつも客観的なデータを記録管理できるという。

前半のまとめ


では一度ここまでをまとめておきますね。

  • 東急イーライフデザインは運営するシニア住宅で観光地や自然風景の VR 空間で散歩できるアプリ 「RehaVR (リハ VR) 」 を提供

  • RehaVR に期待できるのは運動不足の解消し、シニア向けに過去に訪れた場所を VR 空間で再体験し思い出を語り合うことでの認知機能の改善

  • パナソニックが開発した排せつ状況を自動で記録管理するセンサーは、介護施設での業務支援サービス 「ライフレンズ」 のオプションとして提供。AI 技術を活用し排便や排尿の状況を詳細に記録し、介護職員が確認できる


学べること


マーケティングではターゲット顧客のニーズを理解し、相手の文脈に沿った商品やサービスを提供することが成功へのカギです。

ニーズには 「必須 (Must) 」 と 「あればいい (Nice to have) 」 の2種類があります。どちらのニーズを捉えるかがマーケティングの成果を左右します。

バーニングニーズとは


今回のキーワードは 「バーニングニーズ」 です。

バーニングニーズとは 「あればいい」 ではなく、「これがないと困る」 や 「今すぐ使いたい」 という切実なお客さんの要望を指します。お客さんが 「お金を払ってでも解決したい」 と思うような課題を見つけることが、マーケティング成功への道筋となります。

シニア住宅や介護施設では、高齢者の運動不足や認知症予防といった課題がより切実になっています。これらがバーニングニーズに該当します。

学びを一般化するとお客さんの課題を見極める重要性です。課題の中でもどれだけ切迫した状況にあるのかという 「バーニングニーズ」 を見つけ出すことが大切です。

バーニングニーズの背景まで理解する


バーニングニーズがなぜ切実であるかを理解するためには、その背景を見つめることが重要です。バーニングニーズの背後にある3つの要素を見ていくといいです。

  • 発生頻度
    ニーズが切実である理由の1つは、その問題が頻繁に発生すること。頻繁に発生する問題は、お客さんが解決策を求める度合いが強くなる

  • 起こる範囲や影響の広さ
    問題発生が広範囲にわたり、多くの人々に影響を及ぼす場合、そのニーズは切実であると言える。多くの人が同様の問題に直面している場合、解決策への需要が高まる

  • 発生したときの影響度の大きさ
    問題が発生した際に、その影響が大きいほど、お客さんは解決策を求める意欲が強くなる。影響度が大きい問題は解決が急務となり、バーニングニーズとして認識されることが多い

これらの要素を考慮し、ニーズの構造化や奥にある本質を見極めることが大切です。バーニングニーズの背景やお客さんの文脈を理解することで、より効果的なマーケティング戦略と施策をつくることができます。

顧客ニーズの解像度を上げる方法


お客さんのニーズをより正確に捉えるためには、以下の方法が効果的です。

✓ ニーズの解像度を上げる方法
  • 視野を広く見る
  • 深く掘り下げる
  • ニーズを構造化し、関係性や重要度の優先順位をつける
  • 時間軸での経年変化の要素を考慮する

ニーズの解像度を上げることで、より適切なマーケティングを展開していくことができます。


まとめ


今回はシニア向けの商品やサービスの事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきましょう。

  • マーケティング成功のカギは、お客さんのバーニングニーズを見つけること。お客さんが 「お金を払ってでも解決したい」 と考える切実なニーズ

  • バーニングニーズの背景を理解するために、発生頻度、起こる範囲や影響の広さ、発生したときの影響度の大きさなどの要素から捉える

  • 顧客ニーズを正確に捉えるためには、視野を広く見て深く掘り下げ、ニーズの構造化し関係性を可視化する。時間軸の観点も入れるといい


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。